最後にiPod shuffle、iPod nano、iPod classic、iPod touch、そしてiPhoneも加えた新iPodラインナップと、それぞれの価格が再度紹介された。従来モデルに比べると、iPod Classicは同じ価格で30GB/ 80GBモデルが80GB/ 160GBモデルとなり、iPod nanoは従来249ドルだった8GBモデルが199ドルになった。ストレージ部品がデジタルプレーヤーの進化を支えているのが分かる。今回の基調講演で各製品に費やされた時間は、iPod shuffleが約1分45秒、iPod nanoが約12分30秒、iPod classicに約4分30秒、iPod touchとiTunes Wi-Fi Music Storeに約26分だった。iPod shuffleは大きな変更ではなかったため短かったが、全体のバランスからフラッシュメモリ搭載製品へのシフトが伝わってくる。HDD搭載のiPodは、iPod classicへの名称変更と共に、これまでのような兄貴的存在ではなくなったように思える。

今回の基調講演で最大のサプライズは最後の最後に発表された。iPhoneを含めてiPodシリーズの価格を比べると、8GBモデルが299ドルのiPod touchに対して、iPhoneは携帯電話機能を備えるものの8GBモデルが599ドルと飛び抜けて高価だ。Jobs氏によると、iPhoneはユーザー調査で過去最高の満足度を記録しているそうだ。そのiPhoneを「ホリデーシーズンに向けて、より多くの人にとって手頃な製品にする」という理由で、人気の高い8GBモデルの399ドルへの値下げが発表された。4GBモデルは廃止となる。その瞬間、会場からは歓声8割、iPhoneユーザーのため息2割。もちろんため息は大歓声にかき消されていたが、問題はため息の存在である。これらはいち早くiPhoneを購入した熱心なAppleユーザーだ。初期モデルに付きもののトラブルや高い価格は覚悟していたと思うが、それでも発売からわずか2カ月ほどで、200ドルという3割以上の値下げが行われるとは誰も予想しなかっただろう。

iPodの新ラインナップにiPhoneも加えて価格を比較

最後のサプライズはiPhoneの価格

599ドルだったiPhone 8GBをわずか2カ月ほどで399ドルに値下げ

今年のホリデーシーズンのiPodラインナップ

これはフラッシュメモリを搭載する製品の難しさとも言えそうだ。フラッシュメモリの価格下落を受けてメディアプレーヤーの大容量・低価格化が進む中で、iPod touchには同市場において競争力のある価格設定が求められる。その点でiPhoneは、iPod製品ラインナップの延長にうまく収まっていなかった。iPod touchとiPhoneの価格差が広すぎると、iPod touchがiPhoneキラーになりかねない。

ただし今回の値下げについては、上位モデル(8GB)で"手頃"を実現した点が気になる。これまでの下位モデル(4GB)よりもさらに安い価格に引き下げられたことで、iPhoneのハイエンド感が薄れてしまったように思えるからだ。たとえばMotorolaの薄型携帯RAZRシリーズは、ハイエンド携帯だった時期は高い人気を維持していたが、普及帯に製品ラインアップが拡大され、ハイエンド・モデルの優位性が分かりづらくなると共に新鮮さを失ってしまった。もちろん適正な価格に改訂されるべきだと思うし、399ドルは普及帯ではないという意見もあるだろう。だが、今回はiPhoneに対する印象を変えるほど急激な値下げである。売上げ増が期待できる反面、イメージを崩すリスクも大きいように思える。

値下げ発表直後からAppleのWebサイトのサポートページには、値下げに困惑、または怒ったiPhoneユーザーからの書き込みがフォーラムに殺到している。クレジットカードの価格保護規定に関する情報交換、集団訴訟の呼びかけ、大幅値下げされたAperture 1.1の時と同じように初期ユーザーにクーポン券を提供してはどうだという提案、iPhoneの好調な売れ行きに対する疑いなど、様々な声が寄せられている。一部では信用問題に発展しかねない雰囲気もあり、Appleの今後の対応が注目されるところだ。

今年の音楽スペシャルイベントのミュージシャンゲストはKT Tunstallでした