複数のフォルダを仮想フォルダから簡単アクセス

Windows OS……もとい、MS-DOS時代からコンピュータユーザーに強いられた作業の1つがファイル整理。当時からユーザーデータを格納するディレクトリ(フォルダの実体)を作成し、そこにアプリケーション別や、作業内容別にサブディレクトリを作成してファイルを格納。参照時はそのディレクトリを開いて、アプリケーションを起動する、といった作業が必要だった。Windows OSでは、ユーザーデータを格納するマイドキュメントフォルダや関連付けの向上、履歴ファイルといった機能により軽減されてきたが、サブフォルダを開く場面が減ったわけではない。しかし、Windows 7に搭載された「ライブラリ」は、それらの作業を大幅に軽減させることができるだろう。

そもそも「ライブラリ」とは、複数のフォルダを特定の仮想フォルダに束ね合わせることで、ユーザーは各フォルダを参照せず、仮想フォルダ1つで各フォルダの内容を参照できるという機能である。本機能の実装には、Microsoftが調べたユーザーレポートに起因すると言う。改めて説明するまでもなく、Windows OSにはユーザーデータを格納するマイドキュメントフォルダが用意されているが、「C:\Project1」などのフォルダを作成し、独自管理を行なうユーザーが多かったそうだ。そこで、よりスムーズに各ファイルを参照できるようにするため、前述のライブラリ機能を実装したのだろう。

ライブラリフォルダの参照は各フォルダの参照も同時に行なわれるため、パフォーマンスダウンにつながると考えるのが普通だが、Windows 7では、この問題を解決するためインデックス情報を用いて、パフォーマンスダウンを回避している。ローカルディスクはもちろん、ネットワーク上の共有フォルダをライブラリフォルダに追加しても、ファイルリストを開くまでの待ち時間は皆無だ。蛇足だがライブラリの仕組みは、すべてのファイルデータベースで管理し、ファイルシステムとして参照するWinFSを連想させる。同システムは2006年に開発中断されたものの、開発が密かに進められている新バージョンWindows 8(仮)では、より進化したファイルシステムの搭載が予定されていると言う(図227~232)。

図227: 複数のフォルダを1つの仮想フォルダから参照できるライブラリ機能。初期状態ではドキュメント、ピクチャ、ビデオ、ミュージックの4ライブラリが用意されている

図228: プロパティダイアログからは参照する実フォルダの管理が可能。初期状態ではライブラリの種類に対応する各ユーザーのフォルダとパブリック用フォルダが登録されている

図229: 業務内容などに合わせ、独自のライブラリフォルダを作成することも可能だ

図230: 新規作成したライブラリフォルダは<フォルダーの追加>ボタンや、プロパティダイアログから追加するフォルダを選択できる

図231: ライブラリフォルダにフォルダを追加すると……

図232: 追加されたフォルダを自動的にインデックス作成対象に含んでいる

興味深いのが、ライブラリフォルダに追加できるフォルダとできないフォルダが存在する点。下記に示した図232では、ライブラリ対象にUNCを含む共有フォルダが加わっていることが見て取れるはずだが、この共有フォルダはWindows Server 2003にWindows Search 4.0を導入している。しかし、エラーダイアログにある「\buddha\0」はWindows 7を導入したコンピュータなのだが、共有化しているフォルダをインデックス作成対象に加えていないため、エラーとなってしまた。

つまり、古いWindows OS上の共有フォルダをライブラリに加えるには、Windows Search 4.0の併用が必要となるのだ。これはライブラリがインデックス情報を使用し、Windows Search 4.0からサポートされた、リモートコンピュータのインデックス情報を参照する機能を用いているからだろう(図233)。

図233: Windows Search 4.0が稼働しているコンピュータの共有フォルダは追加可能だが、未稼働もしくはインデックス作成対象に含まれていない共有フォルダはライブラリに登録できない