上勝町役場で行われた調印式で握手する町長の笠松和市氏(左)とマイクロソフト代表執行役社長のダレン・ヒューストン氏

徳島県勝浦郡上勝町とマイクロソフトは、ICTを利活用した地域振興に関する覚書を締結した。過疎地域における自立的なICT利活用促進モデルの創出や、町内の光ファイバー網を生かした産業・生活でのICT利活用促進などに取り組み、過疎や少子高齢化・産業構造の変化などによる課題を抱える地域の模範となる事例創出を目指す。

上勝町は平成17年度に高度情報通信基盤を整備し、86%の世帯が加入、インターネットやIP電話を利用している。木の葉や草花を料理の"つまもの"として商品化・販売を行う「株式会社いろどり」事業では、女性を中心に高齢者約190人が取り組み年間2億6千万円を売上げるなど、ICTを活用した地域振興が従来から行われ、国内外から注目されている。上勝町はマイクロソフトとの協力で、いろどり事業以外の活動にも積極的なICTの利活用を推進する。

マイクロソフトは2005年に発表した同社の日本における企業活動の3ヵ年計画「Plan-J」において、日本における投資の拡大、企業およびコンシューマにおける技術革新の促進などを掲げ、日本社会への貢献および日本における事業の拡大を目指している。今年7月には四国支店を開設し、今回の覚書締結は四国支店と自治体との初めての取り組みとなる。同社は、ここで得られた成果を他の地域にも実践的に展開していくことを目指し、事例のモデル化と情報配信を行うとしている。

今回の締結による具体的な取り組みとしては、地域におけるICTリーダーの育成やリテラシー向上を町内で自立的に実施できる体制を作り、運用形態を構築する。また、ICT利活用による町内の各機関・企業の事業効率化や生産性向上の事例創出、高齢者の利用におけるノウハウの製品開発への活用、必要な情報モラル・情報セキュリティについての啓発活動などが計画されている。

この取り組みについては、これまで上勝町の情報化を支援してきた徳島大学とも緊密に連携していく予定だ。徳島大学教授の地域創成センター長吉田敦也氏は、以下のようにコメントを寄せている。「上勝町のいろどり事業は、ICTの効果的活用により、中山間地域の自然環境を生かしたニュービジネスが可能となり、それを地域の高齢者が一丸となって展開している類いまれな事例です。マイクロソフト社を核とする産官学民連携によりモデル化され、一層に魅力的なものとなることは、日本の地域再生に貢献し、大きな利益をもたらすものと確信しています。」