米国の工場進出先にできた「ハイアール道路」

グローバル・ブランド戦略と「三位一体、本土化」戦略を推進する上で、ハイアールは直接投資、M&A、ジョイント・ベンチャー(JV)など、多様な手法を使っている。サウスカロライナ州の海外工場は直接投資によるもので、第1期の投資額は3,000万ドル、年間生産能力は冷蔵庫50万台に達する。同工場は米国進出において極めて重要な役割を果たした。カムデン市はハイアール工場による地域経済の活性化、雇用機会の創出などを高く評価し、市内の道路の一つを「ハイアール道路」と名づけたほどである。

2002年、ハイアールは三洋電機との間で、ハイアールブランドの家電製品を日本市場で販売する合弁会社、三洋ハイアール(出資比率は三洋60%、ハイアール40%)を設立した。

2006年10月、両社はグローバルな戦略提携でも合意し、家庭用冷蔵庫の設計・開発、製造、品質管理、メンテナンスを業務内容とする新たな合弁会社、ハイアール三洋(出資比率は三洋ハイアールと同じ)を設立。2007年3月には三洋ハイアールが解散したが、解散の理由について三洋電機は、「ハイアールブランドがすでに日本市場一定のレベルにまで浸透したこと」と「三洋電機グループの事業再編の一環」を挙げた。

ハイアール側にしてみれば、日本市場への道案内という役目を担った三洋主導の三洋ハイアールが解散したことは、今後、日本市場においてハイアールが主導するマーケティングを展開していく大きなきっかけとなったといえる。その一方で、ハイアールはハイアール三洋で60%の株式を握り、強い発言権を持っている。

三洋とのつながりを世界市場開拓のきっかけに

ハイアールはハイアール三洋について、三洋電機の強みである家庭用冷蔵庫における先端技術と開発力、および生産管理・品質管理に関する先端スキル・ノウハウなどを活用し、現地研究開発のプラットフォームにしようと考えているようだ。

また、ハイアールは今年4月、三洋電機から同社のタイ工場である三洋ユニバーサル電機(SUE)の株式9割を取得、傘下に収めた。8月中旬には同工場を東南アジア、アフリカ、中東向けの輸出拠点に位置付けたという。前出の梁氏は、「タイ工場の買収で、当社は世界で最も進んだファン式冷蔵庫の製造技術を獲得した。タイ工場からアフリカへ輸出されるのは同冷蔵庫で、中国工場からアフリカへ輸出されるのは水冷冷蔵庫となる。当社は、全世界で良質なリソースを集め、統合し、さまざまな市場で多様なユーザーニーズを満足させられるようになることを目指している」としている。

かつて三洋電機の拠点だった工場が、いまやハイアールのグローバル生産体制に組み込まれているわけである。ハイアールがグローバル・ブランド戦略の推進、「三位一体、本土化」体制づくりにあたり、家電業界の巨人だった三洋電機を、1つの駒として巧みに使っていると言うこともできよう。