ソウル最大の電気街が位置することで有名な龍山地域の風景が、大きく変わろうとしている。

高さ620mのランドマークが登場

ソウル市と、高速鉄道・ソウル地下鉄などを運営するKorailは、龍山区内にある56万6,000平方メートルにおよぶ地域を再開発することで合意した。

龍山区はソウル市のほぼ中央に位置しており、南側にはソウル中央部を横断する河川・漢江が流れている。今回の計画は、現在Korailが車両基地として使用している「龍山国際業務地区」44万2,000平方メートルを再開発しようという同社の思惑と、漢江に旅客・貨物ターミナルを造成しようとする「漢江ルネッサンス計画」に基づき、漢江に隣接した西部二村洞地域12万4,000平方メートルを再開発しようというソウル市の思惑が合致して実現したものだ。ちなみに西部二村洞地域は現在、高層アパートと道路があるだけで「景観が壊されており、漢江への接近が難しい」(Korail)状態だという。

再開発後には龍山の風景が一変することが予想される。まず、最低でも350m、最高620mという超高層のランドマークビルが建てられる。その周辺には商業施設や企業などが入るビル、公園、文化施設、住宅が配置され、スカイラインも造成される。漢江には遊覧船の船着場が設けられ、漢江が龍山と上海・天津をつなぐ航路となるため、国際ターミナルも新設される。

これまで龍山駅から漢江まで歩いていくには、ビルが建ち並び、道路が複雑に交差する街の構造上、大変難しかった。しかし、再開発され道路などが整備された後は、簡単に歩いていけるようになるという。漢江付近には低・中層のビルを建てて、見晴らしも確保したい意向だ。

龍山地域の再開発は2010年頃に着工する予定だという。

再開発後のイメージ図。620mのランドマークビルがひときわ目立つ

龍山電気商街とは

ところでここで気になるのが電気街(正式には龍山電子商街)の存在だ。再開発の対象地域を見ると、龍山電子商街と重なるのではないかと思えるほど近いからだ。

しかし、Korail担当者によると「ここは開発の対象外」ということで、名物の電気街はそのまま残りそうだ。

龍山電子商街は、旧地下鉄龍山駅およびKorailの車両基地周辺に広がる商業地帯。価格が安く品揃えが豊富ということで、「電化製品を買うなら龍山」というイメージがかつては大変強かった。しかし、2004年に高速鉄道の「KTX」が開通すると、龍山駅は地下鉄駅ともども歩いて5~10分程度離れた場所に移転してしまう。

新しい駅ビルには、デパート、映画館、大型スーパー、電化製品専門店などが直結しており、龍山駅で降りても、駅直結のビル内に居続ける人が多い。そこですべての用が足りるからだ。

それでも一般の店ではなかなか売っていない専門性の高い電子部品を求める人や、より多様な商品を見てから買いたい人、行きつけのお店がある人などは、旧来の電気街に足を運び続けている。

じつは龍山電子商街は、龍山より北側の地域を流れる清渓川周辺にあった電気街の一部が、都市計画の一環により龍山に移ってきたものである。

龍山以前に電気街として有名だった「セウン商街」は今、清渓川の脇に小ぢんまりと残って営業を続けている。しかし、このセウン商街も都市計画により撤去され、公園となることが既に決定している。龍山は残るだけ幸運といえるのかもしれない。

龍山地域の開発が完了すれば、やや古いビルがひしめき合う電気街のすぐ横に、現代的な高層ビルが建ち並ぶという、少し変わった景観になるかもしれない。しかし、龍山駅から漢江に直結する経路を確保することで、龍山駅の外に出た人たちが電気街をたずねるという可能性もある。結果は開発が終わってみなければ分からないが、いずれにしても末永く残してほしい風情のある電気街だ。