8月19日~21日(米国時間)の3日間、プロセッサに関する国際学会「Hot Chips 19」が開催された。会場は例年通り米Stanford大学のMemorial Auditoriumで、今年の参加者はITバブルの崩壊以降では最多となり、約600人にも上った。

「Hot Chips 19」の会場 - カジュアルな服装の参加者がほとんど

Stanford大学は米国を代表するトップレベルの大学であり、シリコンバレーの人材の重要な供給元である。また、コンピュータアーキテクチャのバイブル的なテキストである「Computer Architecture : A Quantitative Approach」(いわゆる「ヘネパタ本」)の著者であるJohn L. Hennessy氏とDavid A. Patterson氏のうち、Hennessy氏が学長を務めている。

Stanford大学のシンボルでもあるHoover Tower

Stanford大学のMemorial Auditorium - Hoover Towerとは噴水を挟んで反対側にある

余談 - 予稿集がUSBメモリに…紙のほうが便利では?!

余談になるが、昨年までのHot Chipsの予稿集は紙で、スライドのコピーがバインダーにはさまれた状態で配布されていた。しかし、スポンサー企業の寄付であるのか、今年は1GバイトのUSBメモリで配布された。ただし、中身は100Mバイト程度だった。

そのようなわけで、予稿集を見るにはパソコンが必要であるが、会場にはところどころにコンセントが設置されている程度で、全員がパソコンを繋げるという状態には程遠い。紙の場合、日本に持って帰る荷物が増えることになるので、USBメモリでの配布はありがたい。しかしながら、やはり紙のほうが見やすいし、検索性も良く書き込みも容易である。あらかじめレジストレーション時に申し込めば、25ドルで紙の予行集も入手できるようになっていたので、筆者はこれを申し込むことにした。

Hot Chipsはハードスケジュール!!

このHot Chips 19だが、初日である19日は「Tutorials」、続く20日と21日は「Conference Day」となっており、本格的な発表は2日目以降に行われる。

さて、20日は米IBMのプロセッサ「Power6」のセッションで幕を開けた。続いてSF作家でコンピュータ学者でもあるVernor Vinge氏の基調講演があった。その後、昼食を挟んでマルチコアのセッションが2つあり、組み込み関連およびビデオ関係のセッションの後にディナー、さらにその後で「What's next after CMOS?(CMOSの次に来るのは何か)」というパネルディスカッションが開催された。これが終わったのは、夜の9時45分というまさにハードスケジュールである。

21日の最後のセッションは米Sun Microsystemsのマルチコアプロセッサ「Niagara 2」に続く「Victoria Falls」(開発コード)と、IBMの次世代メインフレーム向けプロセッサ「z6」の発表があった。このように目玉のセッションを最初と最後に用意しており、まったく気の抜けないプログラムとなっている。

グラフィックスチップにも高い関心

20日には、マルチコアのセッション「Multi-Core and Parallelism I」として米NVIDIAが同社のグラフィックスチップ「GeForce 8800」のアーキテクチャと、グラフィックスではなく汎用の数値計算に使用した場合についての発表が行われた。それから、米AMDのグラフィックスチップ「Radion R600」についての発表があり、グラフィックスチップの強力な浮動小数点演算能力を数値計算に使うという用途に対する関心の高さを感じた。

さらに続くセッション「Multi-Core and Parallelism II 」では、米Intelの80コアのプロセッサやTexas大学の「TRIPS(Tera-op Reliable Intelligently-adaptive Processing System)」のプロトタイプに関する発表が行われた。またこのセッションの最後では、これまでステルスモードで活動しており、秘密のベールで覆われていた米Tileraが登場し、64コアのプロセッサ「TILE64」について発表した。

これから数回に渡り、これらの発表の中から興味深いものを取り上げて紹介していく予定である。