日本オラクルは、2007年5月期(2006年6月-2007年5月)の決算を発表した。売上高は対前年同期比10.1%増の1,007億6,700万円、営業利益は同14.5%増の367億8,100万円、当期純利益は同16.6%増の221億3,400万円で、売上高が初めて1,000億円台に達するとともに、売上高、営業利益、純利益いずれも過去最高となった。米オラクルが買収した企業の製品を扱う日本オラクルインフォメーションシステムズ(OIS)との「協業」により、アプリケーション製品の販売体制が整い、アプリケーションとともに、重点を置いているミドルウェアが大きく伸び、収益に貢献した。

同社の旗艦である「データベース・テクノロジー」は売上高が同2.5%増の420億8,400万円と微増だった。この実績について、新宅正明社長は「大型案件を固めるパワーが不足していた。業種ごとの営業体制を強化していきたい」と振り返った。ただ、同社によれば、ID管理製品や、同社が特に注力している「フュージョン・ミドルウェア製品」の販売は急拡大しており、新宅社長は「ハードの性能が上がり、CPU数、台数が減った」ことがデータベース市場全体に影響していると指摘する。

2007年5月期は過去最高の実績だった

ビジネス・アプリケーションは対前年比63%増の売上高を記録

今回、最も伸びが顕著だったのは「ビジネス・アプリケーション」で、売上高は対前年同期比63%増の53億7,100万円だ。米オラクルが買収した、旧ピープルソフト、旧シーベル・システムズの日本法人の事業を継承している、OISと販売でクロスライセンス契約を締結したことなどが効果をあげ、製品、ソリューションが大幅拡大、組織整備や要員強化により、営業力、ソリューション力が向上、大型案件の獲得が加速したという。

サービス部門も同22%増の107億8,600万円と好調だった。なかでもコンサルティングサービスは同26.7%増の72億500万円で、米オラクルが買収した各社の製品の導入についてのテクノロジーコンサルティングサービスが増加したほか、アプリケーションコンサルティング分野では、大規模プロジェクトのコンサルティングサービスの需要が拡大した。また、対前年同期比24.5%増の14億6,700万円だったアドバンスト・サポートは、基幹業務システムに対し、同社の技術者が遠隔地から24時間、365日の保守・運用を担う「Oracle On Demand」などへの需要が強かった。

日本オラクルの松岡繁 常務執行役員 最高財務責任者

OISとの新体制を「ベストな選択」と述べた日本オラクルの新宅正明社長

2008年5月期の業績予想としては、売上高が同17.4%増の1,183億円、営業利益が同8.7%増の395億円、当期純利益は同5.3%増の233億円とみている。売上高の成長率を高く見込んでいるが、これには「協業効果」が含まれている。同社は6月からOISとの協業体制を強化、これまで、同社の従来製品と、OISが扱う買収した企業群の製品は、顧客との窓口がそれぞれあり2本立てだったが、これを一本化するとともに、OISの人員270人が同社に出向する。OISの製品は同社経由で提供することから、その分が計上され、17.4%の増収見込みのうち6%がこれに相当する。

日本オラクルの松岡繁常務執行役員最高財務責任者は「窓口が2つあるのは、ビジネス、マネジメントのうえで課題があった。製品の供給を受けるが別会社であり、買収ではなく、兄弟会社であり、一種の代理店のような位置づけ」と話す。従来、両社の協業はライセンス販売に留まっていたが、新たな体制では、サポート、教育、コンサルティングまで、すべての領域に拡大する。新宅社長はこの形態を「ベストの選択だ」と評価している。

業績予想を売上区分別にみると、最も高い伸長率を期待しているのはビジネス・アプリケーションで、対前年同期比86.2%の100億円を目指している。これは「協業効果」が含まれているわけだが、従来の「Oracle E-Business Suite」の大きな成長も見込んでいる。また、コンサルティングサービスも同51.3%増の109億円とみている。この分野では「300-400人の要員を3年で1,000人体制にまで増やす」(新宅社長)意向だ。

今回の決算では、同社はすべての部門で増収増益だった。特にビジネス・アプリケーションの急拡大ぶりは目覚しい。とはいえ、依然、売上全体に占める比重は小さく、5.33%に留まる。今回の実績よりさらに86.2%伸びると予想している2008年5月期でさえ8.45%だ。だが、同社のビジネス・アプリケーションは、米オラクルが2年半で33社の企業を買収し、そろえたものだ。日本オラクルでは、業種ごとの取り組み、中堅・中小企業向け市場への浸透策などを着々と進めており、体制固めと真の成長への道筋はまだこれからともいえる。

主力である「データベース・テクノロジー」の2008年5月期売上高を、同社は対前年同期比6.2%増の447億円と予想している。全体に占める比率は、2007年5月期が41.7%、2008年5月期は37.7%だ。まだ、当面、データベースが最大の基盤であることは間違いないだろう。ただ、同社は、純粋にデータベースだけが機軸との考え方ではなくなっているようだ。新宅社長は「(データベースの領域では)オプション製品やフュージョン・ミドルウェアが成長のエンジンとなる」と述べている。