Javaはエンタープライズ、スタンダードユース、モバイルユースの3分野に対してそれぞれ基盤となるエディションを用意している。Java EE、Java SE、Java MEの3つだ。当初はいわばJava SEに対応するエディションだけだったわけだが、Javaの採用されるシーンが増えるにしたがって、それぞれにチューニングしたエディションが必要になった。Javaが登場した当初は「Write once, Run anywhere (WORA)」のもと、一度開発したアプリケーションがどこでも動作するという触れ込みで一躍注目を集めたわけだが、実際にはエディションやバージョンの違いでそのままでは動作しないことも多いわけだ。

そうした問題が特に強かったのがモバイルだった。Javaの実行にはそれなりのスペックが必要だ。モバイル向けのJava MEが発表された当時のガジェットでは、Java SEクラスのスペックは実用的ではなかったため、必要最小限の機能とガジェットごとに策定したカスタム機能でプラットフォームとする戦略が採用された。現実的なアプローチだが、実際にはガジェットが変わるとJavaアプリも作り直しというWORAとは言えない状況だ。

しかしこの状況は変わりつつあるようだ。Java MEはJava SEへと回帰していく機運にある。ガジェットの性能が向上したことを受け、モバイル用途にもJava SEが採用される可能性が高まっている。とくに現在策定が進められているJava SE 7で導入されるプラグインアーキテクチャや高いモジュール性、実行時に必要なライブラリを取得する機能は、Java SEをモバイルガジェットで使ううえで大いに役立つだろう。

2007年10月9日(米国時間)、Mozillaで技術バイスプレジデントを務めるMike Schroepfer氏は自身のブログにおいて、モバイル向けのWebブラウザ構想「Mobile Firefox」を公表した。これはFirefoxと同じコードベースからモバイルガジェット向けのFirefoxを開発するというもので、同氏は「ガジェットの性能向上が、同じコードベースからのモバイル向けFirefoxの現実を可能にした」と説明していた。

Mike Schroepfer氏の発表で注目されるのは、モバイルに対応させるために導入される機能はデスクトップ向けFirefoxにも良い効果をもたらすという発言だ。デスクトップアプリとモバイルアプリという相反しやすいアプリを同じコードベースから開発することで相乗効果が得られるというわけだ。そして同じように、Java SEからデスクトップ向けとモバイルガジェット向けの両方に対応することは双方にとって良い相乗効果を生む可能性がある。デスクトップはモバイルの敏捷性を、モバイルはデスクトップの汎用性を得られるだろう。iPhoneやiPod touchの登場でガジェットアプリケーションは今度さらに需要を広げることになるとみられる。今後のJavaの取り組みに要注目だ。