Anniversary Updateの変更点 Windows Ink編

Microsoftの開発者向けカンファレンス「Build 2016」開催前にリリースし、Windows 10 Insider Preview ビルド14328から搭載した「Windows Ink」は、Surfaceペンに代表されるデジタルペンを効率良く利用するため、Windows 10のディスプレイを紙のようにデスクトップへ書き込む新UX(ユーザーエクスペリエンス)を提供するものだ。

Windows Inkワークスペースの「スケッチパッド」を起動した状態。デジタル定規は中央にコンパスを供えて、定規の向きを確認できる

Windows Inkワークスペースの「スケッチパッド」を起動した状態。デジタル定規は中央にコンパスを供えて、定規の向きを確認できる

Surfaceペンならトップボタン、キーボードなら[Win]+[W]キーで起動する「Windows Inkワークスペース」からは「付箋」「スケッチパッド」「画面スケッチ」と3つの基本的な機能を呼び出せる。付箋はWindows 7時代のアプリケーションに似た設計で、作成した付箋は付箋モードを終了させても、そのままデスクトップに残る仕組みだ。他のウィンドウと同じく任意の場所に移動させ、内容の拡大縮小は伴わないがリサイズも可能。詳しくは後述するがCortanaとの連動も行われる。ただし、1度剥がした付箋は元に戻せないので、あくまでもメモを残す感覚で使うのが正しいようだ。

デスクトップにそのまま残せる「付箋」。あくまでもWindows Ink用のため、ペン入力のみ受け付ける

Windows 10のUIフレームワークレイヤー。Windows Inkの描画はGraphic Layerで行われる

スケッチパッドはイラストやメモを自由に書き(描き)込めるスケッチブックである。筆者は絵心がないため今後活用することも、正しく評価を下すこともできない。だが、付箋のように制限が少なくペンの種類や色を自由に選択して、手軽なメモ書き環境として活用できることは容易に想像できる。今回の検証で便利に感じたのはデジタル定規(ルーラー)の存在だ。デジタルペンによるフリーハンド操作の弊害は、正確な線を引けないことだが、デジタル定規を使うことで、歪みのない線を自由に描き込める。

このデジタル定規は画面スケッチでも使用可能だ。こちらは文字どおりデスクトップをそのまま取り込んで、スケッチブックと同じペンやデジタル定規を使って自由に書き込む機能である。Microsoft EdgeのWebノート作成機能で手書きメモを書き込んだことのある方ならピンと来るだろう。書き込んだ内容はPNG形式によるファイル保存やクリップボードへのコピー、UWPアプリケーション経由で共有できる。

「画面スケッチ」を使えば、アプリケーションなどデスクトップに表示させた内容を取り込み、スケッチパッドと同じように書き込める

Windows Inkワークスペースの各機能に共通しているのが、直感的な操作だ。例えば画面スケッチはMicrosoft Edgeの例で示したように、これまでも実現できるものばかり(もちろん内部的なロジックは異なる)。だが、Surfaceペンを手にしていれば親指でボタンをダブルクリックするだけで画面スケッチが起動し、そのままメモを書き残し、蛍光ペンで強調できる。このUXを強調するためMicrosoftは、独立した機能としてWindows Inkをプッシュしているのだろう。

「設定」に加わるWindows Ink関連設定項目。「ペンのショートカット」では、トップボタンを押した時の動作を選択できる

Windows InkはAPIを叩くことで他のアプリケーションからも使用できる。Microsoftはサードパーティとの連携をエコシステムとして強調し、ペン実装ガイド.aspx)など多くの技術資料を公開中。既にワコムなどが対応するペンデバイスを開発中と言われているが、まずはWindows Inkによる直感的な操作性を訴求していくことが普及への近道だ。

至極当然だがWindows InkによるUXの恩恵は、ペンデバイスに対応するノートPCや2-in-1 PCなどしか受けることはできない。長年キーボードとマウスを使ってPCを活用してきた筆者を含む利用者は、ペンUXにさほど魅力を感じないだろう。このように旧態依然の利用スタイルに固執する利用者に衝撃を与えるキラーコンテンツが登場すれば、Windows Inkの利用シーンは大幅に増えるのではないだろうか。

Windows Inkワークスペースの<他のペンアプリを入手する>をクリックすると現れる「ストア」の「Windows Inkコレクション」