「人とくるまのテクノロジー展」では、パシフィコ横浜の館外ピロティを使って毎回イベントが行なわれるが、今年は自動車技術会の設立60周年記念として「最新 くるまの運転教室」と銘打たれたもの。クルマの運転についての間違った常識に目を向け、最新技術とその適正な運転方法、危険回避の実践などについて体験・見学できるというものだ。このイベントをレポートしよう。
驚くぐらいに簡単スピン!
イベントが行われた館外ピロティは、入るとすぐにロールオーバーシミュレーターが展示されている。広い館外展示場には水を撒かれた低摩擦路面や障害物路、縦列駐車用のコースが作られており、いったい何が起るのだろう、という感じだ。見学者は安全緩衝帯を挟んだすぐ近くでデモンストレーション走行を見学できる。見やすいように即席で作られた展望デッキも用意されていた。私も体験しようと思ったが、申し込みはすでに一杯だったので見学に回ることにした。
プログラムは1回あたり約1時間。1日4回×3日間で計12回を予定している。プログラムは以下のとおり。
- ドライビングポジションとステアリング操作
- 車庫入れ
- 不整路面でのフルブレーキングと障害物回避でABS性能を体験
- 急ハンドルからのスピン、横滑りをESCで回避する体験
ドライビングポジションやステアリング操作、車庫入れは基本的なことで、誰もが教習所や講習会で教わってきたはず。しかし、見ものだったのがABS(アンチロック・ブレーキ・システム)とESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール=横滑り防止装置)の効果を試す実験走行だ。低摩擦走行路面を作るために、スタッフの人がビニールのように見える床に常時水を撒き、その上を時速30km/hからフルブレーキをかけたり、障害物を避けたりするのだ。
まずはじめにABS性能の体験からはじまる。ABSは、急ブレーキや低摩擦路面でのブレーキでタイヤがロックすることを防ぐシステム。急ブレーキしながらでもハンドルを切ることができるので、衝突を回避することも可能らしい。
ABSが付いていない車両は、フルブレーキをかけるとクルクルクルときれいにスピンしてしまった。ビデオなどではスピンするクルマをよく見るが、実際にスピンしているクルマを生で見るのは初めてだった。ABSが付いたクルマはまっすぐに進んでそのまま止まる。ドライバーの腕かも? と思ったが、事前に参加申し込みをしていた体験者さんも同じように走っているので、やはりシステムの違いなのだろう。
障害物がある場合もABSありのクルマと非装備のクルマではぜんぜん違う動きをする。非装備車両は必ず障害物にぶつかってしまう。もし小さな子どもが急に飛び出してきたら? と考えると怖くなる。ABSは自分だけでなく周りの人も守るシステムなのだと改めて思う。危険回避の確立が高くなる技術は日々進歩していてるのだと実感できた。
横滑りを防止するESC
ABSの次はESC体験走行だ。ESCは、低摩擦路面のカーブなどで車両の横滑りを関知すると、自動的に車両の方向を保つように制御するシステム。普通ブレーキは全輪に効くものだが、ESCはコンピューター制御で車輪ごとにブレーキをかけて、進行方向を修正、安定させるのだという。ちなみに「ESC」という呼び名はメーカーによって異なり、いろいろな名称でカタログに表記されている。自動車技術会は、統一呼称として「ESC」を提唱しているとのこと。
会場に展示されているパネルを見ると、ESCを装備する車両とそうでない車両の交通事故の件数が明らかに違っていて驚く。地域別の普及率も紹介されていたが、日本はまだ10%しか装備されていない。それに比べドイツは70%も普及しているという。さすがクルマの先進国だけのことはある。
実際の走行でもABS同様、装備車と非装備車ではぜんぜん違った。日装着車は簡単にスピンするのに、装着車は障害物を避けてスムーズに元の車線に戻ってくる。正直、これだけ違いを見せつけられると、クルマを買うときの条件に入れたくなってしまう。
「最新 くるまの運転教室」は1日4回のデモンストレーションが行なわれるので、混み具合もひどくない。「人とくるまのテクノロジー展」に訪れたのなら是非、館外ピロティを訪れて欲しいと思う。