ここ数年で急速に利用者数を増やし、新たな形態のWebメディアとして社会に認知されはじめたSNS(ソーシャルネットワークサービス)。招待された人しか会員になれないサービスが多く、信頼性が高いことから、マーケティングに活用されるケースが増えている。だが、コンシューマー向けの活用策だけでなく、社員を会員とした「社内SNS」や会員を経営者に限定した「経営者特化型SNS」など、SNSを直接経営に生かそうという企業も数多く現れている。こうしたSNSには、経営者が社員の日記をチェックするといったことが行えるため、現場に潜む問題点を発見できるといったメリットがある。また、内定者の囲い込みに成功した事例もあり、経営を進める上での力強いツールになる可能性を秘めていると言える。

「社内SNSはマネジメントそのもの」

「社内SNSはマネジメントそのもの」。米国などでSNSが普及し始めた2004年から、ビジネス向けSNSの研究と開発を続けてきた「Beat Communication」(東京都港区)の村井亮社長はこう言い切る。同社は「ビジネスのためにSNSは何ができるか」をテーマに、これまで多くの社内SNSを開発・販売しており、NTT東日本、NTTデータ、日本興亜損保などの大企業による導入実績もある。

村井氏によると、社内SNSの導入目的は概ね3つになるという。(1)社員同士のコミュニケーション促進、(2)内定者の囲い込み、(3)OB・OGの囲い込み、がそれだ。

(1)の社員同士のコミュニケーション促進においては、本社・支社間の情報格差を埋める上で、大きな効果がある。SNS上の日記やコミュニティにおいて社員同士が交わす会話によって、互いの情報を共有することにつながるというのだ。

また(2)のとおり、景気の回復に伴い、急激に売り手市場となって激しさを増している人材争奪戦においても、「内定者の囲い込み」に大きな効果を発揮しているという。「内定者同士のコミュニケーションやe-ラーニングによって、内定者同士や、内定者と会社との間に親密感が生じ、内定を断りにくくなる」(村井氏)のが理由で、ある社内SNS導入企業では、内定者の辞退がゼロになったという報告もなされている。

(3)の「OB・OGの囲い込み」は、出産や育児で休職する女性らの代替要員として、銀行などがOB・OGを活用する際、社内SNSに参加してもらっていれば、快く穴埋めをしてくれるケースが多いという。

社内SNSの効果はこれだけにとどまらない。不二家や東京電力などのニュースに見られるとおり、企業内部の不祥事が経営者へ十分に伝わっておらず、気づいた時は大変なことになっていたという事件が近年頻発している。だが、社内SNS内の社員の日記やコミュニティを通じ、「いわゆる社内の"バッドニュース"」(村井氏)を経営者が発見することで、未然に不祥事を防止する効果も期待できるという。

気になる費用は?

気になる費用だが、システムそのものを買い取るとなるとやはりそれなりの額がかかる。だが、例えば1000人規模の企業が社内SNSを導入する場合、「ユーザー数によっても異なるが、アプリケーションを利用するだけの場合は月々25~30万円の費用で導入できる」(村井氏)という。

同社が提供する社内SNSパッケージには、Q&A機能、スケジュール機能、アンケート機能、社内WIKI機能、動画配信機能などがあり、Q&Aやアンケートを多くの社員を対象に、高速で実施することができる。また、社内WIKI機能を使えば、営業マニュアルや業界用語集を、参加者全員の協力を得て作ることも可能だ。ある予備校では、社内SNSを使って学生らの意見を反映させた結果、精度の高いカリキュラムを作成できたという。

村井氏によれば、社内SNSを導入する際に大切なのは、ミクシィなどと同様「会員制にすること」。社員全員が会員になるよりも、招待制にしたほうが"盛り上がる"と言い、招待されない社員が会員になりたいという場合は、社内のSNS管理者から招待されるという形式をとっている企業が多いという。

経営者同士で商取引も

さらに、経営に役立つSNSとして活用されているのが、「経営者特化型SNS」だ。Beat Communicationが開発した経営者特化型SNSとして、「C・E・O LINK」があるが、同SNSには、ほかにはない特徴がある。まず、会員になるために、審査を経る必要がある。会員からの招待だけで会員になれる他のSNSと違い、運営者側の審査を経ないと会員になれない。また、会員が仲立ちとなり、友人と友人を引き合わすことができるマッチング機能もある。

SNS上で実際の商取引を行うことができるのも大きな特徴だ。互いのプロフィールに会社の紹介記事もあるため、会員それぞれが会社のような機能を果たすことができるという。ほかにも、経営者向けの税金対策講座などの動画配信や、会員同士が参加できるイベントの告知など、さまざまな用途に使われているという。

村井氏は社内SNSや経営者特化型SNSなど、ビジネスにおけるSNSの活用策について「SNSは、口コミを情報化し、コミュニケーションを高速化できる最も便利なツール。経営・ビジネスにぜひ活用してほしい」と話している。