米宇宙企業スペースXを率いるイーロン・マスク氏は2024年4月7日、開発中の宇宙船「スターシップ」について講演し、今後の飛行試験や、発展型の開発計画について明らかにした。

早ければ5月にも4度目の飛行試験を行うとしたほか、その次の試験では発射台への着陸も目指すという。さらに、打ち上げ能力を高めた新型のスターシップを開発するとも語られた。

  • 4度目の飛行試験に向けて、4月5日に地上燃焼試験を行ったスターシップのスーパー・ヘヴィ・ブースター

    4度目の飛行試験に向けて、4月5日に地上燃焼試験を行ったスターシップのスーパー・ヘヴィ・ブースター (C) SpaceX

早ければ5月にも4度目の飛行試験

スターシップ(Starship)は、スペースXが開発中の宇宙輸送システムで、全長121.3m、直径9m、打ち上げ時の質量5000tという、人類史上最大のロケット、宇宙船である。

スターシップの機体は、第1段の「スーパー・ヘヴィ(Super Heavy)」ブースターと、第2段の「スターシップ」宇宙船の、大きく2つの段階から構成されている。

人間や物資などを地球周回軌道に最大100t運べるほか、月、火星、さらにその先へ運ぶこともできる。また、機体すべてを飛行後に着陸して回収し、再使用することができ、飛行機のように運用することで、劇的な打ち上げコストの低減と打ち上げ頻度の向上を目指している。これによりスペースXは、人工衛星を一度に大量に打ち上げたり、有人月探査を実現したりといった目標のほか、人類の火星移住を実現することも狙っている。

スターシップは2023年4月に初めての飛行試験「IFT-1(Integrated Flight Test 1)」を行い、やや不満足な結果に終わったものの、その後改良を重ね、今年3月の3度目の飛行試験「IFT-3」では、初めて地球を回る軌道の一歩手前まで到達した。ただ、スーパー・ヘヴィの着陸や、スターシップ宇宙船の大気圏再突入と着陸など、いくつかの重要な試験項目は達成できなかった。

現在スペースXは、4度目の飛行試験「IFT-4」に向けた準備を進めており、4月5日には試験で使用するスーパー・ヘヴィの機体「B11」の地上燃焼試験を行っている。

  • 4度目の飛行試験に向けて、地上燃焼試験を行ったスターシップのスーパー・ヘヴィ・ブースター

    4度目の飛行試験に向けて、地上燃焼試験を行ったスターシップのスーパー・ヘヴィ・ブースター (C) SpaceX

マスク氏は7日の講演の中で、IFT-4は早ければ5月初旬にも行う予定だとした。IFT-4の試験内容は基本的に前回のIFT-3と同じで、IFT-3では果たせなかったスーパー・ヘヴィの着陸や、スターシップ宇宙船の宇宙空間でのエンジンの再着火、大気圏再突入、そして地上への帰還を達成することが目標とされる。

マスク氏はまた、このIFT-4が計画どおり成功すれば、その次のIFT-5では初めて、スーパー・ヘヴィを発射台に帰還させる試験を行うかもしれないと明らかにした。

スーパー・ヘヴィは、スターシップ宇宙船と分離したあと、発射台に向かって飛行して着陸する。ただ、直接地面に降り立つのではなく、発射台の近くでホバリングし、発射塔に取り付けられた「メカジラ(Mechazilla)」という大きなロボット・アームによって、挟まれるようにして捕獲され、着陸するという仕組みをしている。これにより、スーパー・ヘヴィに着陸脚が不要になり、また着陸時の衝撃に耐えるための頑丈な構造も不要になることから、ロケットの性能向上が見込める。

これまでは試験のため、発射台までは戻らず、メキシコ湾上を着陸場所と見立てて着陸(着水)するように飛行させていた。ただ、IFT-3では着陸の直前に制御が失われるなど、これまでの飛行試験で着陸まで成功した例はない。IFT-4で初の成功を収め、そしてIFT-5へつなげられるかが見どころとなろう。

