コンセプトモデルには新技術を搭載したモデルも多い。特に目についたのは電動バイクやハイブリットモデルだ。自転車にモーターを搭載した電動アシストサイクルはすでに実用化されているわけで、バイクも近いうちにモーターに置き換わる可能性がないわけではない。ここでは電動バイクのコンセプトモデルを紹介しよう。

多くのEVモデルを展示していたヤマハブース

四輪でリーンするハイブリッドビーグル

ヤマハのブースでは、通常エンジンのバイクのほかに、電気系バイクも数多く展示していた。1991年の東京モーターショーに展示したコンセプトモデル「FROG」を皮切りに、毎回モーターショーでは電気系バイクを展示している。近年では水素やメタノール水溶液を利用した燃料電池モデルにも力を入れてきた。実用電気バイクとして「Passol-L」や「EC-02」などを販売していたが、バッテリーのリコールに伴って現在は販売を中断しているのは残念。もちろん開発は続けられている。

入り口付近に展示された「Tesseract(テッセラクト)」は、水冷Vツインエンジンとモーターを使うハイブリッドビーグル。独自のデュアルアルサイズサスペンションにより、四輪ともリーンして旋回。4輪ながら高い機動性を備えている。展示でも時々車体をリーンして来場者の注目を集めていた。また、カマキリの両腕のように見える上部のリンク支持部にロックシステムを搭載しており、停車時の車体を保持し、自立を可能にしている。

Tesseract ※試作車

水冷・Vツインエンジンとモーターによるハイブリッド方式を採用

Tesseractの車体が実際に傾く様子を展示

スクータータイプのハイブリットモデル

コンセプトモデル「LUXAIR(ラクシア)」は、水冷エンジンとモーターのパラレルハイブリッドエンジンを搭載する。加速時にはモーターがアシストし、巡航時にはモーターが発電機に切り替わってバッテリーを充電する。また、ハイブリッド自動車と同じく減速時には回生ブレーキにより充電も行なう。後輪駆動部には超薄型パワーユニット(YIPU)を内蔵し、押し歩きのときの補助や後退も可能だ。

また、LUXAIRはヤマハと協力し、オーディオシステム「ナチュラルサウンドモーターサイクルオーディオシステム」を搭載する。タンク上面にはギターにも使用されるウッドパネルとバイク内蔵スピーカーを備え、小さな容積で効率よく低音を再現。音はライダーに向かって届くように設定し、周りへ音を向けないよう考慮したという。また、Bluetoothによりヘルメット内に音楽を送信することも可能。パッセンジャーと二人で音楽を共有できるという。

ヤマハ LUXAIR ※試作車

LUXAIRの前面。未来的なデザイン

タンク上面はウッドパネルを採用し、豊かな低音を再現する

ヤマハとコラボレーションしたナチュラルサウンドmotorcycleオーディオシステムの説明図

ヤマハ・インテグレイテッド・パワー・ユニット(YIPU)は、二輪EVを支える制御システム。EC-02、Passol-Lにも採用していた

燃料電池モデルの実用は近い?

ヤマハは燃料電池の研究に20年以上前から取り組んでおり、2003年には「ヤマハダイレクトメタノール燃料電池システム」を搭載した燃料電池二輪車「FC-me」を開発。2005年から静岡県に賃貸借ししている。今回発表された「FC-Dii(エフシーディ)」は、FC-meの基本性能を進化させたモデル。燃料タンク部分がシースルーになっており、未来的なデザインだ。最大出力は1.2kW/2,250rpm、最大トルクは7.5Nm/3,100rpm。

「FC-AQEL(エフシーアクエル)」は、35Mpの圧縮水素を燃料とした燃料電池二輪車。FC-Diiより大きなバッテリーとハイブリッドシステムを搭載し、発進・加速などで燃料電池の出力が不足するような場合はバッテリーから出力を補う。また、巡航走行などではバッテリーへ充電する。また、FC-AQELは昨年10月に開催された「第22回国際電気自動車シンポジウム(EVS22)」でも公開されたが、デザインはかなり変更されている。今回発表したFC-AQELのほうが実用的なデザインになった。

「BOBBY(ボビー)」は、シート、後輪、ハンドル、フットレストが折りたため、コンパクトに収納でききる折りたたみ式電気バイク。「FeliCa」 (ソニーが開発した非接触式ICカード技術) 対応の携帯電話をかざすだけで電源のオン/オフが可能。インターネットを通じた様々なサービス供給も受けられるという。軽量・コンパクト電気バイクの「C3+」はヘルメット収納スペースを設け、扱いやすさや利便性向上を図った。

「FC-Dii」 ※試作車

FC-Diiはボディ中央が燃料タンク。照明でなんとも不思議な感じ

FC-Diiに搭載されている燃焼電池システム

「FC-AQEL」。バッテリー併用が特長 ※試作車

「BOBBY」。折りたたみできる電動二輪車 ※試作車

「C3+」。軽量な電気二輪車。キュートなデザイン ※試作車

現行モデルのスペシャル試作車

ヤマハはコンセプトモデルのほかに、特別仕様車や輸出仕様車も数多く展示していた。スーパーモタード「WR250X」は、単気筒ながら10,000rpmを超える新開発の高回転型エンジンを搭載し、発売以来、注目度が高い。そのWR250Xにミステリアスなカラーリングと装備を施した「WR250X SPECIAL」を出品。併せてエンジンとのバランスを重視した、軽量・高剛性なアルミフレームも展示されていた。

ビッグスクーター「マジェスティ」の特別モデル「マジェスティ スペシャル」は、マジェスティをベースに、本革シートやアルミモールを施したモデル。輸出車の「FZ1 Fezer」も展示されていた。

WR250X SPECIAL ※試作車

WR250Xのエンジンは10,000rpmを超える高回転型

フレームの展示。WR250X(左)とYFZ-R1(右)

FZ1 Fezer ※輸出仕様車

スポーツバイクにも燃料電池を

スズキはコンセプトモデルとして空冷式の燃料電池を使用した電動二輪車「crosscage(クロスゲージ)」を展示。英国のインテリジェントエナジー社製の燃料電池システムを採用することで、ラジエーターや配管類を省略。シンプルな構成とすることで、スポーツバイクへの燃料電池搭載を可能にした。走行性は燃料電池とリチウムイオン電池を組み合わせ、力強い加速を得ているという。出力は公表されていないが、現在は原付二種相当のスペックを想定して開発を続けているという。水素タンクは車両中心部に配置し、名前の由来にもなったクロスフレームで保護されている。

技術展示として、「3次元カム式エンジン」も出品している。球状ローラータペットをカムに当て、カムを電子制御で軸方向にスライドさせることで、出力をアイドリングから最高出力まで連続的に変化させ、あらゆる運転条件で最適な出力を得るという。これにより従来の同サイズのエンジンよりCO2を20%削減、全回転域でのトルクを最大6%向上できるという。また3次元カムは、エンジンのバルブから上の機構のみを変更することで実現できるため、従来のエンジン生産技術が流用できるのがメリット。近い将来に実現可能なエンジンだという。

「crosscage」 ※試作車

水素タンクはクロスフレームで保護

燃料電池ユニット外観

crosscageのシステム構成図

3次元カム式エンジン。実際に動く様子を見ることができる

軸方向にカムがスライドする