SAPジャパンは、統合アプリケーションプラットフォーム「SAP NetWeaver」に新たな機能を追加、提供を開始すると発表した。Webサービスを一元管理するデータベース「Enterprise Services Repository」、サービスとしてのビジネスソリューションを開発するための同社の基本概念であるエンタープライズSOAベースのアプリケーション開発環境「SAP NetWeaver Composition Environment」(以下SAP NetWeaver CE)、エンタープライズSOAベースのビジネスプロセス統合管理を実現する「SAP NetWeaver Process Integration」(以下、SAP NetWeaver PI)の3つで、「SAP NetWeaver PI」は当初、限定的に投入される。

「Enterprise Services Repository」は、Webサービス仕様である「UDDI 3.0(Universal Description, Discovery and Integration)」レジストリに準拠しており、SAP、パートナー、ユーザーに定義された数1,000種類の製品化されたエンタープライズサービスが格納され、一元管理される。それぞれのサービスインタフェースは、国際標準を基盤とした、企業で必要なさまざまなデータタイプを定義した「Global Data Type(GDT)」に基づいている。Webサービスの管理情報だけでなく、プロセスの設計に必要となるビジネスプロセスモデルとビジネスオブジェクトモデルの管理も可能で、パートナーやユーザーは、SAP独自のノウハウやプロセスをエンタープライズサービスの作成/管理に使用して共通の規則を設定することで、組み立てや再利用をしやすくなる。

「SAP NetWeaver CE」はJava EE5に準拠しており、独自のJava Virtual Machine(JVM)を提供、アプリケーションの開発に特化した環境で、ドラッグ&ドロップを中心としたモデリングベースでユーザインタフェース開発を実現する機能をもち、開発の効率化を図っている。また、管理者、計画担当者、専門家といった複数ユーザー間での共同プロセスを実行するためのガイドプロシージャ機能の最新版を備えており、「SAP NetWeaver」を機軸に一定の「シナリオ」に則った作業の流れを円滑化する。

「SAP NetWeaver PI」はプロセス統合を担い、エンタープライズSOAを実現するための中核となる。「Enterprise Services Repository」に直接連携することで、サービスの管理と利用環境を用意しており、サービスベースのビジネスプロセスの構築を支援する。またWeb Services Reliable Messaging(WS-RM)、BPEL2.0などの最新WebサービスやBPM標準規格にも対応している。さらに、ビジネスプロセス管理の点では、プロセスの実行状況を監視して、ルールやパフォーマンス指標に基づいてアラートを発する「Business Activity Monitoring(BAM)」機能も備えている。このようなアラートの内容は、「SAP NetWeaver Business Intelligence」の機能と連携して分析することも可能だという。

SAPジャパン バイスプレジデント パートナー&マーケティング統括本部長 安田誠氏

今回の新機能は、エンタープライズSOA思想の具現化を大きく前進させるものといえる。「Enterprise Services Repository」により、サービスの定義とともに、設計情報などの技術的視点からの情報だけでなく、プロセスコンポーネント、サービスインタフェースなど、実際のビジネスを運用する観点で表現される情報をも提供する。「SAP NetWeaver CE」は、ここで集中管理された多様な情報を基に、「部品」としての「Enterprise Services」を組み合わせ、アプリケーションを形成する。「SAP NetWeaver PI」はビジネスアプリケーションをサービス化し統合する。これらの機能は「Enterprise Services Repository」を基盤に、有機的に連携しあうことで、サービス化されたアプリケーションを柔軟に活用できる環境を構築する。

同社バイスプレジデント パートナー&マーケティング統括本部長の安田誠氏は「今回の発表は、SAPがERPベンダとして蓄積してきた技術的な資産を、新たなエンタープライズSOAに利用するための指針」と指摘、「開発環境で、ここまでのことができることを示した。実際にアプリケーションやプロセスを作ることを実感として受け入れてもらえるのでは」と話す。