さておなじみMemory Updateだが、今回は北京での開催ということもあってか、メモリベンダーがそもそも少ない状態。また今はDDR3のRamp Up直前ということでか各社これに集中しており、FB-DIMM2の話などは綺麗さっぱり無い状態。そんなわけで、DRAMに関してはDDR3のみのレポートとなる。その代わり、Flash MemoryとPCM(Phase Change Memory)についての多少のUpdateを追加することにしたい。

DDR3 Status - Intel

1枚目はおなじみIntelのMemory Roadmap(Photo01)である。昨年秋のそれと比較すると、大きくは変わっていないことが判る。ちなみにDDR3を使ったFB-DIMM2は、恐らくNehalemコアの登場する2009年以降となるだろう。現実問題としてサーバー向けの次世代チップセットであるCaneland/SerburgはどちらもFB-DIMMを使うことが明確であり、その一方でNehalemがRegistered DDR3をサポートすると言っている以上、Nehalem世代はFB-DIMM2なのは間違いなさそうだ。ただこの世代はPlatformを含めて全面刷新となるので、具体的な話が出てくるまでもう少しかかるという事だろう。

Photo01:とはいえ、FB-DIMM2はどこに行ったよ? とかDDR3-1333の表記だけ何で離れてるよ? とか、突っ込みどころには不自由しない訳ではあるが。

さて話をDDR3に戻す。現状のDDR3 Statusは? というと、まもなくValidation Phaseは終了になり、Product Rampの用意が出来ているというところ(Photo02)。もっともその割に、原稿執筆時点ではさっぱりValidationの済んだ製品のラインナップが出てきていない(Photo03)のがちょっと疑問なのであるが。そのDDR3であるが、今年に関して言えばきわめて限定された量しか出回らないとIntelでは見ている(Photo04)。実際Chanel向けのPrice Premiumは、今年第3四半期で100%なんていう恐ろしい数字も出ている。つまり同じ速度・容量だとDDR3の価格はDDR2の倍になる、という事だ。実際こんな話もあるわけで、最近1GB DIMMがノーブランド品で5000円前後、正規品でも1万を切る価格な事を考えると、Premier 100%は割と現実的な予測であることが判る。こうしたPrice Premierが10%台となり、かつ生産量もそれなりになってくるのは、現実問題として2009年からという予測であり、逆に言うと2008年一杯はまだ移行準備の年と考えておいたほうが良さそうだ。

Photo02:前回はEvaluation真っ只中、という状況だったから一応正常に進んでいる様に見えるのだが…

Photo03:というよりも、DDR3のカテゴリそのものがまだ無い状態(左のサイドバーに注目)。まぁEarly Adoption Partnerには個別に情報は行っているだろうし、こうしたPartnerは時にはメモリメーカーと直接話をする場合もあるだろうから、今の時点ではまだ掲載の必要が無いと判断しているだけかもしれないが。

Photo04:Intelの見通しは、それでもかなり強気な方である。というのは、2010年末には9割程度までDDR3のシェアが高まるとしているからだ。

ところでDDR3のメリットそのものは前回のレポートでも触れたが、高速転送性能・低消費電力・大容量といったあたりになる(Photo05)。ただ高性能が意味を成すのは、Nehalemなどが登場する2008~2009年に掛けての話で、現実問題としてFSBがボトルネックとなる現在のIntel Platformでは余り意味が無い。むしろMobile向けに、DDR2よりも低消費電力となる点が現在は評価されているように思える。もっともMobile向けのDDR3対応プラットフォームは、2008年のMontevina Platformとなるから、やはり2007年中は無関係という事ではあるのだが。面白いのはHigh Capacityの項目。やはり前回触れたとおり、DDR3世代は90nm以下のプロセスでないとそもそも動作する製品が作れない。実際トップ5社は、いずれも80nm以下のプロセスを使って量産に入る計画である。こうなると当然大容量品を作りやすい。実際DDR2世代は512Mbitチップがメインだったが、DDR3世代では1Gbitチップが主流になると見られており、サーバー向けなどには4Gbit品も提供されることになる。4Gbit品だと、DIMMの両面実装で8GB/DIMMが実現できるから、FB-DIMM2の世代だとメモリバス1chあたり64GBとかいう猛烈な構成も可能になるわけで、こちらもサーバー向けには強くアピールできるところだろう。

Photo05:ちなみにこの2133MHzというのは、あくまでチップ単体での性能であり、DIMMモジュールに搭載し、ソケットに装着し、更にマザーボード上で等長配線のためにパターンを引き回しているという条件でこれを実現するのは、壮絶に困難であろう。

ついでに、テクニカルセッションの中でValidationの一端が示されていたのでご紹介したい。当然ながらValidation Processはチップ単体→DIMMモジュールレベル→チップセットと組み合わせて→システムレベルという形になる(Photo06)。このうち、チップ単体あるいはDIMMレベルに関しては、Intelやチップセットベンダーのみならず、それ以外の場所でも当然行われる事になる(Photo07)。面白いのは、Conponent Validationでのテストの1例。Vddを1.5Vに固定した上で、環境温度や信号振幅電圧を変化させ、そこで正常動作するかどうかを確認するというStress Testを実施するという例だ。単純に正常ケースだけ測定しても意味が無く、こうした形でストレスを掛けてもちゃんと動作するか、の検証も行っているというサンプルであった。

Photo06:チップ単体やDIMMレベルは、それぞれ専用のテスター(といっても、最初は信号発生器+測定器というレベルであるが)を使う。チップセットに関しては、DDR3の動作検証専用のものが用意されており、これを使ってテストを進めるという形だ。

Photo07:Component validationは環境と動作パラメータの膨大な組み合わせを力任せにテストして検証する、という気の長い作業になる。もっともこれはSystem Validationでも似た事になるが。

Photo08:DIMMのフルロードだと当然周囲温度が上がり気味になるので、これを強調して周囲温度を55℃まで引き上げる一方、最小構成(DIMM1枚)では周囲温度を0℃まで引き下げる。横軸はVref(リファレンス電圧)で、0℃の場合左がVref=0.77V、右がVref=0.8Vに、55℃の場合左がVref=0.70V、右がVref=0.73Vとなる。