ロシア通信事業大手のTransTeleCom(以下、TTC)はこのほど、北京事務所を開設した。ロシアの通信企業としては、アジア太平洋地区で初めて事務所を設置したことになる。

1997年に設立されたTTCは、ロシア固定通信キャリアのトップ3に数えられ、昨年の売上高は178億ルーブル(9月26日現在、1ルーブル=約4.9円)。

TTC総裁のSergei Lipatov氏は、「3年前から中国での事務所開設を検討してきたが、ようやく実現した。TTCは過去数年間、中国の電信キャリアとの提携を着実に進めてきた」と述べた。

2002年の中ロ鉄道技術協力を契機に、TTCは中国通信大手の中国鉄通(チャイナレールコム)との提携を実現。2004年には中国通信大手の中国聯通(チャイナユニコム)とも連携し、昨年は中国網通(チャイナネットコム)との関係も構築した。現在は中国電信(チャイナテレコム)との提携を進めているといわれ、中国の主要電信キャリア6社のうち4社がTTCの協力パートナーとなっている。

Lipatov氏は同社のアジア戦略についても触れ、「欧亜大陸間に信頼できる『欧亜高速線路』を作る」と述べた。欧亜高速線路は、2.8万平方キロメートルをカバーする世界最大規模の基幹ネットワーク。ロシア全体をカバーすると同時に、欧亜大陸を連結する壮大なものだ。

今年初めに発生した台湾地震による海底ケーブル切断事件はまだ人々の記憶に残っている。海底ケーブルの困難な修復作業によって、長時間にわたってインターネットなどの通信が大きな影響を受けたが、このことが陸上ケーブルの発展に大きな可能性を与えた。陸上ケーブルではたとえ問題が発生したとしても、修復時間は相対的に短くて済むはずだからだ。

TTC国際市場マーケティング部高級副総裁のIgor Kelshe氏は、「TTCの北京事務所は販売業務は行わず、ロシア関連企業への技術支援を行うと同時に、中国の提携パートナーとの協力関係強化を目指す」という。現在までに80社余りのロシア企業が中国に事務所を設置しており、TTCとの関係が深まりそうだ。