Windows Vistaから引き継いだUIシステム

本来Windows AeroはWindows Vistaから搭載されたUIシステムであり、Windows 7特有の新機能ではない。Windows XPから採用されたLunaの後継システムにあたり、ウィンドウフレームを始めとする透明効果や、タスクボタンにサムネイル機能を備えるライブサムネイル、一定範囲内でサイズを変更できるライブアイコンなど、見栄えのよさを兼ね備えたUIシステムだ。

このように視覚的な効果ばかり注目されるWindows Aeroだが、GUIシステムという観点から見ると、ボタンやラジオボタン、ダイアログといったWindows 95からXPに至る旧来型のUIデザインを一新させた立役者であることはあまり知られていない。Windows Aeroによって変更された箇所でもわかりやすいのがウィザードダイアログ。

我々がWindows XPまで見かけるウィザードの多くは、ダイアログ左側に絵柄などをあしらったデザイン領域があり、右側にはメッセージやチェックボックス。下部には操作ボタンが並んでいたはずだ。これがWizard 97である。一方、Aero Wizardもダイアログ下部には操作ボタンが並んでいるものの、ダイアログのメイン部分はボタンやリストボックスなど自由なレイアウトが可能になり、widowサイズの可変も可能になった。前述のとおりWindows Vistaから搭載された機能だが、Windows Aeroという機能を正確に捉えて頂きたいので、説明させて頂いた(図180~181)。

図180: Wizard 97の一例。画面はWindows XPのハードウェア追加ウィザード

図181: Aero Wizardの一例。画面はWindows 7のバックアップ設定ウィザード

さて、Windows Aeroのシステム要件(=Windows 7のグラフィックス関連システム要件)は最初に述べたように、WDDM(Windows Display Driver Model)1.0 以上のドライバを搭載したDirectX 9対応グラフィックスデバイスが必要となる。Windows Vista時代は、128MB以上のVRAMというGPUが使用するグラフィックスメモリ容量まで指定されていたが、Windwos 7に関しては特に明言していない。上記条件を満たさない環境では、自動的にWindows Aeroが無効になり、ウィンドウフレームを始めとする各所の透過処理やライブサムネイル表示などが無効になる。詳しくはDWM(Desktop Window Manager)の節で説明するが、Windows 7ベーシック環境ではウィンドウ処理が著しく遅くなり、Windows Vista Home Basicと同じ程度のパフォーマンスしか引き出すことができない。もし、お使いのコンピュータでWindows Aeroが有効にならないのであれば、GPUデバイスの換装や追加などを考慮すべきだろう(図182~183)。

図182: Windows Aeroによる透過機能が動作している一般的なWindows 7のデスクトップ画面。これが通常の状態だ

図183: システム要件を満たさない環境のWindows 7。「Windows 7ベーシック」テーマを選択したときと同じように、透過機能やライブサムネイルが無効になる