ViennaからWindows 7へ

さて、話をWindows OSの歴史に戻そう。本来、Windows XPの次々世代OSとなるBlackcombの開発は2002年にも終了し、リリースに至る予定だったが、前述のように度重なる遅延やLonghornの機能縮小も相まって、同社はBlackcombの破棄という方向転換を強いられることに。その経緯を経て登場したのが「Vienna(ビエナ: 開発コード名)」であり、Windows 7である。

Windows 7はMicrosoft社内の開発コード名だったが、語呂がよかったせいか、そのまま製品名に格上げされた一風変わったWindows OSだ。この「7」は、Windows 1.0→Windows 2.0→Windows 3.x→Windows 4.x(95/98/98/SE/Me)→Windows 5.x(2000/XP)→Windows 6.0(Vista)に続く、7番目のクライアント向けOSであることを意味しているが、あくまでもバージョン番号は6.1。Windows Vistaからのカーネルなどコアテクノロジをベースに改良を加えたマイナーアップデートであり、Windows XP→Vistaのように、一から作り上げた新OSではない。強いて言えば、Windows 2000→XPと捉えれば、わかりやすいだろう(図01)。

図01: Windows 7のバージョン番号は6.1である

個人的には、これまで類を見ない革新的なWindows OSを見たかったが、BlackcombからWindows Vistaに続くまでの遅延がMicrosoftにそれを許さず、既に継ぎはぎだらけとなってしまったWindows XPに続く、安定したOSを市場は求めていた。これがWindows 7のリリースを早めた一因だろう。この理由が関係しているのか、Windows 7のパブリックテストは過去に類を見ないアグレッシブなものだった。2008年5月の公式発表後、2008年10月にはPDC2008でプレベータ版(ビルド番号6801)を開発者向けに配布し、翌年の2009年1月にはベータ1(ビルド番号7000)を一般ユーザーに配布。2009年5月にはRC版(製品候補版 ビルド番号7100)を同じく一般ユーザーに配布し、多くのユーザーがWindows 7の概要を知るよい機会となったはずだ。

2009年8月にはMSDN/TechNet会員向けにRTM版(工場出荷最終版: ビルド番号7600)を配布し、10月22日の販売に至ったWindows 7。同OSの開発スタートを、2006年初頭に情報が流れたBlackcombの破棄とViennaのスタートから数えれば、3年の月日を数えるわけだから、決して開発期間が短いわけではない。筆者はプレベータ版から製品版に至るまで、Windows 7を見てきたが、Windows Vistaの機能をそのまま踏襲した箇所もあれば、まったく新しい技術を注入して、ユーザビリティを向上させている箇所もある。メインOSとして3年間、Windows Vistaと共に過ごしてきたが、Windows 7登場の暁には、所有するコンピュータのOSをすべて、Windows 7にアップグレードするほど、Windows 7に乗り換えるアドバンテージは大きい。本稿では、そんなWindows 7の様々な機能を多角的に捉えて紹介する。是非お付き合い頂きたい。