「うた会」は11時すぎ、諸々の準備の後、午前中のテープの上映が開始され、上記タイムテーブルに沿って進行した。とはいえ、当日配布されたパンフレットに記述されていたとおり、「時間は予定です。進行の都合により若干前後することがあります(大抵30~40分終了がずれ込みます)」とのことで、実際、今回もイベントは大いに盛り上がり、終了したのは予定より1時間ほど遅い時刻であった。

連絡事項などの伝達風景

この後、何本かのビデオテープが上映されていくわけだが、上映しながら一体なにをするのか? それはパンフレットに掲載の「うた会について」の項に詳しく書かれている。

「このうた会『O.E.S.』は『メジャー、マイナー様々なアニメ、特撮、ゲーム等の歌を皆で大きな画面を見ながら大きな声で唄おう』という趣旨の元に行われています。『唄う事』が基本ですから画面に歌詞のでない作品には歌詞カードを用意したり、テロップを入れたり様々な工夫をしています。基本的には唄う事が目的ですが、せっかくの大画面ですので、見ても楽しめる様に映像のないものには映像を付けたり、TVサイズでは満足できないのでフルコーラスのMTVを作る。あるいはテーマを決めてそれに沿った選曲をする等、様々な構成で各テープは作られます。テープ作成者側は自ら選曲し、作る楽しみが、観客側には唄うと同時に映像構成も楽しむという形になりますが、各作成者の持つ映像素材、機器によって特撮が多いもの、アニメが多いもの、ゲームが多いものと、必ずしも統一のとれたものにはなりません。中には趣向の合わないものもあるかもしれませんが、今まで興味の無かった分野にも、この機会に触れてみるのも良いかもしれません。基本は歌なのですから次回からは唄える様になるかもしれません。色々なジャンルの歌を1曲でも多く覚えて唄って下さい」――パンフレットより抜粋

すなわち、基本は、「全員全曲絶唱だっ!」である。なお、文中の「歌詞カード」は、当日、受付で配布される。また、「テープ作成者側は自ら選曲し、作る楽しみが」とあるように、上記タイムテーブルに書かれている「テープ上映(1)~(6)」や「闇鍋」「ラストテープ」のコーナーのビデオテープも、このイベントの参加者の中の有志が自ら選曲、作成してきたということだ。

会場入り口付近に設置された受付。ところ狭しと歌詞カードなどが置かれている

このようなメンバーによる活動が、長期にわたり、この集まりを支えてきたとも言えるが、これは必ずしも固定したメンバーだけの手によるものではない。パンフレットに曰く、「上映テープの作成者も随時募集しております。べつに難しいことはありません。あなたの好きな映像を、アニメ、特撮、ゲーム、その他ジャンルを問わずにつなげればいいのです。平均して40分前後を作る感じですが、最初からその長さは無理かな? という方は10分、20分でもかまいません。受付にいる者か、テープ作成者と思しき者に、お気軽に声をかけて下さい。ご相談に応じます」というわけで、新しい血を受け入れることで存続してきた一面もある。

さらに、「闇鍋」とは、やはりパンフレットによれば、「ラストテープの前に『闇鍋タイム』として、他のテープと同じまたはそれ以上の時間を取って、参加者の方から持ち込まれたテープをノーチェックでかけてしまう時間です」とのことで、アニメ、ゲーム、時代劇、特撮、歌謡曲等、ジャンルに制限は一切ない。その代わり、円滑な進行を維持するために、画面のあるものに限る、上映時間の申告、公序良俗を乱すもの(無修正AVやスプラッターもの等)は避けるなどのルールが定められている。

さて、いよいよ上映開始。たちまち会場は熱気に包まれた。この会場にはスクリーンと同様、大きなスピーカーも設置されており、そこからかなりの音量で曲が流れてくるのだが、原音のボーカルは参加者の歌声にかき消され、まったく聴こえない。べつに指揮する者がいるわけでもないのに、参加者の歌声はピタリとタイミングが合っている。前述のパンフレットの「おしらせ、お約束」に、「この室内は一応防音設備が施されており、他の部屋やフロアと独立していますので、おもいっきり歌っていただけますが、他の参加者に迷惑になるような行動は避けて下さい」とあり、参加者の皆さんは、それが許される環境の中で、安心して腹の底から大声を出して歌うことを十分に楽しんでいる様子。

歌の最中、試みに廊下に出てみたのだが、二重扉を隔てた室外には音はまったく漏れてこない。また、「この室内での飲食は自由ですが、食べかす、ゴミ等は必ず各自で責任を持って始末して下さい。また、飲酒喫煙はご遠慮下さい」ともあり、参加者は思い思いにペットボトルの飲み物やお菓子などを持ち込んで休憩時間などに飲食しているが、ゴミをまき散らす者など誰一人としていない。これらマナーをわきまえた大人としての振る舞いこそが、この集まりを長続きさせている秘訣の1つであろう。

さらに、「但し、他の参加者に迷惑をかけなければ、手拍子、ナレーション、歌詞に準じた掛け声、合いの手、主旋律以外のパートを歌う、画面のキャラと同じ動作をする、踊る等、存分にお楽しみ下さい」とあるように、『マイティジャック』のオープニング曲の冒頭では、「マイティジャックとは……」という、お馴染みのオープニング・ナレーションに声を合わせて語ったり、『怪奇大作戦』のオープニング曲の前に、TBSタケダアワーのトレードマークである「♪タケダ タケダ タケダー……」のスポットが流れると、これも合唱する、といった光景が見られた。

エアチェックした映像をそのままダビングしたであろう映像には、画面左上に時報が表示されたものもあり、なんとも微笑ましい。各テープの上映後は、歌い終えた満足感のこもった拍手で締めくくられ、これも礼儀正しい場面と言えよう。それにしても、『マイティジャック』といい、『怪奇大作戦』といい、もともとのオリジナルで男性コーラスが歌っている主題歌を歌うのは良いとして、岩崎宏美さんが独唱するアニメ『ママは小学4年生』のエンディング曲「この愛を未来へ」を数十名の男性が大合唱するのを聴くのは、どうしても違和感が……(笑)。

終了後の「スタッフ打ち合わせ」では、来年1月に開催される第169回「うた会」で上映するビデオテープの担当者が割り振られていた。12月の第168回「うた会」で、この集まりは、丸14年、来年1月には、15年目に突入する。なお、すでに決まっている向こう3カ月間の開催予定は、下記のとおり(※)。

回数 日程 場所
第167回 11月11日(日) 台東区寿区民舘 4F多目的ホール
第168回 12月9日(日) 品川区大井町 品川中小企業センター
3Fレクリエーションホール
第169回 2008年
1月13日(日)
品川区大井町 品川中小企業センター B1F音楽室

※いずれも10:30開場、19:00終了予定。