そもそもWindows PowerShellとは、Microsoftが.NET Freamwork 2.0をベースに開発したCUI(Commandline User Interface)型シェルおよびスクリプト言語である。Microsoftは、Windows OSの弱点とも言えるコマンドライン機能の不足を補完するため、WSH(Windows Script Host)を用意してきたが、広く普及するに至っていない。

2004年頃にはMonad Shellという新型シェルの開発に着手し、MS-DOS時代から使われているバッチファイルを拡充したシェルスクリプトの実行を可能にしていた。Monadのベータテストを経て2007年に登場したのがPowerShellだが、Windows Vistaユーザーは、Windows UpdateやMicrosoftダウンロードセンター経由で入手しなければならず、WSHと同様に普及には至っていない。使っていたのはソフトウェア開発者や一部の好事家だけだろう。

このような背景を持ったWindows PowerShellがバージョンアップし、Windows 7に搭載されたのが、Windows PowerShell ISEである。コマンドの実行やスクリプトの作成・編集・実行・テスト・デバッグなどを、すべて同じウィンドウで行なうことが可能だ。

面白いのは名称の遍歴。開発当初(CTP2まで)はGraphical Windows PowerShellと呼ばれ、CTP3以降はWindows PowerShell V2に変更。そして正式版ではWindows PowerShell ISEに変更された。このISEはIntegrated Scripting Environmentの略。意訳すれば「統合スクリプト環境」と、開発者向けの環境である統合開発環境(Integrated Development Environment)に近いものである(図635~636)。

図635: プログラムメニューから<アクセサリ>→<Windows PowerShell>と開くと、Windows PowerShell ISEのショートカットファイルを参照できる

図636: こちらがWindows PowerShell ISE。開発環境風のアレンジが加わっている

前述のようにWindows PowerShell ISEはバージョン2.0にあたり、いくつかの機能強化が施されている。ざっと挙げ連ねると、100個を超える新しいコマンドレット。他のコンピュータと対話型セッションを確立するリモート管理。現在のセッションを維持したままコマンドを非同期にバックグラウンドで実行するバックグラウンドジョブ。このほかにもデバッガやモジュール作成、トランザクションのサポートなどがある。

これらのことからわかるように、Windows PowerShell ISEは、Windows OSをコマンドラインで管理し、各コンピュータの管理を自動化しなければならないシステム管理者やパワーユーザー向けのツールだ。そのため万人向けとはならないが、簡単な操作でレジストリ情報の編集や、ハードウェア情報の取得が行なえるため、知識を持ったユーザーには実に強い味方となるだろう(図637)。

図637: 従来のWindows PowerShellも用意されている。もちろんコマンドレットなどの新機能は同ISEに準ずる

図638: ヘルプファイルも日本語化され、各コマンドレットの内容を簡単に参照できる