〈大阪・関西万博 開催の意義を改めて問う〉松本正義・関経連会長を直撃!

「『未来社会の実験場』として、課題解決型の提案ができるような万博にしたい」──。開幕まで、あと1年を切った大阪・関西万博。来場者約2820万人、経済効果2兆9000億円(経済産業省試算)を見込む国家プロジェクトだが、一部パビリオンの建設遅れやコスト負担増などが懸念されている。「万博をやるのは重要。しかし、大事なのは、その後のレガシー(遺産)をどうするか」と語る松本氏に、改めて万博開催の意義を直撃した。

魅力的な万博を具現化しなければならない

 ─ 大阪・関西万博の開幕まで、あと1年を切ったわけですが、改めて、万博開催の意義をどのように捉えていますか。

経団連・十倉雅和会長に直撃!「少子化は『静かなる有事』。 対策の財源は保険料だけでなく税も含めた検討を」

 松本 例えば、1970年の大阪万博は日本の技術を見てくださいと世界に発信しました。いろいろなものを展示して、これから日本はこのように経済発展していきますという方向性をお見せしました。

 一方、今回の大阪・関西万博は、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた、健康や医療、環境など、日本だけではなく、世界共通で抱える課題にどう対応していくかという点を考えることに意義があると思います。

 特に関西は世界に誇るライフサイエンスやバイオメディカルの集積地ですから、そういった強みも活かし、課題解決型の万博にしたいと思っています。

 ─ 世界の課題解決に貢献していく万博にしていくと。

 松本 ええ。だから、万博も昔に比べて、考え方が変わってきています。大事なことは理念です。今回のコンセプトにあるように『未来社会の実験場』として、課題解決型の提案ができるような万博にしたいと考えています。

 ─ ただ、現実の課題として、一部パビリオンの建設遅れやコスト負担増などの課題も指摘されています。この辺はどう考えていけばいいですか。

 松本 やはり、ウクライナの問題があって世界情勢が混乱して、エネルギー価格が上昇したり、円安によって原材料費がものすごく上がっているのは事実です。さらに、この4月からの労働規制や人手不足など、いわゆる「2024年問題」もあるということで、本当にパビリオンの建設は間に合うのか? という声が出ています。

 日本のパビリオンは順調に建設も進んでいるんですが、問題は外国のパビリオンなんですよね。ただ、昨年夏に岸田文雄首相が政府が先頭に立ってやると。万博はナショナルプロジェクトであり、失敗は許されないということを言ってもらいましたので、これは良かったと思います。

 実際、そこから各省庁の人たちもどんどん参加するようになりましたし、われわれ産業界としても絶対に成功させたいと考えています。

 ─ 官民一体となって成功させようということですね。

 松本 万博のシンボルでもある木造建築「大屋根(リング)」は1周約2キロあるんですが、秋頃には1周がつながると聞いています。他の諸外国のパビリオンも徐々に出来上がってくると思いますので、何とか来年4月13日のオープニングセレモニーには間に合うだろうと考えています。

 もちろん、中には、機運醸成が進んでいないとか、延期しろとか、規模を縮小しろという人もいますよね。でも、そんなこと途中で言われて投げ出すようなことはできませんよ。延期するなんて言ったら、世界の方にどういう申し訳をするのか。そうか、日本は途中で止めるのか。こんな大きなイベントを投げ出すような国なら放っておけと言われるようになったらどうするんですか。

 だから、われわれは絶対に万博を失敗させてはいけない。絶対に成功させて、計画した通り、2820万人の人たちがやってくる、魅力的な万博を具現化しなければならないと思います。

万博を開催した後のレガシーをどうするか

 ─ 万博に向けては苦労も多いと思うんですが、ここまで来て一番嬉しかったことは何ですか。

 松本 2018年11月にパリのBIE(博覧会国際事務局)総会で、大阪・関西万博の開催が決まりました。その後、現地でパーティーがあったんですけど、わたしは仕事の都合で途中から抜け出さないといけませんでした。その時、パリのシャルルドゴール空港でパッと夜空を見上げたら満月だったんです。

 あの時に仰ぎ見た満月は忘れられませんし、当時の大阪や関西の雰囲気は本当に燃えていましたよ。

【政界】国の土台を築き直す骨太の論戦へ 決意と覚悟が問われる岸田首相

 ─ なるほど。皆が燃えていたし、松本さんの使命感も相当なものがあったんですね。

 松本 ええ。その後、コロナ禍を経て、社会の雰囲気もいろいろ変わってきましたけど、やっぱり、万博は絶対に成功させないといけないなと思います。

 問題は万博を開催した後のレガシー(遺産)をどうするか。1970年の大阪万博では6000万人以上の方が来てくださり、すごく好評でした。

 当時、関西のGRP(域内総生産)は19.3%。これで関西の、いや、日本の経済は活性化する。国際化すると皆が思っていました。ところが、今は15%強になっていて、1970年の大阪万博の成功を今につなげられたとは言い難い状況にあります。

 ─ 1970年の大阪万博は集客面では良かったけど、後の関西経済の活性化にはつなげられなかったと。

 松本 要するに、万博をやるのは良いのです。しかし、大事なのは、その後のレガシーをどうするかということを突き付けられているのです。

 万博会場となる大阪・夢洲(ゆめしま)の一部は、終わったらIR(カジノを含む統合型リゾート)になるんです。今はオリックスとMGMリゾーツの日本法人がメインで動いていますけど、万博が終わったらどうするのかについては、大阪府・市や関経連、商工会議所などが集まり、いろいろなアイデアを出したりして、これから考えないといけませんね。

 ─ 万博後の運営で、何かいいアイデアはありますか。

 松本 わたしはカジノだけではなく、家族が楽しく過ごすことのできる場にしてほしいと思っています。ショッピングセンターをつくったり、映画館やスポーツのできる場をつくったりして、家族の楽しめる場にしてもらいたいですね。

続きは本誌で