マスク氏は「今年中に、メカジラの腕でブースターを捕まえることができる確率は、おそらく80~90%だろう」と語った。

また、スターシップ宇宙船も同じようにメカジラで捕まえられ、着陸することになっている。マスク氏によると、スターシップ宇宙船を発射台に着陸させるには、2回の洋上へのピンポイント着水による実証が必要とし、「実際に発射台への着陸が行えるようになるのは、おそらく来年だろう」と語った。

  • 発射塔の「メカジラ」でスーパー・ヘヴィを捕まえる様子。写真は組立時のものだが、運用段階では上空から降下してきた機体をこのような形で捕まえることが計画されている

    発射塔の「メカジラ」でスーパー・ヘヴィを捕まえる様子。写真は組立時のものだが、運用段階では上空から降下してきた機体をこのような形で捕まえることが計画されている (C) SpaceX

スターシップ2、そして3へ

そして、講演における最大の話題が、新しいスターシップについての発表だった。

マスク氏が「スターシップ2」として発表した機体は、スーパー・ヘヴィの全長が1.3m伸び、スターシップ宇宙船も3.1mも伸び、全体の全長は121.3mから124.4mへと伸びている。

これにより、推進薬の搭載量が増え、またエンジンも従来のものから改良した「ラプター3」を使うことで、性能向上を見込んでいる。

現行のラプター2エンジンは海面上推力が最大230tfだったが、ラプター3では280tfに増加する。マスク氏はまた、「最終的には330tf以上にしたい」とした。さらに、ラプター3には耐熱シールドを兼ねた冷却機能があり、スーパー・ヘヴィの下部にあった耐熱シールドが不要になっている。

くわえて、スターシップ宇宙船の前部にある空力フィンの形状が変わっているほか、分離部分も改良され、さらにスーパー・ヘヴィについているグリッド・フィンも改良されている。

スターシップの打ち上げ能力はよく「低軌道に100t以上」と説明されるが、マスク氏によると、現行型の性能は、回収する場合で約50t、使い捨てる場合で約100tだという。しかしスターシップ2が完成すれば、回収する場合でも100tの打ち上げ能力を発揮できるという。

さらにマスク氏は、「スターシップ3」というさらなる改良型の計画についても明らかにした。スターシップ3は、現行型と比べ、スーパー・ヘヴィの全長は9.2m、スターシップ宇宙船は19.5mも伸び、あわせた全長は150mと、かなり高くなる。さらに、スターシップ宇宙船に装着するラプター3エンジンを9基に増やし(現行型と2では6基)、回収を行う打ち上げでも地球低軌道に200t以上の打ち上げ能力を発揮できるという。

そして、スターシップ3の1回あたりの打ち上げコストは、200~300万ドルを目指すとした。現行の「ファルコン9」ロケットは6700万ドルで販売されており、ファルコン9は地球低軌道に22tの打ち上げ能力しかないことを考えれば、200tで200~300万ドルというコストはまさに桁違いの破格さである。

スターシップの打ち上げ間隔は、最初の飛行試験であるIFT-1と2度目のIFT-2の間は約7か月、IFT-2とIFT-3の間は約4か月だった。IFT-4が予定どおり5月中に実施されれば、IFT-3のわずか2か月後となり、打ち上げ頻度が大きく向上している。

IFT-3の実施前、マスク氏は「今後の打ち上げに備えて、スーパー・ヘヴィとスターシップ宇宙船をそれぞれ4機製造している」と述べていたが、今回の講演では「さらに6機製造する」と語られ、今後さらに頻度を向上させる意図が見て取れる。

また、それにともない、テキサス州のスターシップの開発、打ち上げ拠点である「スターベース」には、新たに巨大な工場の建設が行われているほか、2か所目の発射台の建設も進めているという。さらに、フロリダ州のケープ・カナベラルにも発射台を建設するとしている。

  • 現行のスターシップの試験機と、スターシップ2および3との比較

    現行のスターシップの試験機と、スターシップ2および3との比較 (C) SpaceX

  • ラプター・エンジンの進化

    ラプター・エンジンの進化 (C) SpaceX

参考文献

・XユーザーのSpaceXさん: 「At Starbase, @ElonMusk provided an update on the company’s plans to send humanity to Mars, the best destination to begin making life multiplanetary」 / X
SpaceX - Starship