【特集】

徹底解説! Radeon HD 2000シリーズ - 新生アーキテクチャの全容

24 ユニファイド・ビデオ・デコーダ~ハイビジョン映像再生の負荷を完全に請け負います

 

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Radeon HD 2000シリーズではハイビジョン映像を再生するための新しいビデオプロセッサとして「ユニファイド・ビデオ・デコーダ」(Unified Video Decoder)が新搭載された。

UVDは3Dグラフィックスコアを活用せずに単体でMPEG-1&2/H.264/VC-1といったビデオコーデックをデコード可能な専任ビデオデコーダエンジンとなる。

UVDはすべてのRadeon HD 2000シリーズに登載され、なおかつローエンドのRadeon HD 2400シリーズにおいても、最大40Mbpsのハイビジョン映像のデコードと表示に対応できることが、競合NVIDIAのPureVideo HDに対するアピールポイントとなる。NVIDIAのGeForce 8000シリーズでは、グレードによって再生可能なハイビジョン映像のビットレートが異なり(モデルごとのサポート最大ビットレートは非公開)、ビットレートの高いハイビジョン映像の再生にはよりグレードの高いモデルが必要になる。

最大40Mbpsというと、HD DVDの最大ビットレートである36.55Mbpsを超える。BDの最大ビットレートは54Mbpsなので、完全カバーとは行かないが、現行BDソフトのほぼ全てがカバーできるとしている。

「ユニファイド・ビデオ・デコーダ」(Unified Video Decoder)

また、デコード処理から表示までを一貫してグラフィックサブシステム内(GPUとビデオメモリ内)で行うため、映像再生におけるCPU負荷をほぼ完全になくすことができている。

映像の圧縮は、フレーム相関を見て"動画としての冗長性"を排除していく映像そのものの圧縮の他に、圧縮した映像データ列の冗長性を排除する、エントロピー圧縮処理も行われている(エントロピー符号化はイメージ的にはZIPとかLZHのようなもの)。

再生時には、まず、このエントロピー符号化されたデータストリームの展開をしないと、実際の映像のデコードが出来ない。

MPEG-2ではVLC(Variable Length Coding)と呼ばれる可変長ハフマン符合化技術が用いられていたが、ハイビジョン時代のMPEG-4圧縮ではより複雑なCAVLC(Context-based Adaptive VLC)、CABAC(Context-based Adaptive Binary Arithmetic Coding)といった高負荷な符合化技術が用いられている。

図はPentium 4/2.8GHzを用いて各ビットレートのMPEG-4 AVCをデコードした際の、各フェーズにおけるCPU負荷の割合を示したものだ。これを見るとエントロピー・デコードに20Mbpsで26.5%、40Mbpsではなんと47.8%もの負荷がかかっている事が分かる。実は、ハイビジョン映像のデコードは映像フレームのデコードに加え、エントロピー・デコードも高負荷だったのだ。

ハイビジョン映像のエントロピー・デコードは意外に高負荷だった

CAVLCやCABACといった圧縮伸張処理は、プログラム実行時の分岐条件傾向のランダム性が高く、CPUの分岐予測がミスしやすいため、CPUのパイプラインを乱しやすいという特性がある。かといって1次元的なデータストリームの取り扱いなので、展開プログラムはマルチスレッド化がしづらい。そのため、マルチコアCPUやGPUのシェーダで実行してもあまり高速化されない。そこで、AMDはUVDにエントロピー・デコード専用のロジックを入れたというわけだ。

