デジタル化とはいいつつも、オフィスや家庭での"紙"への印刷の需要はいまだ衰えない。ある試算によれば、デジタル印刷は2010年だけで53兆ページ、金額にしておよそ2,960億円以上もの市場になるという。この市場をいかに攻略するかが次世代プリント市場での鍵となる。業界最大手の米Hewlett-Packard(HP)は30日(現地時間)、米ニューヨークで開催された同社の「Imaging and Printing Conference」において、「Print 2.0」の名称で新戦略を発表した。

同カンファレンスで講演した米HPイメージング&プリンティング部門エグゼクティブバイスプレジデントのVyomesh Joshi氏はPrint 2.0による市場攻略のポイントについて、

  • Webページの印刷を容易にする技術の導入
  • SmapfishやLogoworksといったHPの持つデジタルコンテンツサービスの範囲を拡大
  • プリント速度向上とコスト低減を実現するプラットフォームを市場の大きい商業向け分野に提供

の3つを挙げている。

HPによれば、現在家庭で印刷されているコンテンツのうち、およそ48%がインターネットから取得したコンテンツだという。だがブログや旅行サイトなど、Webサイトの多くでは印刷のための機能が限定されているか、機能そのものを持っていない。こうしたWebサイトを対象とした印刷をより容易なものにするのがPrint 2.0の目標のひとつだ。

たとえば同社では地図サイトのViaMichelinやブログサービスのSix Apartなどと提携して、地図やブログコンテンツの印字を容易にするほか、実際に紙ベースでの利用がどのように行われているかを模索している。SixApartの例でいえば、Movable Type用のプラグインとして、特定の投稿のみを抽出して印刷する専用ウィジェットの正式版の提供を6月29日に予定している。

また、今後の成長が見込まれる市場の開拓や、さらなるシェア獲得のためのセグメント別の攻略もPrint 2.0の核の1つだ。HPでは教育機関、公共事業、小売、交通機関/運輸サービス、金融セクターなど、各業種別に8つの新規ソリューションを発表している。たとえば教育機関向けには「HP Campus Advantage Solutions」、政府や公共機関には「HP Common Access Card」、小売店向けには「HP Retail Marketing Automation」、金融向けには「HP COmpliant Document Capture for SEC17a」といった具合だ。また輸送機関などの業種向けに小型プリンタの「HP Handheld sp400 All-in-One(AiO)」も提供する。

成長中の中小企業(SMB)分野の開拓は急務だ。同社では「HP Print Cost Estimator」「HP Print View Software」などの従来からのツールの強化版を提供していくほか、新製品としてHP Color LaserJet CP3505を投入する。CP3505は最高印刷品質時に毎分22枚のカラー印刷が可能なレーザープリンタ。6月1日より世界市場で投入され、北米での価格は699-1449ドルを見込む。また事務用品チェーンのOffice Depotで、HP Logoworksがカスタムロゴを用いた名刺やレターヘッド、Webサイトデザインといったサービスを提供していく。