米Dell会長兼CEOのMichael Dell氏

米カリフォルニア州サンフランシスコで開催された「Oracle OpenWorld 2007」の4日目にあたる14日(現地時間)、米Dell会長兼CEOのMichael Dell氏によるキーノートスピーチが行われた。同氏は直前に行われた米Sun Microsystems社長兼CEOのJonathan Schwartz氏の基調講演にも特別ゲストとして登場し、Sunとの提携を発表している。そんなDell氏の講演は、いかに今後サーバがシステムの中心となり、それを管理していくソリューションが重要であるかをアピールするものだった。

同氏はインターネットにおけるユーザーの増加と、やり取りされるデータ量の肥大、そしてPCから携帯デバイスまで拡大するプラットフォームといった要因が重なることで、サーバに対する需要が逼迫すると説明する。そして、こうした状態が世界規模で発生することで電力需要は鰻登りに増加し、新たな課題になって立ちふさがってくるだろうと述べる。これらサーバシステムを停止させることなく、つねに安定動作させることはビジネス上の損失を避けるうえでも重要だ。「ITのシンプル化は顧客にとっての大きなメリット。これを実現するのがDellのサーバソリューションだ」と同氏は述べる。

いくつかの事例が紹介されたが、興味深いのはDellのクライアント管理ソリューションだ。1つは「ImageDirect」と呼ばれるサービスで、企業の管理者がクライアントPCのイメージデータをDellのサーバ上にアップロードすることで、Dellから出荷されるPC(OptiPlexやLatitudeなど)にデフォルトの状態でイメージが書き込まれ、そのまま納入することが可能になる。これに企業内で必要なソフトウェア導入や各種セットアップを行い、パッチなどを最新の状態に保てば、クライアントの展開コストを削減できる。

出荷時のPC内のデータイメージを設定できるImageDirect

もう1つが10月に発表されたばかりの「On-Demand Desktop Streaming」で、Dellによればシンクライアントと通常のデスクトップPCの中間にあたるソリューションだという。シンクライアントの管理性とデスクトップPCのパフォーマンスの両方を併せ持ち、いいとこ取りの技術となっている。壇上では3つのソリューションを並べる形で同時にデモを走らせ、On-Demand Desktop Streamingが通常のデスクトップPCとほぼ変わらない速度で動作する様子が紹介された。また、このソリューションの特徴として、サーバのパフォーマンスが鍵となることが挙げられる。大量のクライアントを同時に管理する場合、サーバにそれなりのパフォーマンスが要求されることになる。

n-Demand Desktop Streamingのメリットを紹介。シンクライアント並みの管理しやすさで、通常のデスクトップPC並みのパフォーマンスを実現するというソリューションだ

管理ソリューションに加え、壇上では最新のPowerEdgeサーバの紹介も行われた。Dellでは今回のOOW 2007の開催に合わせ、12日にPowerEdge R900を発表している。Intelが同日に発表したばかりのクァッドコアプロセッサ「Xeon 5400」を最大4-wayまで搭載可能な4Uサーバで、「パフォーマンス」「電力効率の良さ」「管理のシンプル化」を3つの特徴として挙げている。壇上では仮想化技術を用いたベンチマークテストが実施され、高いパフォーマンスを実現すると同時に、管理のシンプル化が強調され、「仮想化に最適のプラットフォーム」としてアピールされている。

最新のクァッドコアXeon搭載PowerEdgeサーバ上で仮想化技術のデモストレーションを行う

そのほかDell氏の講演では、間もなく発表予定のコンシューマ向け薄型PCの紹介のほか、将来的に同社のタブレットPCで採用を計画しているマルチタッチ技術のデモなどが行われた。このマルチタッチはAppleのUIやMicrosoftのSurfaceで採用されているものよりもやや複雑なもので、デモでは5本指までのタッチを同時に認識し、複数オブジェクトの同時ドラッグによる位置入れ替え、画面の回転などが行えるものとなっている。

Dellが次世代のタブレットPCでの採用を検討しているマルチタッチ技術。5本指すべてを使って複数オブジェクトの同時移動や画面の回転などが行える

さらに来年2008年発表予定の10G PowerEdgeブレードサーバの話題も紹介され、より高い電力効率とリアルタイムでの電力管理を搭載した新世代サーバを目指すという。前述の電力事情や地球温暖化などもあり、同社では特にエコロジーを重視。2008年までの二酸化炭素排出ゼロの「Carbon Neutral」実現に向けた取り組み「Regeneration」を進めていくとDell氏がコメントし、講演を締めくくった。

10世代目にあたる新型PowerEdgeのブレードサーバ。高密度環境での運用だけでなく、電力効率や電源管理などで機能強化が図られている