マイクロソフトは12日、官公庁・自治体向けのフレームワークなどを紹介する「官公庁・自治体パートナーカンファレンス」を東京都目黒区で開いた。基調講演では、政府の電子政府評価委員会の委員を務める東京大学大学院情報学環教授の須藤修氏が、「電子申請のワンストップサービス構築を自治体や企業と協力して推進するなど、利用者の視点に立ったIT社会基盤を作ることが政府の課題」と強調した。基調講演後は、マイクロソフトが提供する官公庁・自治体向けフレームワーク「CGF(Connected Government Framework)」の紹介などが行われた。

オープンイノベーション実現へ企業や住民、行政が協力を

東京大学大学院情報学環教授 須藤修氏

須藤氏は、世界におけるIT市場の動向について、「ハードウェア機器(の売り上げ)は市場全体の約30%を占めるものの、収益性はすでに期待できなくなっている。今後は、組込みOSやミドルウェアなど、収益性の高いソフトウェアの市場が拡大していく」と指摘。こうした状況の中、ミドルウェアなどを活用したSOA(サービス指向アーキテクチャ)基盤を全国に普及させていくことが、政府の課題となっているとし、「すぐにSOAを普及させることは難しいので、出来るところから段階的にやっていきたい」と説明した。

また、OECD(経済協力開発機構)の会議などでは、「オープンイノベーション」が重視されてきているとし、企業などがオープンイノベーションを実現するためには、「ネットワークを基盤として外部資源を活用するなど、何を捨て、何を持つかの判断が重要になる」と説明。その上で、「企業だけでなく、行政、住民、消費者などと連携した企業グループ同士が競争する『Network-versus-Network Competition』という状況がすでに生まれており、より強いグループを作った方が勝つ時代となっている」と述べた。

政府は「IT新改革戦略」の目標の1つとして「電子行政のオンライン申請率50%」を掲げている

電子政府評価委員会はさらに、「利用者視点のサービス」を目指している

こうした状況に対応するため、政府の政策も、官民協力を重視する方向へ移行。政府が打ち出している「IT新改革戦略」の目標の1つとして「電子行政のオンライン申請率50%」が掲げられているが、須藤氏が委員を務める電子政府評価委員会はさらに、電子行政の目指すべき方向性として、官民が協力して推進する「電子申請のワンストップサービス」の実現を目指している。

須藤氏は、同サービスについて、「政府の縦割りの組織に対応した現在の申請システムではなく、他の申請と合わせた形で申請をできるようにするほか、本人確認などで自治体と連携することも重要」と指摘。また、「国税、社会保険、雇用保険など、企業による電子申請システムの整備や、金融機関や水道光熱の運営機関などとのバックオフィス連携も必要になる」と述べた。

こうした目標を達成するためには、「金メダルを目指しながら全員が一致して一歩一歩努力する"星野野球"が理想」とし、内閣官房や経団連など、官民をあげた対応の必要性を強調した。

「防災」など個別テーマごとにソリューション提供

基調講演後は、マイクロソフトの企業向けフレームワークである「CIF(Connected Industry Framework)」の官公庁・自治体版といえるCGF(Connected Government Framework)について、同社公共インダストリー統括本部 インダストリーソリューション本部 自治体・文教市場戦略室長の今井早苗氏が、講演を行った。

IT事業者が抱える課題に応じたCGFの適用例

Office Groove 2007を活用した、災害時における情報共有

今井氏は、CGFに対応する同社の製品・サービスとして、「インフラストラクチャサービス」を提供するExchange Server 2007、「ビジネス&ゲートウェイサービス」を提供するSQL Server 2005、「プレゼンテーションサービス」を提供するOfficeなどがあり、さらに、パートナーによるソリューションがこれらに加わると説明。

CGFを適用することで、「IT予算削減や新たな市場の発見、運用原価の削減など、政府や自治体にソリューションを提供するIT事業者が抱える課題を解決できる」と述べた。

さらに、こうした課題を解決するためのCGFの具体的な適用例として、「政策課題からのアプローチ」「プレゼンテーション層とビジネスロジックの分離」「Officeを活用したユーザフレンドリーなシステム」などがあると説明。

このうち、政策課題からのアプローチについては、Office Groove 2007などを活用し災害時における情報共有などを行う「防災」、滞納整理などを行う「財政健全化」、地域情報プラットフォームやテレワークを整備する「住民サービス向上」など、テーマごとにソリューションを提供できると述べた。

その後、テレワーク推進のためのソリューションや、静岡県庁の情報化システム最適化の事例などを紹介する講演も行われ、講演後は活発な質疑応答も行われた。