首都高速道路は、17日、開通間近の中央環状新宿線「山手トンネル」の「交通管制室」をマスコミ向けに公開。最新の技術が導入された交通管制室での、事故を想定したデモンストレーションなどを見学することができた。

中央環状新宿線は、3号渋谷線大橋ジャンクションと5号池袋線熊野町ジャンクションを結ぶ11kmの環状線で、このうち4号新宿線西新宿ジャンクション~熊野町ジャンクション間(約7km)が22日に開通することになる。山手通りの地下をトンネルで通ることから、通称「山手トンネル」と呼ばれる。

山手トンネルを24時間監視し、各設備の保守や、緊急時の情報収集および指令などを行う場所が、首都高速道路の西東京管理局内にある「山手トンネル交通管制室」だ。

千代田区平河町にある首都高速道路・西東京管理室。ここで山手トンネルの監視・安全保持が行われている

関係者や専門の研究者たちの手によって除幕式が行われた

山手トンネル開通にあわせ導入された「山手トンネル専用管制台」と従来の「交通管制台」を見比べると、完全デジタル化による12面マルチディスプレイモニターによって一括管理される「山手トンネル用」のほうが非常にコンパクトであることがわかる

今回新たに導入された「山手トンネル専用管制台」と、従来の交通管制台(1997年製「システム97」)を見比べて、すぐに気付くのは、その大きさだ。「山手トンネル用」は非常にコンパクトである。普段我々が使用しているデスクトップ・パソコンが管制員席に配置され、その奥に12面のマルチディスプレイが整然と並んでいるだけのシンプルなレイアウトだ。一方、従来型は、道路上に設置されたカメラからリアルタイムに送られてくるモニター群と、首都高の路線図が描かれたアナログ型の巨大ボードなどが壁一面を埋め尽くし、管制員の卓はさまざまな機材でいっぱいだ。一目見て、「山手トンネル用」が、デジタル化によって管理を一元化できるようになったと想像できる。

山手トンネル専用管制台の配置 12面マルチディスプレイ 交通管制卓(渋滞状況、旅行時間検索、事故などの登録、情報版への操作など) 施設防災卓(火災箇所の特定、水噴霧器の操作など) 換気操作卓(トンネル内の換気制御など) 無線卓(パトカー・バイク隊との連絡など) 避難路カメラ操作卓(避難路内のカメラ映像確認、避難路電話との通話など) 非常放送卓(トンネル内の拡声放送、ラジオ再放送など) 信号機操作卓(トンネル内の交通信号機の制御など)

山手トンネルでの事故・火災を想定したデモンストレーションも公開された。従来と異なる点は、事故や火災でクルマの流れを止めた「停止車」をいち早く割り出す「自動検出」機能が加えられていることだろう。道路上に約100mごとに設置されたテレビカメラが、事故車や火災が起きたクルマなどの状況を、管制室のマルチディスプレイにすぐさま映し出す。管制員は、道路のリアルタイム映像や非難ルート状況、道路表示などの交通調整状況などが一括表示されたディスプレイ郡に集中し、状況を把握する。そして、管制員の判断・指示によって、バイク隊の出動や換気・水噴霧などの指令・制御が行われることになる。

「停止車」を確認すると、すぐさまディスプレイに映し出され、水を撒くエリアなどが検出された防災区画線がモニター上に反映される

デスクトップパソコンタイプのモニターと奥のマルチディスプレイに管制員は集中し、処理の判断・指示を行う

バイク隊などが現場に駆けつけ、現場状況との連絡をとりながら鎮火作業へ。水噴霧装置が作動する

今回、山手トンネル専用管制台と、それに付随する道路上の安全システムへ首都高が投入した額は4億円弱。巨額の予算を投入して、従来のシステムから進歩させたもののひとつが「未検知、誤検知の防止」だという。つまり、自然渋滞と見間違えてしまうような小さな「停止車」なども細やかに検知し、従来よりも的確な管制側の判断・指示が可能となり、よりスムーズなクルマの流れを保つことができるというのだ。

"白バイ仕込みの黄バイ"首都高バイク隊の登場や、コンサートホールなどに見られる建築技術から応用した時間遅延技術採用スピーカーの道路への設置、さらには距離別料金制の導入提案など、新しい試みが次々と登場する首都高速道路だが、山手トンネル開通後のユーザーの反応は、いかに。

現在、西東京管理局は、10年前に誕生した従来型「システム97」と新システム「山手トンネル用」を併用して道路を管理しているが、2009年度ごろまでには新システムへ全面移行させる予定だという。