国立科学博物館(科博)は4月26日、同館が所有する、純国産の民間輸送機「YS-11」と、純国産の固体ロケット開発の礎となった実験機「ペンシルロケット」が、日本航空宇宙学会から4月19日付けで「航空宇宙技術遺産」として認定されたことを発表した。

航空宇宙技術遺産とは、日本航空宇宙学会が、今後の航空宇宙技術の発展に寄与することを目的とし、日本の航空宇宙技術発展史上の画期的な製品や技術などに対して顕彰して後世まで伝えるべく認定するもの。2023年に小惑星探査機の初代「はやぶさ」による世界初の小惑星サンプルリターン技術など、第1号となる6件が認定され、今回が第2号となる。

日本は、かつて世界屈指の航空機大国とも言われていたが、先の大戦を経て航空に関する一切の活動を禁じられ、多くの航空機の実機や技術、データなどが破棄されてしまった。しかし敗戦から7年後の1952(昭和27)年にそれが解除され、国を挙げて純国産航空機の開発が行われることとなった。YS-11は、まさに国家プロジェクト的に開発された純国産の民間輸送機だったのである。

1957年に設置された輸送機設計研究協会が基礎設計を担当。その後、日本航空機製造(解散)が基本設計、詳細設計等開発を進め、生産は三菱重工など、日本の航空機製造会社が総出であたったという。試作1号機が1962(昭和37)年8月30日に初飛行し、1964年8月運輸省(現・国土交通省)の航空局の型式証明を取得。試作2機を含め、最終的に合計182機が生産され、海外でも長らく活躍した。

科博が所有する機体(機体番号JA8610)は量産初号機であり、現存するYS-11の中では、試作機を除いた最古の機体となる。1965(昭和40)年3月に運輸省航空局に納入された後、日本の飛行安全確認の点検機として利用され、2万時間超の飛行実績を有している。

この機体は、長らく羽田空港内の全日本空輸(ANA)の格納庫内に保管されていたが、2020年にクラウドファンディングによる支援を得て、茨城県筑西市にあるテーマパーク「ザ・ヒロサワ・シティ」へ移設され、機体が組み立てられた。同テーマパーク内の一施設として2021年3月にオープンした科博廣澤航空博物館において、2024年2月11日より一般公開が行われている。

なおYS-11は、2007年には日本機械学会による「機械遺産」に、翌2008年には日本航空協会による「重要航空遺産」に認定されており、今回で3つ目の認定となった。

  • 科博が所有するYS-11

    科博が所有するYS-11は量産初号機で、現存する期待の中では試作機を除く最古の機体 (出所:科博プレスリリースPDF)

一方のペンシルロケットは、日本の固体ロケット開発の礎となった実験機。こちらも、航空禁止令が解除された1952年から研究開発がスタートしている。1970年に軌道投入に成功した日本発の人工衛星「おおすみ」を打ち上げた「M(ミュー)ロケット」や、初代「はやぶさ」を打ち上げた「M-Vロケット」、そして最新の「イプシロン」など、日本の固体ロケットの原点である。

日本の固体ロケットの開発は、“日本のロケットの父”と呼ばれる、東京大学 生産技術研究所の故・糸川英夫教授の指揮の下で進められた。その最初の実験用ロケットとして製造されたのが、全長230mm・直径18mmのペンシルロケットである。普通に打ち上げたのでは(当時の技術では)飛翔コースを確認できないため、1955(昭和30)年4月、現在の東京都国分寺市にて、水平方向への発射が行われた。何枚も吊された紙を貫通させ、それぞれ穴の位置から、ロケットがどう飛翔したかが調べられたとされる。

その後、実験は現在の千葉市にあった生産技術研究所に場所を移して継続され、そこでは2段式や大型のペンシルロケットも用いられた。1955年8月には、日本海に面した秋田県道川海岸(現在のJAXA能代ロケット実験場)での斜め発射実験にて、到達高度600m、水平距離700m、飛翔時間16.8秒の飛翔が達成され、その技術やデータなどが次の大型ロケットの開発へと引き継がれていった。なおペンシルロケットの実機は現在、科博 上野本館に常設展示されている。

  • ペンシルロケット

    初代「はやぶさ」を打ち上げた「M(ミュー)-Vロケット」や、最新の「イプシロンロケット」など、日本の固体ロケット開発の礎として知られるペンシルロケット (出所:科博プレスリリースPDF)

また今回紹介したYS-11とペンシルロケットに加え、内閣府宇宙開発戦略推進事務局からは、航空宇宙技術遺産第2号の1つとして、準天頂衛星システム「みちびき」が認定されたことも発表された。「みちびき」は、日本上空にできるだけ長い時間滞在できる準天頂軌道(赤道を挟んで南北に8の字を描く特殊な軌道)に複数の衛星を投入することで(1機は赤道上空の静止衛星軌道に投入されている)、高層ビルの合間や山間部など、米国のGPS衛星からの信号をキャッチしにくい場所でも補完できるようにした日本独自の衛星測位システムおよび衛星の名称である。