自民党の半導体戦略推進議員連盟会長を務める甘利明衆議院議員は、2021年末に東京で開催されたマイクロエレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2021 Hybrid」のオープニングキーノートセッション「グローバル半導体産業における日本の国家戦略」に登壇し「半導体強国、復活に向けて」と題した講演を行った。

この講演は当初、会場での聴講のみで配信が行われておらず、多くの人々が聞き漏らした。そこで、SEMIジャパンは、2月16日にアンコールウェビナー第1弾として、このオープニングキーノートのオンライン配信を行った。同氏の話を改めて聞き直してみると、TSMCとソニーセミコンダクタソリューションズの合弁半導体製造会社「JASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)におけるデンソーの少額持分出資よる16/12nm FinFETプロセスを採用した半導体製造への拡大などは、甘利議員の思惑通りに進んだことが分かる。甘利議員は、さらに日本政府の今後10年間の半導体国家戦略についてまで言及しているので、その内容を紹介したい。

28/22nmプロセスへの投資は意味がない

甘利議員は、DX(デジタルトランスフォーメーション)で社会変革が起きるが、そのためには大量の高性能な半導体が必要になるとして、国家戦略に半導体の果たす役割を強調した。

また、そのために日本には2つの課題があるとした。1つ目は、現状の半導体をどのように進化させるかであるとして、「TSMCが熊本に持ってくるのは10年も前に開発された28/22nm技術である。20nmレベル(の半導体デバイス)が生産出来てよかったねと言うことで終わりたくない。28/22nmプロセスを使って作るだけでは、政府の資金を投入する意味がない。それをどうやって進化させるかが大切である。どうやってTSMCを10nm台まで引き込むかがこれから考えねばならぬ課題である」と述べていた。これは、2月15日付のTSMC/ソニー/デンソーの共同発表で実現することが決まった

米国勢と協業して最先端ファウンドリを国内に設置

甘利氏は、もう1つの課題については、「日本の半導体産業にとってミッシングピースであるハイエンドとなるポスト3nmの最先端技術をどうやって確保するかということがもう1つの課題である。台湾は、政府の方針で、最先端技術は台湾の外へ出さないようで、米国にさえ出さないといっている。そこで日本は同盟国である米国に働きかけて、米国企業 -今はこの場でどこかは明らかにできないが- と協業してそこの最先端技術を引き込んで、日本の強みの製造装置・材料技術を生かしてポスト3nmのハイエンドの最先端ファウンドリを日本国内に設置し、ミッシングピースを埋めなければならない。そのためには、今後10年間に7兆円から10兆円規模の資本投入が必要である。官で5兆円、民で5兆円を10年で投資する必要がある。そうしないと日本は半導体国際競争に勝ち残れない。政府は、この最終目標達成のために、10年計画の1年ごとの時系列の戦略を構築中である。光電融合技術もその中核に据えていくことにしている」と述べた。

この課題についても、経済産業省が甘利氏の思惑通りに動いているようで、いずれ具体的な形で10年計画が明らかになるであろう。