マイクロソフトとレーベルゲートは28日、両社間における協業の拡大を発表し、レーベルゲートの音楽配信サービス「mora win」において、9月下旬から新サービスを開始する。OS・ソフトウェアベンダとしてのマイクロソフトと、音楽配信サービス事業者としてのレーベルゲートの協業に、インターネットラジオを手がける放送事業者のJ-WAVE、ポータブルメディアプレイヤー「gigabeat」シリーズの開発・販売を手がけるデバイスメーカーとしての東芝、携帯電話事業者のNTTドコモが協力し、音楽配信市場の活性化を目指す。

Windows Vistaに標準で搭載されているWindows Media Player 11 (WMP11)の「おすすめオンラインストア」として提供されるmora winについて、レーベルゲートの今野敏博・代表取締役社長は、新サービスのテーマを「世の中には何百万という曲がある。そんな中で、ユーザーがどうやって(新しい楽曲と)出会えるか」との観点から出発させ、「音楽の新"ハッケン"」というコンセプトに到達したと語る。

「ハッケン」に関わる新機能・サービスとしては、WMP11の左ペインのツリーに、ローカルのコンテンツと並んでmora winのコンテンツや関連サービスを表示させる。ここから、関連サービスの「PLAYLOG」や、J-WAVEのインターネットラジオ「Brandnew J」への導線が引かれる。

PLAYLOGはWMPの再生履歴をアップロードし、楽曲再生リストをオンラインで公開できるサービスだが、SNSとしての側面においては、似た趣向を持つユーザー同士がつながり合う場と言える。楽曲を発見する時は、「映画や本もあるが、友達が何を聴いているかが一番大きい」と今野氏。ユーザーが他のユーザーの再生履歴を閲覧すると、「そこにはmora winのボタンがあるので、すぐに楽曲が買える」(今野社長)というしくみを用意した。

これはBrandnew Jとの連携においても同様で、WMP11でネットラジオを聴いている際に、「この曲は良いなと思ったときにすぐmora winに飛んで」(今野氏)、再生中の曲を購入することが可能となる。J-WAVE メディア開発局長の佐藤崇氏は、「まだ誰も体験したことがないような、全く新しいサービスになると期待している」との言葉を寄せた。

他のサービスとの連携だけでなく、mora winそのものの使い勝手も向上させる。「Word wheel検索」では、カタログ情報をローカルにダウンロード・保存することで、ローカル検索ならではの素早さと、インクリメンタルサーチを実現する機能となる。ジャケットのデータもあわせてダウンロードされるため、画像データも高速に検索可能だという。カタログ情報は随時アップデートされるほか、お勧め機能と言える「自動レコメ」も提供される。

また、今野氏はビデオクリップ、ビデオコンテンツも「ハッケン」の対象となると語る。レーベルゲートはこれまでも音楽のビデオクリップを配信してきたが、今後はアニメ作品などのビデオコンテンツを配信したい意向を示しており、PCやポータブルメディアプレイヤーなどでの視聴を促進していきたい考えだ。「まだまだビデオクリップのダウンロードは始まったばかり。レーベルゲートでも昨年9月からやっているが、まだそれほど多くはない。これまではユーザーに販売するというよりは、知ってもらうためのものだったが、今度は作品として提供できるのではないか」と話し、場を用意することでの「ハッケン」効果に期待を寄せる。

楽曲だけでなく動画も持ち歩くということで紹介されたのは、ポータブルメディアプレイヤー「gigabeat」シリーズを開発する東芝デジタルメディアネットワーク モバイルギガ事業部 商品企画部の稲葉均・部長。東芝は同日、gigabeat Vシリーズの新モデルを発表しており、「現時点におけるギガビートのラインナップでは最高峰に位置づけられる」(稲葉氏)モデルらしく、HDD 40GB/80GB、4,0型ワイドQVGA液晶、ワンセグチューナー搭載、音質改善技術の向上といった自社によるスペックアップだけでなく、オンキヨーとのスピーカー共同開発、セガのゲーム3タイトルをプリインストールするなど、他社とのコラボレーションによる成果も盛り込んだ。

そしてもちろん、WMP11上のmora winとも連携する。Windows Vistaとは、「Windows Embeddedを搭載することから、VistaやWMP11と非常に相性が良い」と稲橋は語る。Windows OSの採用によって、著作権保護技術Windows Media DRM 10にも対応している。

音楽配信からビデオクリップの配信、動画コンテンツの配信となると、ゲームをポータブル機器に配信する可能性も考えられるが、マイクロソフト、レーベルゲートはそうした可能性に一切触れず、また、コンテンツの受け皿となる東芝も、新規コンテンツのダウンロードサービスを行うかどうかについて、現時点で未定と回答している。

東芝が同日発表した「gigabeat V」

携帯電話では、NTTドコモの904iシリーズがWindows Media DRM 10に対応。PCでダウンロードした楽曲を、携帯電話で簡単に楽しむことが可能だ。

音楽配信サービスにおけるDRMは、2月にAppleのCEOであるSteve Jobs氏がオープンレター「Thoughts on Music」を公開し、「理想はDRMフリー」との声明を発表。4月にはEMI GroupがDRMフリーで楽曲のダウンロード配信を可能にすることを発表し、5月に入ると米Amazonが年内にDRMフリーなMP3を販売することも明らかにした。

音楽配信サービスでは著作権保護による「縛り」と、ユーザーの使い勝手が背反することが多いが、上記のような動向から、欧米の大手事業者・レーベルはDRMフリーの方向に傾きつつあると言っていいだろう。

では、今回のmora winはどうか。マイクロソフト デジタルエンターテイメントパートナー統括本部担当の堺和夫・執行役 常務は、「(著作権とその保護は)それぞれの国や地域、その歴史によって変わる可能性がある」との認識で、DRMフリー化の流れを見つめつつも、しかし「DRMは非常に重要な技術」と語り、「我々はそれを踏まえ、きちんとサポートしていく」との姿勢を明らかにしている。「技術の用意はきちんとしておかなければならない。著作権の保護は当然すべきことだ」(堺氏)

レーベルゲートの今野社長は「著作権保護(技術)はHDDレコーダーなどにも入っている(組み込まれている)。しかし、(一般ユーザーには)それほど意識されてはいない。DRMもそうなればいいのではないか」と語る。DRMが原因で楽曲を楽しめなくなるなど、技術が意識されている段階ではまだ未熟であるとの認識で、ユーザーの目に見えない裏側が複雑であっても、楽曲を聴く際には技術を何ら意識する必要がなくなるよう、技術革新に期待を寄せている。

今回の発表ははWMP11に組み込まれたmora winのサービス拡充となる。いわばPC向けのサービス拡充ともいえるだろう。実際、記者会見で示された図は、WMP11(Vista)搭載PCを中心に、携帯電話、情報家電、ポータブルメディアプレイヤーがつながり、PCというプラットフォームの上にmora winが乗るという構図にみえる。

マイクロソフト Windows本部のジェイ・ジェイミソン本部長は、「日本のエコシステムの中で製品・サービスをリリースすることについて、(今回の協業拡大は)大きな一歩だ」と語り、「パートナーとともに、このエコシステムを開発していきたい」と話している。