精神病院を抜け出した躁鬱病の女と鬱病の男が、九州を旅しながら何かを感じ取っていくロードムービー『逃亡くそたわけ-21才の夏』の完成披露試写会とトークショーが5日、都内で行われ、主演の美波、吉沢悠らが出席。躁鬱病を題材にしながらも爽やかに描かれる同作の魅力をたっぷりと語った。

主演の美波(写真右)と吉沢悠

2006年に『沖で待つ』で直木賞を受賞した作家・絲山秋子の同名小説が原作の『逃亡くそたわけ-21才の夏』。躁鬱病と爽やかさ、一見すると相反しそうな2つキーワードを、九州縦断の旅をフィーチャーするロードムービーに落とし込むことで、主人公・花ちゃん(美波)となごやん(吉沢)のポジティブさとネガティブさが奇妙な形で同居し、独特な雰囲気を醸し出す作品となっている。

個性派のキャストが集まった

中でも、病気によって現れる幻聴や幻影の苦しみや、逃れられないことへの苛立ち・焦燥感を表現した美波の演技が見どころ。「何よりも花ちゃんの心情を考え、彼女を守るのは自分しかいないという気持ちで演じました」と美波は語る。また、小心者だが優しく物静かな性格のなごやんを演じる吉沢は「鬱病の事は予め勉強しました。でも、病気に引っ張られすぎず、あくまでも花ちゃんとなごやんのロードムービーということを意識しましたね」とコメント。花ちゃんとなごやんは旅で何を感じ、つかむのか。2人の演技を堪能しよう。

美波は若干20歳ながら、野田秀樹、蜷川幸雄の舞台にも出演したキャリアを持つ実力派

2006年に芸能活動を再開した吉沢。同作や『夕凪の街 桜の国』では俳優として新たな一面を見せる

そんな、青春映画ともいえるロードムービーにエキセントリックな要素が加わる。そう、ガッツ石松や我修院達也ら異色俳優の参加だ。幻覚に悩まされる花ちゃんの前に現れる架空の人物を、我修院達也、大杉漣、ベルナール・アッカらが熱演。我修院は「どんな役かと楽しみにしていたら、人間の役じゃなかったです(笑)。ヨロシク! イェイ!」とハイテンション。また、花ちゃんとなごやんを見つめ続ける謎の男・海坊主役をガッツ石松が演じる。ガッツは現場での感想ついて「みんなで豚シャブ食いに行ったよね。おいしかったね」とガッツ節が炸裂。さらに「監督が何も言わなければ"OK牧場"なんだね。ワンモアって言われたこともあるね」と。これには本橋圭太監督も苦笑しつつ、会場は笑いの渦に。2人の濃いキャラクターが、作品のアクセントになっている。

ガッツ(写真左)演じる海坊主は、物語のラストで絡む重要な役

『逃亡くそたわけ-21才の夏』は10月20日より渋谷Q-AXシネマほかで全国ロードショー。また、10月6日より、ワーナーマイカルシネマズ福岡ルクルほか7館で九州先行ロードショーが行われる。