AMDが、Chromebook向けエントリーレベルプロセッサの製造を、従来のTSMCではなく、Samsung Electronicsのファウンドリ部門であるSamsung Foundryの4nmプロセスを採用する見込みであると複数の米国メディアが報じている。情報の出どころは、JPMorgan Chaseが機関投資家に向けて配布した調査報告書で、それによると2022年末までに量産される予定だという。

JP Morganのアナリストによると、TSMCの先端プロセスでの生産能力は限界を迎えており、AMDは、その代替策としてSamsungに製造委託することにしたという。TSMCは新型コロナの影響もあり、生産能力の拡大が容易でないため、追加的な製品受注が難しい状況にあるという。 AMDは、Samsungの5/4nmプロセスを使用したことがないことから、製造委託の最初の製品としてエントリーレベルのCPUを選択し、その実力の把握を進め、結果が満足できるものであれば、より多くの種類のプロセッサの製造委託を行う可能性があるという。

JP Morganのアナリストは、AMDが2023/2024年にSamsungの3nmプロセスを採用してチップを製造をする可能性も指摘しているが、デスクトップ、ワークステーション、サーバCPUなどのほとんどのコア製品は依然としてTSMCを選択するとみている。

ここで指摘されているSamsungの3nmプロセスは、他社に先駆けてトランジスタ構造を従来のFinFETからGAA(Gate-All-Around)に替えることで性能の向上を目指したものとなる。ただし、GAAはプロセスが複雑で、計画通りに問題なく立ち上がるかどうか注目される。TSMCやIntelは、3nmプロセスまではFinFETで行くと決めている。

  • Samsung

    トランジスタ構造の変遷。Samsungは3nmプロセスからMBCFET(独自名称)と呼ぶGAA構造を採用するとしている。TSMCやIntelは2nmから採用する見込みであり、Samsungが先行することになる (出所:Samsung Electronics)

Samsung 4nmプロセスの歩留まりはどの程度か?

すでに先行してQualcommは、「Snapdragon 888」(5nm)、「Snapdragon 888 Plus 5G」(5nm)、「Snapdragon 8 Gen1」(4nm)といった複数のスマートフォン向けSoCでSamsungの5/4nmプロセスを使用しているが、台湾の一部メディアによると、少なくともSamsungの4nmプロセスは歩留まりが低いため、QualcommはSnapdragon 8 Gen1の製造をTSMCに変更することを検討しているという。ただし、TSMCの4nmプロセスは、すでにApple(ないしはIntel)が生産能力を抑えている模様であり、ファウンドリの変更は容易ではないとの見方を伝えている。

なお、Samsungは2022年上半期に3nmプロセスでの少量生産を開始し、2023年に第2世代3nmプロセスの量産を開始するほか、2025年に2nmプロセスの量産開始を計画している。その一方でEUVを用いたプロセスがうまく立ち上がっていないという噂が絶えない。

今後、Samsungがファウンドリ業界におけるTSMCの一人勝ちに待ったをかけられるかは、3nm GAAの立ち上げがどうなるかにかかってくると言えるだろう。