ゲームメーカーのNCsoftによる「リネージュ」、同じくWebzenによる「ミューオンライン」といったオンラインゲームに関して、それらの不法フリーサーバーの運営などに携わっていた計46人が摘発された。

摘発されたのは、フリーサーバープログラムの開発にあたっていたプログラマー、ID「海東の涙」と、このプログラムの配布やサーバー運営に携わっていた45人。捜査を担当したソウルの鍾岩警察署は海東の涙を拘束し、その他の45人を非拘束立件している。

警察は、フリーサーバーを運営するWebサイト30カ所から26台のコンピュータを押収した。これとともにフリーサーバーのプログラムを入手したほか、有料サイトからは口座の取引内容までを押収した。こうした捜査により、ミューオンラインやリネージュをはじめとした、いくつかのゲームでの不法行為が見つかった。

ミューオンラインのフリーサーバーの発端は、海外でクライアントおよびサーバーのプログラムがクラッキングにより流出したことにあり、このプログラムでフリーサーバーを運営できるよう改造を重ねられてきた。韓国では、これを海東の涙が2年以上かけて開発・配布を行っていた。韓国市場に合わせてアップグレードを続けていたほか、フリーサーバー運営者のニーズに応えて改造を行っていたといい、ほとんど仕事のようなものと言える。

海東の涙によるフリーサーバープログラムは、多くの人に使われることとなった。7つのサーバーが立てられ、ここに約2万人が参加。同時接続者が700人を超えるものもあったという。警察が「不法フリーサーバーのうち、ミューオンラインがもっとも深刻な状態」とコメントしているように、ここではアイテムが制作・販売されるなど、金銭的な取引もあった。

ミューオンラインのフリーサーバー群のうち、「SKYサーバー」はかつて韓国最大のサーバーと言われ有名だった。6つのサーバーを運営することで、約2,000万ウォン(約240万円)相当のアイテムを制作・販売していたという。また、2つのサーバーを運営する「チニサーバー」は、実際の運営規模はSKYサーバーよりも大きく、約3,000万ウォン(約360万円)相当のアイテムを制作・販売していた。そしてこれら2つのサーバーが閉鎖されてから、今回の摘発までに運営されていた最大のサーバーが「無人サーバー」だ。ここでは2つのサーバーを運営し、約4,000万ウォン(約480万円)相当のアイテムを制作・販売してきた。

一方、NCsoftのゲームで起こった被害はミューオンラインと異なり、小規模サーバーが乱立している状態だという。海東の涙のような継続的なサーバープログラム開発者がいないうえ、プログラム開発サイトがあったとしても、被疑者が検挙されることで初期に閉鎖されていたため、プログラムの完成度が低い状態だという。アイテムの制作・販売も、試みはあったようだが、初期になくなっていたようだ。

これら以外のゲームとして、「World of Warcraft」(Blizzard Entertainment)、「風の国」「メイプルストーリー」(NEXON)などに関しても、不法フリーサーバーを運営する動きはあったものの、大部分は初期段階もしくは小規模であり、被害状況も深刻ではなかったようだ。

不法フリーサーバーの検挙では、2006年に米FBIによって行われた、リネージュIIのフリーサーバー運営組織「L2Extreme」の摘発が代表的だが、韓国では今回が初めてのことだという。鍾岩警察署では今回の摘発について「(韓国は)オンラインゲーム強国とはいえ、取り締まり事例がないという点から、捜査に踏み切った」とコメントしている。

こうした警察の動きとは別に、NCsoftでは自社でフリーサーバーの調査や確認作業を行っているという。これで違法行為が見つかった場合には、Webサイトの閉鎖要求や法的措置を行ってきている。それでも、警察がこうした組織を摘発すれば社会的な波及効果はより大きく、話題にもなりやすいと見られる。