日本ヒューレット・パッカードの新社長に就任した小出伸一氏

日本ヒューレット・パッカードの代表取締役社長執行役員に、12月1日付けで就任した小出伸一氏が会見を開き、新社長としての抱負などについて語った。

小出新社長は、「就任10日目ということもあり、まだ具体的な方針を出す段階にはない」としながらも、「最初の30日間であらゆることを行い、課題解決に取り組む。また、60 - 90日間でできるだけ多くの顧客、パートナーと会い、現場の話をもとに具体的な戦略に落とこむ。まずは、多くの時間を、顧客やパートナーへの訪問、社員との対話に費やし、そこから方針を決めていく。

成長領域は、サービス分野。だが、これに関しては慎重にやっていきたい。日本HPの一番の強みは何か、成長する領域はどこか、社員のリソースをどう配分するかを検討していく。また、当社のコアコンピテンシーであるITインフラまわりの領域も重要。顧客は、どの程度の価格で導入できるのかということや、ハードのスペックやソフトのスペックを最重視しているわけではない。むしろ、いつ、どうやってできるのかという、スピードへの期待と、経営そのものを解決できるソリューション全体を求めている。公共、金融といったリーチできていない市場もあり、クロスインダストリーにも取り組む」などとした。

目指す企業像は、「経営に困ったときに"日本HPの社員に聞いてみる"と言われる会社」だという。小出社長は「経営に近いところでお客様の役に立てる、ビジネスに貢献できることが重要。経営、ビジネスに困ったときに、最初にイメージされる企業がHPでありたい」とした。

日本HPの課題については、「スピード感がある経営、変化に対応できる経営が求められているが、私が社長として舵取りする上では、変化に対応するのではなくて、変化を巻き起こす側の経営をしていくべきと考えている。そうしなければ、新しい分野に入っても、2番目、3番目になる。発信型の企業変革が求められている」とした。

また、自らの経営手法については「好きな言葉は"実践躬行(じっせんきゅうこう)"。自分の信念/信条に基づいて実践し、成果を出す。社長として、リーダーシップを発揮して、新たなステージに飛躍できるような結果を残したい」とした。

さらに、目標とする経営者についても触れ、「米IBMに出向した際に、ルイス・ガースナー氏(元IBM会長)の"選択と集中"によるメリハリの利いた経営手法。さらには、ソフトバンクの孫正義氏の現場に出向き、意見をよく聞き、必要であれば夜中でもミーティングを行い、立案するという手法。革新性、先進性に富み、変化を起こす側の経営を学んだ。この2人の経営手法は参考にしている」とした。

また、Hewlett-Packardの印象については、「私が24年間務めた日本IBM時代には競合企業として、また、3年弱在籍したソフトバンクテレコムでは、パートナーとしてHewlett-Packardを見ていた。ダイナミックな経営、スピード感のある経営をしているというイメージがあった。米国本社のエグゼティブなどと会って、持っていたイメージには間違いがないと確信し、さらに成長できる分野が数多くあると感じた」とした。

小出社長のIT業界における長年の経験とともに、主要な通信関連顧客を抱える日本HPにおいては、通信業界での経験が発揮できる場面が多い。小出社長自らも、「こうした領域でのバックグラウンドとともに、グローバルオペレーションを理解し、日本型経営の経験もある。そして、ソフトバンクテレコムにおいて、事業の再生で成果をもたらした経験が、これからの日本HPに生かせる」として、これまでの経験が、日本HP社長として生かせることを強調した。

小出社長は、1981年に日本アイ・ビー・エムに入社。取締役ITS・アウトソーシング事業担当、金融システム事業部長などを歴任したのち、2005年4月、日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)の常務執行役営業統括オペレーション担当に就任。2006年10月にはソフトバンクテレコム代表取締役副社長COOに就任した。1958年福島県出身、49歳。日本IBM時代には次代の社長候補の一人として名前が上がったこともある。