10月中旬、韓国公正取引委員会(以下、公取委)とソフトウェアのバンドル販売を巡る法廷争いに終止符を打ったばかりのMicrosoft。結局、同社が折れる形とはなったものの、とりあえず一件落着、と思いきや、またもや法廷争いが勃発しそうだ。

300億ウォンの損害賠償請求

インターネット関連のソフトウェアやソリューションを提供しているdigito.comは、米Microsoft本社およびMicrosoft Korea(以下、MS)を相手取り。300億ウォン(約37億3,500万円 /1円=0.1245ウォン)の損害賠償請求訴訟をソウル中央地方法院に提起したことを明らかにした。

Disito.comによると、同社は1998年9月、韓国では初めてインスタントメッセンジャーソフトを開発。1998年11月からサービスを提供し始めたという。まだインターネットの草創期とも言えたこの時期、他社より一足早いサービス開始だったと言える。

その後同社によるメッセンジャーの加入者は、1999年3月に10万人、1999年12月に55万人、2000年2月に80万人と順調に増えていき「当時、韓国のインスタントメッセンジャーサービスでは、業界1位になった」(digito.com)という。

しかし2000年、「MSが独占的地位を利用した不公正取引(OSとメッセンジャーのバンドル販売)をしたことにより甚大な被害を受ける」(digito.com)こととなってしまった。

digito.comでは「被告(MS)の違法行為で(digiti.comが)収益機会を失うこととなったため、これを賠償しなければならない」と主張。その結果、請求することとなった損害賠償額が300億ウォンになったということだ。

Daum、公取委の後にdigito.com

これまでMSは公取委のほかにも、ポータルサイトの「Daum」を運営するDaum Communication(以下、Daum)からも、訴訟を起こされた経験がある。Daum訴訟における争点もまた、メッセンジャーのバンドル販売だ。

2001年、Daumが公取委に対し、MSのバンドル販売が公正取引法違反であると訴えたのがきっかけ。その後Daumでは民事訴訟を提起したが2005年、MSがDaumに対して330億ウォン(約41億1,250万円)の和解金を支払い、Daumは訴訟を取り下げた。

このように訴訟続きだったMSだが、今回のdigito.comへの訴訟に対してはいまだ立場を明らかにしていない。

機能の工夫でシェア奪回の例もあるが……

ところで、digito.comのメッセンジャーは「SoftMessenger」と名付けられたもので、メッセージのやり取りはもちろん、ファイル交換やSMS送受信など、基本的な機能はひととおり持っている。しかし韓国で誰しもが名前を真っ先に挙げるような、有名メッセンジャーの中には残念ながら入っていない。

また、韓国で今最も多く利用されているメッセンジャーが「MSNメッセンジャー」なのかというと、実はそういうわけでもない。「サイワールド」の運営も手がけるSK Communicationsによる「NATE ON」が、MSNメッセンジャーを抜いて利用者数1位を誇っているのだ。

NATE ONは、SoftMessengerのような基本的な機能はもちろんのこと、韓国ユーザーが喜ぶような現地密着型の機能に徹底的にこだわり、それを強化することで、MSNメッセンジャーに追いつき、追い越したのだ。今でもNATE ONの進化は続いており、Mac OSやLinuxへの対応、ビジネスに便利な企業バージョンの開発、ブログとの連動など進化し続けている。

こうしたNATE ONの例もあるように、機能などの工夫次第でSoftMessengerもMSNメッセンジャーと対等に戦えたのではないだろうか。

とはいえ確かにMSNメッセンジャーは、OSとのセット販売のため利用者集めには圧倒的に有利だったと言える。損害賠償請求がどこまで認められるのか、dogito.comの戦いは始まったばかりだ。