POWER6を手に持つ日本IBMシステム製品事業担当の渡辺朱美執行役員

日本IBMは23日、世界最高速となる4.7GHzの動作周波数を発揮する次世代プロセッサ「POWER6」を搭載したミッドレンジUNIXサーバ「IBM System p モデル570」を発表。6月8日から出荷を開始する。

日本IBMシステム製品事業担当の渡辺朱美執行役員は、「サーバ数量の増加、消費電力の増大などによって発生する、顧客のデータセンターまわりの課題を解決できる製品。インフラをシンプルにできるサーバプラットフォームだ」と位置づける。

POWER6

POWER6

POWER6は、IBM独自の極薄SOI(Silicon On Insulator)を採用した、65nmプロセスで生産されるプロセッサ。POWER5に比べてコアあたりで約2倍の性能向上を達成しており、さらに実行作業がない時間は自動的にプロセッサクロックの電源を切るなどの機能を採用している。サーバの動作や冷却に必要な電力消費量はPOWER5と同等に抑えている。

プロセッサとしては初めて、コアに10進数浮動小数点(DFP)演算ユニットを実装。同演算の処理速度を飛躍的に向上した。「従来のソフトウェアによる10進数計算に比べて40倍から560倍の性能向上を実現している」としている。

POWER6は、4.2GHz、3.5GHzの動作周波数版も用意。すでに量産体制を確立していることから、数千台単位での出荷も可能になっているという。

IBM System p モデル570

IBM System p モデル570は、POWER6を搭載した初のUNIXサーバで、従来のUNIXサーバの主な用途である技術計算や大規模データベース処理のほか、リッチメディアコンテンツやWeb2.0などの新たなワークロードへの対応も可能とている。

2007年第4四半期にも出荷する予定のライブ パーテション モビリティも実装できることから、サーバ上の論理区画をシステムを停止せずに物理的にサーバ間で移動することが可能になり、継続稼働を実現できる。

1つの筐体に4台のCPUを搭載。最大16構成までが可能になっている。最小構成価格は1,228万380円。

IBM System p モデル570

「これでもItaniumを購入しますか」

米IBMコーポレーションのシステム&テクノロジー・グループ システムp ゼネラル・マネージャーのロス・マウリ氏は、IntelのItaniumやHewlett-PackardのIntegrityと比較しながら、POWER6およびSystem pの性能の高さを強調。「業界で利用されている25のベンチマークでトップの性能を達成。なかでも、4つのベンチマークで圧倒的ともいえる性能を発揮している。業界で2番目となるCPUに比べて、TPC-Cで3倍、SPECint_rate2006で2.3倍、SPECfp_rate2006で2.3倍、SPECjbb2005でで2倍の性能を発揮する。Itaniumは常に遅れており、我々のバックミラーに映るItaniumの姿は、どんどん小さくなっている。POWER6およびSystem pモデル570の発表によって、Hewlett Packardが発表しているものは、すべて打ち負かされることになる」としている。

これを受けて、日本IBMシステム製品事業システムp事業部長の武藤和博理事は「これでもItaniumを購入しますか」と呼びかけた。

米IBMコーポレーションのシステム&テクノロジー・グループ システムp ゼネラル・マネージャーのロス・マウリ氏

日本IBMシステム製品事業システムp事業部長の武藤和博理事

IBMは、ちょうど10年前となる1997年5月11日に、当時のチェス世界王者のガリー・カスパロフ氏と、同社のスーパーコンピュータのDeepBlueがチェスで戦い、同氏を破ったことを取り上げ、「当時のDeepBlueは1,200kgもあったが、POWER6では、この3倍の性能を持ちながらも手のひらに乗るようになった」(マウリ氏)とした。同社では、チェスの「CHECK MATE!」(将棋でいう王手)をキーワードとして、UNIX市場における優位性を訴えていく考えだ。

「CHECK MATE!」をキーワードに展開

日本市場向けの施策としては、パートナー企業との連携により、共同開発や事前検証、性能測定などの活動を展開していく考えを示し、オラクルやSAPなどのグローバルISVとの協業強化、ISV向けマーケティングプログラムの実施、パートナー向けの新インセンティブプログラムの開始、他社置き換えビジネス環境の整備、他社ユーザー向けセミナーの開催などを行う。

「SIパートナー向けには、他社機からの移行ビジネスを対象に、評価ボーナスを支給するほか、米IBMの研究所への技術研修を実施する。また、ビジネスパートナーおよびISVに対しては、リモート検証環境であるVLPへの追加、東京イノベーションセンターへの導入による検証環境の提供などを行う」(武藤事業部長)としている。

なお、System p モデル570は、早期導入プログラムによって、全世界で12の顧客が採用しているという。

また、同社では、AIX6の出荷も発表した。「仮想化、セキュリティ、可用性などの点で、大幅な機能向上を図っている」(マウリ氏)とした。正式出荷は11月7日だが、それに先立ち、7月からオープンベータテストを実施、POWER6上での検証が可能になる。