この秋に発売される、フルHDパネルを搭載したホームシアタープロジェクターがここにきてほぼ出揃った。フルHDとは、投写用パネルの画素数が1,920×1,080ドットということを指している。パネル画素数は画面のきめ細かさの尺度であり、パネルを使用したプロジェクターでは、薄型テレビと同様に、画素数が多い方がきめ細かな映像表示が行えることになる。つまり、ハイビジョン放送(BSや地デジ、それにビデオカメラなど)のリアル表示に対応していることを表す。このリアル表示ということが実は重要で、ソースを、画素数の変換を伴わずにそのままに忠実に表示できることになる。

パネル表示タイプのディスプレイは、画素数が異なれば画素数に見合った映像情報を作らなければならない(これが画素数変換)。例えば1,280×720ドットのパネルには1,920×1,080ドットの映像は、そのままでは表示できない。1,280×720ドットになるよう、ソースの画素を間引く必要がある。ここで生じるのが情報の欠落だ。横の数で言えば、1,920を1,280ドットに落とし込まなければならず、この場合約600画素ほどを間引くことになる。この間引きは「ネグる」ということでもあり、結果的に情報が少なくなり、リアル表示に比べどうしても鮮鋭感で劣ることになる。

なお、この画素数変換はスケーリングとも言い、使用するスケーラーの性能によって、画質に差が発生する。現在では、優れたスケーラーを使うことで、かなり画質劣化を抑えることも可能となってきている。

今秋の新モデルでは、新パネルでよりフルHD性能が高まったうえ、光学部設計も改善されコントラストが上がり、さらにダイナミックアイリスなどの使い方もフルHD版としてグレードアップしている。

さて、紹介する3モデルは同一パネルの「D7」C2Fineを使用しているが、この後で述べるようにD7化されたことでよりS/N比とコントラストがアップ、魅力的な画質を備えるようになっている。

また、今秋のモデルの多くは、昨年初登場したフルHDモデルがベースになっている。表示パネルを含め、光学部、映像エンジンなど、作り慣れたモデルになったことで、性能面/製造面で不安が少なくなったというのも本命視される理由の一つだ。

さらに、3モデルとも外観デザインを踏襲することで余分なコストアップを抑え、それを画質改善に振り分けたことも、製品としての大きな魅力となっている。

「C2Fine」とは

表示パネルの「C2Fine」はセイコーエプソンが開発した透過型液晶の新パネルの呼び名である。ホームシアター用、リアプロジェクター用として開発されたもので、垂直配向によるハイコントラスト化、高輝度化を狙って開発されたものだ。もちろん、RGB用3つの液晶パネルで映像表示する「3LCD」方式を採用している。現在のところ液晶プロジェクター用パネルとして最高性能を誇っており、多くのモデルで使用されるようになっている。

開口率が20%アップし、明るさ、コントラスト比が向上した「D7」C2Fine

C2Fineパネルは、昨年発売されたホームシアター向けフルHDプロジェクターから採用され初めた。昨年の製品に搭載されていたC2Fineは「D6」レベルのものだが、今秋はこれが世代アップし「D7」へと進化した。D6も高性能なパネルであったが、量産化でやり残していたこともあり、その後1年を掛け改良に励んだということでD7が誕生したのである。

D7で改良されたのは「開口率」という透過する光の量のアップ。これは明るさの改善につながるが、ハイコントラスト化に結びつくものでもある。約20%もの大幅な開口率のアップは、プロジェクターの性能にダイレクトに寄与することになる。

そして細かくはドライバーの12ビット化。前作までが10ビットだったが、これが12ビットになり階調表現能力が4倍と大幅アップしている。合わせて耐ノイズ性能を見直しており、セットになったときの、画面全体の微少ノイズが抑えられている。