まとめと考察

ということで3カ月遅れであるが、やっと解析を終ることができた。この結果から読み取れることは、

  • AMDは出来る範囲でIPCの改善を行おうとした。ただしCPU内部には殆ど手を付けるのが不可能であり、改善は専らL2キャッシュ周りやTLBなどに集中している。この結果として、本当に若干のIPC改善に繋がる変更はなされているものの、その効果はあまり芳しくない。
  • 同様にAMDは出来る範囲で消費電力の改善を行おうとした。ただ例えば物理設計を全部やり直して利用するトランジスタの最適化を図るといったところまで手を付けるのは不可能であり、Clock Meshの構造にResonant Clock Meshを導入する事で若干の消費電力削減に成功した程度である。これだとClock Meshを構成する第10・11層の配線層とClock Driverまわりの変更だけで済むから、トランジスタ最適化に比べれば遥かに容易に実現できる。ただその効果は、やはり限定的と言える。

といったあたりである。AMDとしては、Steamrollerで構造を大きく変える(この辺は正月特集のこちらを参照)予定なので、Piledriverにはそれほど大きく手間を掛けられなかったのだろうし、そうした事情を勘案すればよく頑張ったというべきなのかもしれないが、とはいえ絶対的な性能がまだ不足している事には変わりがない。

今年1月7日、AMDはCESにおいてプレスイベントを開催し、この際に2013年のClient Roadmapを更新した。Photo10がその最新のものだが、いきなり筆者のロードマップは変更されることになってしまった。やはりKaveriがちょっと遅れるようで、中継ぎとしてTrinityから若干性能を上げたRichardコアを中継ぎで投入、今年後半にKaveriという形になるようだ。

Photo10: このロードマップ自体はこちらから誰でも入手可能。

さて、本題はここに書かれなかったVisheraの後継である。PerformanceですらTrinity/Richard/Kaveriが入っており、VisheraのVの字もないあたりが現在のAMD FXの苦境を端的に示しているような気がしてならない。Zambezi→Visheraの改良はここまで示したとおり、多岐に渡るとは言え小粒な範囲で、いわゆるマイナーアップデート以上のものではない、というのが今回の分析を終っての筆者の感想で、まだまだAMD FXには辛い状況が当分続くことになりそうだ。