――今おっしゃった、どちらの作品も1人で何役もやらなきゃいけないわけですね。

「やらなきゃいけない。だから僕は思うんだけど、私たちの仕事、語りの芸っていうのは、基本は落語なんですよね。会話で成り立ってるわけですから。ダイアローグといいますか、セリフばかりで続けていくっていうのが、非常に落語に近い存在だというふうに思って」

――お客さまに向かって、ここに注目していただきたいというポイントをうかがえますか。

「バスター・キートンの映画『探偵学入門』は44分です。それをノンストップで、ライブでやる。それも大変なんですが、その中でさっきも言いましたが、演者1人が何役も使い分けていく。私が10役ぐらい、戸田恵子もやはり同じぐらい。戸田恵子には、男性もやってもらおうと思ってますからね。その使い分けのおもしろさ。その声優の技術というものをぜひ観ていただきたいなあ、と思っております」

――ライブならではの迫力があるんでしょうね。

「噛んじゃったり、いろんなことあると思うんですよ。だけども、それを乗り越えてやってみたいな、と思っております」

――噛んじゃったら、「今、噛んじゃったよ」ってギャグにしたり……。

「そうそう。『あ、見てた』なんてね(笑)。そうするとグッとなんか、テレビとはまた違った親近感が生まれるということはあるかもしれませんね」

――そういう意味での、お客さまとのやり取り的な部分……。

「そうですね。そのへん、なるべくセリフも今の身近にある事柄を取り上げていくとか。『続かないねぇ、これは……』って言うと、『どこかの国の大臣と同じですから』とかね(笑)」

――「声優口演」は、このオーチャードホールのほかにも催されるそうですが……。

「あと、2カ所ありまして。1カ所は、10月28日に、東京ミュージック&メディアアーツ尚美のバリオホールっていう所でやるんですが、ここでビックリしてください! アニメの王子様、福山潤が登場します。福山潤がね、映画『のらくろ二等兵』に挑戦します。それからベテラン近石真介が、映画『弥次喜多道中 岡崎の猫騒動』をやります。そして、バスター・キートンの映画『探偵学入門』は、堀内賢雄と井上喜久子さんがやります」

――井上さんは、アニメなどで人気を獲得されてますよね。

「井上喜久子さんはすごいんですよ、ファンが。大体30代から40代ぐらいの人が、みんなコスプレでね。女学校の洋服を着て来ちゃったりして。その観客席を観るのも、また楽しみのひとつだと思います(笑)」

――残るもう1カ所は?

「11月3日の文化の日に四谷区民ホールという所で。これは、また山下さんが参加するんですが、あと『はじめてのおつかい』でおなじみの近石真介が出ますからね。語りの天才ですから。それとバスター・キートンの映画『探偵学入門』は、これがガラリと変わりまして、堀内賢雄と池田昌子。つまり、オードリー・ヘップバーンとブラッド・ピットの共演ということで」

――すごい共演ですね。

「さらに驚くなかれ、映画『のらくろ二等兵』を今度は皆川純子という、アニメ『テニスの王子様』の主人公・越前リョーマ役で大ブレークしている女優が、ここに参加すると。こんなすごいメニューはない! ということで、アニメ、外国映画、ジャズ界の王様と、一緒にコラボレーションしてやってまいります」