日本の民間人として初めて国際宇宙ステーション(ISS)に滞在して宇宙旅行を実現したZOZO創業者でもある実業家の前澤友作氏は11月27日、東京・日本橋にてドキュメンタリー映画「僕が宇宙に行った理由」(2023年12月29日公開予定)の完成披露上演会および「HELLO SPACE WORK! NIHONBASHI 2023」の特別展オープニングイベントに出席。前澤氏に加え、同作品の監督を務めた平野陽三氏も上映会・イベントに登壇し、実際に宇宙に行った感想や映画の見どころなどを語った。

  • 完成披露上映会に登壇した前澤友作氏と平野陽三氏

    完成披露上映会に登壇した前澤友作氏と平野陽三氏

同作品は前澤氏が米宇宙旅行会社スペースアドベンチャーズとロシア連邦宇宙局(ロスコスモス)の協力のもと、2021年12月にロシアの「ソユーズMS-20宇宙船」に乗り、日本の民間人として初めて国際宇宙ステーション(ISS)に滞在した宇宙旅行を撮影したドキュメンタリーで、宇宙に飛び立つまでの身体検査や過酷なトレーニングの様子、その時々の素直な心境のほか、実際に宇宙に飛び立ちISSにて12日間滞在している様子などが詳細に描かれている。

また特別展オープニングイベントでは、日本で初めての展示となる、実際に前澤氏らが搭乗した「ソユーズMS-20宇宙船」の帰還モジュールの実機や大型のパラシュートなどもお披露目された。実際に使用されたものということで、大気圏突入時の焦げ跡がそのまま残っておりとても迫力がある。

  • 特別展オープニングイベントに登壇した前澤友作氏と平野陽三氏によってソユーズの帰還モジュールがお披露目された

    特別展オープニングイベントに登壇した前澤友作氏と平野陽三氏によってソユーズの帰還モジュールがお披露目された

前澤氏は訓練時に着用していたフライトスーツ姿で登場。愛用していたため洗うのがもったいなくてその当時のままにしていたと明かし、「今日久しぶりに出したらちょっと汗臭かったですね」と会場内の笑いをさそった。当初は映画ではなく宇宙旅行の記念にホームビデオ感覚で映像をとっていたが、映画を作りたいという平野氏の夢と宇宙旅行にいくという前澤氏の夢とをせっかくなら同時に叶えようとのことから映画を製作することにしたという。

民間人の宇宙旅行と聞くと、お金さえあれば簡単に行って帰ってこれることを想像する人もいるかもしれないが、宇宙にいくには民間人であろうとも過酷なトレーニングを行い宇宙飛行士と同じくらい宇宙について勉強し、テストに合格しなければ行くことができない。劇中ではそうしたトレーニングなどに命がけで取り組む前澤氏や平野氏の様子が映し出されており、宇宙に行くということがどれだけ凄いことが伝わってきた。

  • 宇宙旅行について語る前澤氏

    宇宙旅行について語る前澤氏

特に宇宙酔いに耐えるための回転椅子のトレーニングは毎朝行われその日の夜まで気持ち悪い状態が続く過酷さだったという。また、座学では先生がロシア語で言ったことを英語で通訳してもらい学んでいく形だったと明かし、英語が堪能ではない中で初めて聞く単語や初めて見る図面を英語で理解するのはとても大変だったと身体的なトレーニングだけではない過酷さも述べていた。

平野氏は約6か月におよぶトレーニングを行った前澤氏の姿に「根性があるなと思いました。どこまで行ってもゼロからイチを生み出してやり切るという姿を改めて見せてもらった感じがします」と述べ、前澤は「一度も挫けることはありませんでした。意外とやる時はやるんですよ」と力強い発言をする一幕もあった。

  • 前澤氏について語る平野氏

    前澤氏について語る平野氏

さらに宇宙服の着心地については、「最初に袖を通した時はZOZOスーツを思い出しました。こんなにぴったりするって気持ち良いんだと思いましたね」と話す一方で、「宇宙服は宇宙船のなかにいる時にしか着ないため歩くように設計されておらず、重くて歩きにくいです」とも解説していた。

  • ロシアの宇宙服「ソコルスーツ」の実物

    ロシアのソユーズ宇宙船用宇宙服「ソコルスーツ」の実物

また、実際に宇宙へロケットが発射される際の様子について聞かれると、ロケットの中にいると意外にも静かで大きな揺れなどは感じなかったと発言。「宇宙映画でよくみる大きな振動と音で迫力ある発射のイメージとは違って、気づいたら発車している新幹線のように揺れなどなく気づいたら動いていました」とし「ぜひ機会があったらみなさんも行ってみてください」と宇宙旅行をおすすめしていた。

  • ソユーズの外観

    ソユーズの外観

  • ソユーズの中の様子

    ソユーズの中の様子

前澤氏は「二度と映画を作ることはないと思います」としながらも「宇宙にはもう1回行く予定なので分からないですね。もし2作目があったらよろしくお願いします」ともしており、次なる月周回プロジェクトへの挑戦に向けた発言も行った。

最後には、「映画を観たみなさんの気持ちが少しでも動かされていたらいいなと思います。夢を持って諦めずにやっているといつか形になるという思いで作った映画なので、そうした部分が伝わるといいなと思っています。また、宇宙から見た地球は本当に綺麗で国境はありません。そうした地球をみんなで一緒に守って行けたらと思っています」と、宇宙に興味がある人だけではなく子供から大人まで夢をもっている人みんなにみてほしいことを伝えイベントを締めくくった。

なお、「HELLO SPACE WORK! NIHONBASHI 2023」は2023年11月27日~2023年12月7日まで開催しており、前澤氏などをISSへ運び帰還までを共にしたソユーズの実機や巨大パラシュート、宇宙服などは12月3日まで日本橋三井タワー1Fのアトリウムでみることができる。興味がある人は足を運んでみても良いのではないだろうか。