NVIDIA GeForce 8000シリーズのPureVideo HDではエントロピー・デコードはCPU任せのまま。8600シリーズ以下では改善されている

高負荷なHD DVDとして知られる「夜桜」(ポニーキャニオン,PCHF-50001)を再生したときのCPU負荷率

同じく「夜桜」を再生したときの消費電力の比較

なお、このUVDはRadeon HD 2000シリーズに登載される映像プロセッサの名称であって、これまでAMDが提唱してきたディスプレイ技術の「AVIVO HD」を置き換えるものではない。AVIVO HDはAMDのディスプレイ出力技術の総称であり、UVDは「AVIVO HD」を実現するためのアクセラレーション技術の1つ、という理解が正しい。なお、UVD機能は、2007年5月現在、リリースされているドライバでは有効化されておらず、近い将来リリースされるドライバからサポートが開始されるとのこと。このUVD対応版ドライバと最新版のWinDVD(InterVideo)やPowerDVD(CyberLink)といったプレイヤーソフトを組み合わせることで、UVDの効果が発揮されるようだ。

この他、Radeon HD 2000シリーズの映像系新機能として面白いものに、映像再生時のデジタル音声ストリームを、PCI Expressバス経由でGPU内に取り込んで、そのままRadeonカード上から出力する機能がある。Radeon HD 2000シリーズに付属するDVI-HDMIアダプタには、独自仕様の拡張がなされており、これをRadeon HD 2000シリーズのDVIコネクタに挿したときに限り、映像と音声の両方をHDMIケーブルで伝送できるようになる。

Radeon HD 2000シリーズは付属のDVI-HDMIアダプタを活用した場合に限り、HDMIから映像と音声の両方を出力可能

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インデックス

目次
(1) Radeon HD 2000シリーズ発表~バリューからハイエンド、デスクトップからノートまで(1)
(2) Radeon HD 2000シリーズ発表~バリューからハイエンド、デスクトップからノートまで(2)
(3) Radeon HD 2000シリーズ発表~バリューからハイエンド、デスクトップからノートまで(3)
(4) Radeon HD 2000シリーズ発表~バリューからハイエンド、デスクトップからノートまで(4)
(5) Radeon HD 2000シリーズ発表~バリューからハイエンド、デスクトップからノートまで(5)
(6) Radeon HD 2000シリーズ発表~バリューからハイエンド、デスクトップからノートまで(6)
(7) 統合型シェーダアーキテクチャとはなにか?~DirectX 10世代SM4.0対応GPUの技術トレンド(1)
(8) 統合型シェーダアーキテクチャとはなにか?~DirectX 10世代SM4.0対応GPUの技術トレンド(2)
(9) Radeon HD 2000シリーズのアーキテクチャに迫る
(10) コマンドプロセッサ~ドライバの主要処理をGPU内部で行うことの意義とは?
(11) セットアップエンジン~汎用シェーダが3種類のシェーダになるための前準備
(12) ウルトラスレッド・ディスパッチプロセッサ~統合型シェーダアーキテクチャの司令塔
(13) ウルトラスレッド・ディスパッチプロセッサ~SIMDユニットとSIMDアレイ
(14) ストリーミング・プロセッシング・ユニット~5基で一組の汎用シェーダユニット
(15) テクスチャユニット~HDRレンダリング時代の浮動小数点完全対応型のテクスチャユニット
(16) テクスチャユニット~RadeonにNVIDIA SHADOW機能が実装された
(17) テクスチャユニット~二段構えのテクスチャキャッシュシステム
(18) メモリ読み書きキャッシュ~Radeon HD 2000シリーズのジオメトリシェーダはGeForce 8000シリーズの50倍速い謎
(19) レンダーバックエンド~RTTパフォーマンスの向上でCrossFireパフォーマンスも劇的に向上
(20) レンダーバックエンド~ピクセル境界を打ち破った新アンチエイリアス技術「CFAA」とはなにか?
(21) リングバス・メモリー・インタフェース~世界初の512ビット・リンクバス・メモリコントローラとは?
(22) プログラマブル・テッセレーション・ユニット~次世代DirectXの機能を先取りして実装(1)
(23) プログラマブル・テッセレーション・ユニット~次世代DirectXの機能を先取りして実装(2)
(24) ユニファイド・ビデオ・デコーダ~ハイビジョン映像再生の負荷を完全に請け負います
(25) まとめ~Radeon HD 2000シリーズに秘められたAMDの戦略とは?

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