シャープは31日、タッチパネルやスキャナの機能を持つ「光センサ内蔵システム液晶」を開発したと発表した。9月にサンプル出荷を開始し、来春には量産を始める予定。

従来のタッチパネルに見られる、画面を押したときの圧力を感知する抵抗膜方式、微弱電流の変化を測定する静電容量方式とは異なり、光センサーによる検知方式を採用した。タッチする部分が4点以上でも認識できるのが特徴。これにより、液晶画面上にピアノの鍵盤を表示して、複数の鍵盤をタッチして和音を再現するなど新しい利用方法が広がる。

液晶の構造。1画素に1つの光センサーを内蔵することで、液晶が表示デバイスから入出力デバイスになった。もし1画素内の各RGBに光センサーを内蔵すれば、カラーでのスキャニングも可能になるという

ちょっと分かりにくいかもしれないが、4カ所同時タッチを認識しているところ。このように複数ポイントの認識も可能となっている

従来の方式では、液晶部分とは別にタッチパネル用フィルムなどを液晶に貼り付ける必要がある。これにより、バックライトの光量が1~2割程度減少し、液晶本来の美しい画像が損なわれていた。また、フィルムを貼り付けることで厚さも増していた。光センサー方式では、液晶の各画素内に液晶の駆動回路と同時に光センサー回路を内蔵し、液晶に触れている部分を画像として読み取ることでタッチを認識する。液晶表面にフィルムを貼る必要がないので、バックライトロス低減と薄型化を実現した。表面にアクリルや防水ガラスを別途貼り付けられるなど、機器設計の自由度も高まる。コントローラーは別途必要だが、液晶部分にフィルムなどのパーツは必要ないため、コストアップは最低限に抑えることが可能。

また、光センサーからの信号を処理することで、スキャン機能を持たせた。現在は名刺などの読み取りが行えるが、この機能をさらに強化することで指紋認証なども実現できるようになるとしている。

スキャン機能を使って名刺を読み込んでいるところ。このように、読み込んだ名刺をそのまま表示できる

2本の指を使って地図の引き伸ばしや回転をさせるといった使い方もできる

「光センサ内蔵システム液晶」の説明を行うシャープ モバイル液晶事業本部の方志教和本部長

今回の液晶は中小型向けに開発。携帯電話、PDA、ウルトラモバイルPCなどに応用していく予定で、具体的には12インチ程度までのサイズを想定している。これより大型になると、生産設備の大型化が必要となりコストが高くなる可能性が高いためだ。

サンプル品として展示していた半透過型液晶は、対角8.9cmの3.5型で、320×480ドットのハーフVGA。透過型やVGAも技術的には問題ないという。すでに量産化に向け顧客企業との話が進んでいるとのこと。販売目標は2009年度で600億円。