伝統的な「おもてなし」の精神と、最新技術"CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)"の融合により、今、これまでにないデジタルマーケティングが可能になっています。この連載では、売り手と買い手という関係を超えて顧客と深い絆を築くためのCDP活用方法を深掘りしてきました。

顧客一人ひとりのニーズに合わせた、カスタマイズされた体験を提供することは、現代のビジネスでは不可欠です。最終回となる本記事では、デジタル時代の「おもてなし」を実現するための方策をあらためてまとめていきましょう。

日本の「おもてなし」の思想とマーケティングへの応用

「おもてなし」とは、相手に心からの思いやりと尊重をもって、最高の体験を提供しようという精神です。東京オリンピックをきっかけに国際的に知られるようになり、今や、世界各地の接客業界が学ぶコンセプトとなっています。顧客ロイヤリティの向上や口コミの促進、競合との差別化など、ブランド価値を高める上で重要だと強く認識されているのです。

おもてなしは日本文化に深く根ざしており、その言葉の歴史は平安時代まで遡ります。将軍や貴族達が満足する遊興にするにはどうすればいいのか。観阿弥や世阿弥といった当代きっての芸達者たちが、おもてなしの意義を磨いていきました。

現代に通ずるおもてなしの精神は、茶道の大家、千利休に由来します。彼が重視した「利休七則」は、お茶を適切に点てること、予期せぬ状況に備えること、共にいる客に気を配ることなど、一見単純に見えますが、そこには深い洞察が隠されています。おもてなしは、狭い社交界で発展した歴史を持つだけに、「察すること」や「さりげなさ」が重要となるのです。

マーケティングにおもてなしを取り入れる際は、このような思想背景を理解した上で、実践しなければなりません。

デジタルマーケティングにおける「おもてなし」の重要性

Web上でのコミュニケーションは、おもてなしとは真逆に、押しつけがましくなりがちです。興味が無いのに広告宣伝メールが毎日届いたり、購入した商品のバナー広告がいつまでも表示されるのは、誰もが経験されたことあるのではないでしょうか。うんざりしている人も多いことでしょう。

「おもてなし」を実践するためには、相手の行動を観察し、その心を理解する必要があります。これはデジタルの世界でも同じです。Webやアプリ上での行動や嗜好を詳細に把握・理解し、そして、パーソナライズされた顧客体験を、絶妙なタイミングで提供することが重要なのです。

相手が情報を求めている瞬間や、商品の検討に入ったタイミングこそが、情報を届けるチャンスです。本当に必要な情報を、最適な情報チャネルで提供すれば、押しつけがましいどころか、顧客に大きな好印象を与えることができます。

CDPは、一人ひとりにパーソナライズされた「おもてなし体験」を提供するために最適なツールです。各部署が持つさまざまな顧客データを集約し、一人ひとりの行動をリアルタイムで捉え、それに応じたアプローチを自動的に実行することができます。お客様が能動的に情報や接客を求めている瞬間を捉え、タイムリーなアクションを起こすことができるようになっています。もはや、「過去一年間に、この製品を購入してくれた人をデータベースから抽出して、特別キャンペーンのプロモーションメールを配信しよう」という時代ではないのです。

TealiumのCDP活用事例

TealiumのCDPは、リアルタイム性とマーケティングツールとの連携性に優れています。特定の商品をじっくり見ているWeb訪問者に対し、その商品に関するより深い情報や不明点や懸念点を解消するための情報、お得なプロモーションをすぐさま届けるようなスピード感をもたらしてくれます。

2008年に創業したTealiumは、既にグローバルで1000社以上に導入されています。たとえばアメリカの大手衣料品チェーンGapは、各ブランドが持つ年間数億人にのぼる顧客データをTealiumのCDPにすべて統合し、「87種類のパーソナライゼーション施策」を実施しました。一人ひとりの嗜好性に応じたコミュニケーションによって、顧客ロイヤリティを高めているのです。

同様に分析を進めたNBAのチームであるUtah Jazzは、自チームだけでなく「対戦相手のファン」まで分析し、それぞれにキャンペーンのオファーを送ることによって、Webサイト訪問者一人あたりの収益を34%増加させました。

ドイツのジュエリーブランドであるThomas Saboは、自社ECサイトにおける「カート放棄率」の高さに悩まされていました。しかし、TealiumのCDPによって、まるで店舗体験のような接客の実現に成功します。カート放棄率を大幅に減少させ、コンバージョン率は6~7倍にもなりました。

顧客を「ファン」に変えるためのマーケティング手法

このように、デジタル世界で優れたマーケティングを提供することは、新規顧客を獲得するだけでなく、顧客を自社の「ファン」へと変えていく原動力となります。

自社の製品・サービスを繰り返し購入・利用してくれたり、SNSで推薦してくれたり、製品・サービスの改善に向けたフィードバックをしてくれる「ファン」は、企業が持続的な成長を続けるためにとても貴重な存在です。

製品・サービスの選択肢が無数にあり、クチコミが容易に共有されるようになった今、顧客のニーズと経験を最優先に考える「顧客中心主義」があらためて重要になりました。そしてTealiumのCDPは、まさに顧客中心主義を実践するためツールなのです。

顧客との絆を構築していくために

日本国内においても、TealiumのCDPを使った新時代のデジタルマーケティングが始まっています。

トヨタ自動車のサブスクリプションサービス「KINTO」を運営するKINTOテクノロジーズは、多彩な顧客情報を連携させたデジタルマーケティングのプラットフォームをTealiumのCDPによって構築しました。広告タグの計測に始まり、蓄積したデータをリアルタイムで呼び出し、A/Bテストでページの出し分けや、FacebookのConversion APIとつなげて広告精度を向上したりしています。また、特定機能で申込率高いユーザーに広告を表示したり、あるいは逆に何度もアクセスしているユーザーにKINTOの広告を出さないようにするデリートターゲティングを実施し、広告出稿を最適化しているのです。

KINTOテクノロジーズが、
ユーザーコミュニケーション強化につながるプラットフォームを構築

武蔵野銀行は、TealiumのCDPによって、顧客ニーズに合わせたタイミングでのアウトバウンドコールを実施しています。ローンに興味を抱いた瞬間や、検討しているタイミングで商品説明の電話をかけることにより、「相手に喜ばれる電話営業」を実現しています。コールの応答率は30%向上し、フリーローンの仮申込み件数を1.5倍にまで増加しました。

武蔵野銀行の事例から学ぶ、
一歩先を行く「顧客都合」のマーケティングとは

「おもてなし」の精神をCDPで実践することにより、デジタルマーケティングは新たな段階へと進みます。TealiumのCDPは、顧客一人ひとりの行動や嗜好をリアルタイムで分析し、パーソナライズされた体験を提供することで、顧客の心を掴むことができます。

本連載を参考に、お客様との深い絆を築く新たな一歩を踏み出していただければ幸いです。

<監修>
ティーリアムジャパン株式会社
マーケティング シニアマーケティングディレクター
安部 知雄



[PR]提供:Tealium Japan