「Windows Vista」「2007 Office System」が企業向け市場に登場して、およそ11カ月が経過、マイクロソフトは、これらの新たなプラットフォームの企業での本格普及、定着に向け、支援、導入促進のための施策を強化する意向だ。企業が円滑にシステム移行できるよう、技術面でのサービスを展開するとともに、パートナーとの協業態勢をさらに強め、新Windows/Officeの陣地を構築していく方針で、2008年6月末までに大企業の導入率を「Windows Vista」で5-10%、「2007 Office System」は15-20%とすることを目指す。

同社の調査によれば、2007年5月時点で、大手企業での導入率はWindows Vistaで0.8%、Officeは4.4%となっているという。同社インフォメーションワーカービジネス本部 業務執行役員 本部長 横井伸好氏は「企業への導入は、コンシューマ向けの後になる傾向があるが、いまの時点、採用企業は、システム検証の段階にある。9月には、国内の多くの企業が会計年度の中間期を迎え、年度末に向け、導入に動いているところが少なくない。(システム移行に向け)大きな波が来ようとしている」と話す。

企業が新しいOSを取り入れる際の課題、あるいは障壁といえるような要因は複数あるが、同社では、計画から検証と移行、導入と展開、トレーニング、メンテナンスに至る一連の工程を見据え、段階ごとの問題を分析している。計画の段階ではノウハウ不足、自社環境の分析に時間がかかること、検証と移行ではサービスレベルの低下、互換性検証が、導入と展開、トレーニング、メンテナンスでは、コストが懸念材料となる。

同社Windows本部 業務執行役員 本部長の大場章弘氏は「ユーザーがそれぞれ計画を立てるのは、それほど容易ではない。また、すべての互換性の検証も人手だけで実行するのはかなり大変だ。メンテナンスでは、ソフトの配布、更新は1回ではすまない。計画からメンテナンスまでの流れで、1回だけの環境の変更ではなく、長期間にわたるシステムの維持を低コストでできるインフラを構築するのが大きなテーマとなる。さまざまなツールを提供し、すべてのプロセスを通じて、設計面での支援をしていきたい」と語る。

そこで、同社では、ソフトウェアアシュアランスのユーザーを対象に、無償で「デスクトップ導入計画サービス」を整え、10月末から提供を開始する。同サービスのパートナーが、各企業のシステム環境を診断、導入、展開の計画立案を支援する。

導入と展開の局面では、従来の手法としては、CDなどのメディアを用いる方法、インストール済みのHDDの内容のイメージを複製する方法などがあった。しかし、導入の工数がかかること、パソコンの機種、個人、部署ごとの設定、インストール後のメンテナンス、といった点が課題となっていた。これらの問題に対しては、さまざまなイメ-ジ展開の手段が用意される。「イメージX」と呼ばれる方法では、複数の機種に対応できるイメージを作成、単一のイメージをユーザーの環境に適用する。それをネットワーク経由で自動配信すれば、効率的に展開を進めることが可能になる。

「System Center Configuration Manager」では、ハードなど、システムを形成する資産の構成、運用などを管理する。「SoftGrid」は、仮想化技術により、ネットワーク上のサービスを活用し、クライアントにインストールすることなくアプリケーションを実行可能にする。使用を許可された最新のアプリケーションをエンドユーザーに容易に割り当てることができる。「仮想化によりシステムのリソース消費が少なくてすみ、アプリケーションの集中管理ができる」(大場氏)ほか、「新旧のアプリケーションが混在した環境を支援」(同)できることも利点だという。

コンサルティングサービスの面では、「計画の段階で、どのようなプロジェクトにするかの策定から、顧客と一緒に取り組む」(同社 コンサルティングサービス統括本部 業務執行役員 統括本部長 畑義和氏)ところから始め、アプリケーションの互換性検証、クライアント設計など、クライアント展開にかかわる工程についてノウハウをパッケージ化する。

パートナーとの協業については、ビジネスの起動時には、同社の主導で先行しているユーザー事例などを蓄積、これらを利用してパートナーと共同で技術の移転を促進、ビジネスの拡大を図る。畑氏は「ビジネス支援では、パートナーが想定しているターゲット層に対してバックエンドで後押ししていく」としている。パートナー支援のためのサービスは、コンサルティング面をはじめ、緊急対応、予防保守などサポート面までを包括的に扱う。