もう少しこの消費電力について試してみた。グラフ33と34は、マザーボードのEPS12Vの2×4コネクタに流れる電圧と電流を測定することで、消費電力を算出したものだ。Core i7の場合、前回レポートした通り、ここに含まれるのはおそらくCoreの部分のみで、Uncoreの部分は測定されていない。またCore 2の場合、メモリコントローラはチップセット側となるので、やはりここには入ってこない。

これを念頭にいれた上で、まずはSandra Arithmetic Benchmarkの結果をグラフ33に示す。前半がiSSE3/iSSE4.2 Integerの、後半がiSSE3 Floatのテストとなっているが、一番消費電力が多いのはやはりPhenom 9950で、次にCore i7-965、その次にPhenom系となっている。

ただ、上に書いたとおり、Phenom系列はメモリコントローラの消費電力もここに含まれているから、このままではフェアではない。そこで、初期状態(グラフ33における、最初の4秒の平均消費電力)との差を示したのがグラフ34である。

一番消費電力の差が少ないのはやはりPhenom IIで、Core 2がこれに続き、Phenomがきて、一番消費電力の差が大きいのはCore i7ということになる。表3にDhrystone(グラフ34中の40秒~45秒の平均値)とWhetstone(同85~90秒の平均値)をまとめたが、CPUコアに関しては大幅に省電力化に成功したと言って差し支えないだろう。

■表3
Dhrystone(W) Whetstone(W)
Core 2 Q9550 50.2 40.5
Core 2 Q9650 53.5 43.8
Core 2 QX9770 57.2 46.9
Core i7-920 79.3 67.1
Core i7-940 86.7 74.3
Core i7-965 102.3 87.8
Phenom 9550 66.4 53.4
Phenom II 2.6GHz 36.5 26.6
Phenom II 920 48.2 37.5
Phenom II 940 51.5 39.3
Phenom II 3.2GHz 53.3 39.8

もう一つ、Cache&Memoryの結果をグラフ35に示す。こちらのテストの場合、高速なほどテストが早く終わるため、処理時間が一定でない。また最後にメモリアクセスが入るので、急に消費電力が跳ね上がるといった特徴もある。

さて、結果をみてみるとまさしくそうした特長がそのまま出たグラフとなっている。このままでは判りにくいので、やはり初期状態からの差を取り、かつ経過時間が同じになるようにグラフを引き伸ばしたのがグラフ36である(したがって横軸方向は一定ではない)。

さて、こちらを見ると最初に気がつくのが、

  • キャッシュアクセスの範囲で一番消費電力が少ないのはCore i7-920
  • キャッシュアクセスの範囲で一番消費電力が多いのはCore i7-965

ということになっている。実際、25W近い消費電力の差があり、しかもこの差がメモリアクセス時もそのまま維持される。両者の大きな違いは動作周波数とQPIの転送速度だが、それだけでこんなに消費電力に差が出るとは思えず、ちょっと疑問ではある。

さて肝心のPhenom IIは? というと、キャッシュアクセスの段階では、Core 2よりやや少ない程度に収まっている。ただメモリアクセスの段階になると相応に大きくなるのは仕方が無いところだ。ただ、総じてPhenomと比較した場合、やはり10W程度の消費電力低減が実現できており、40%は言い過ぎにしても20%以上の消費電力削減は堅いところだ。大雑把にいって、Core 2と同等以下まで消費電力は下げた、と言って差し支えないだろう。