【特集】

超漢字Vの進化 - Windows上でTRONを使う

1 やってきたXデー

    美崎薫  [2007/01/01]

    2001年に「超漢字4」をレビューしたとき、「超漢字4」を「超漢字」の最終形と書いた。それには理由があった。当時、開発・販売元のパーソナルメディアの泉名達也社長にインタビューしたときに、「超漢字のバージョンアップはもうない」という話を聞いていたからだった。

    にわかには信じがたかった。

    ユーザーでもある筆者にとって、「超漢字」の立ち位置がどこにあるのかは、長いこと悩ましいものであった。より正確にいえば、社会的に「超漢字」自体がどんな立ち位置であれ、筆者自身は自分が使い続けるのに最低限の機能をもっていればかまわないのだが、開発が完全に止まってしまえば、その最低限の機能でさえ満たされなくなる可能性がある。ハードウェアは進歩しつづけ、Web2.0の時代を迎えて、ソフトウェアも変わりつつある。「超漢字」の居場所は、どこにあるのだろうか。

    「超漢字」は、多漢字や多文字、OSによって実現している軽快で常時編集可能なハイパーテキスト機能によって、「考えて文章を書く」ことに関しては、Windows、Macintoshはもとより、WikiやBlogなどといったWebアプリケーションまで視野を広げても、現時点でもまだ一歩先んじている部分があると筆者は考える。

    料理をするときに、1本のナイフで果物から魚まですべてをさばくのではないように、コンピュータ上でもWeb、メール、企画書作成、プレゼンテーション、書類作成、写真整理、アイデアプロセッシングなど、さまざまな用途に対して、なんでもおなじ道具を使うのではなく、そのときどきに応じた道具を使い分けることが、よりうまい使いこなし方なのだとすれば、「超漢字」にも出番はある。「考えて文章を書く」ためのツールとしてである。

    考えて文章を書く道具

    「超漢字」にはATOKの不在という小さからぬ瑕疵があり、そもそも「考えて文章を書く」用途を万人向けともいわないが、それでもこの用途に関して「超漢字」は一定の理解を得られるだろう。

    「考えて文章を書く」道具は、紙と鉛筆から、AdobeのInDesignまで幅広い選択肢がある。万年筆のペン先の硬さから、紙の引っかかり具合、キータッチ、キーボードショートカットの割り当て、QWERTYか否か、ポインティングデバイスの素材、重量感とバランス、質感や背景や文字組みやフォントなど、およそありとあらゆる差異はこだわりの対象となる。

    「超漢字」は、そのこだわりや期待感を100%満たすことはできないかもしれないが、ほかの環境では代え難いいくつかの機能をもち、それを価値として認める人にとっては、圧倒的な個性となって屹立するはずだ。問題は、それを価値として認める人がどれだけいるかにかかっている。

    Webを見渡してみると、文章を書くひとが選ぶ表現のツールとして圧倒的に普及しているのは、Blogである。文章を書くためのツールとして「超漢字」を選ぶ人はいるだろう、とは思うものの、圧倒的な数の前にその存在はかすんでいるようにも見えた。

    やってきたXデー

    ただ使い続けられればよい――ずっとそう思っていた。「超漢字4」で開発が止まってしまえば、別の道具を探す必要に迫られるかもしれない。Xデーにおびえていた。「超漢字」がなくなるXデーに。そこへ……青天の霹靂だった。

    あまりの驚きで、うれしいことにも気づかなかった。うれしいと感じていいんだと気づくまでに、2カ月くらいかかってしまった。なんと「超漢字」のあたらしいバージョンが出るというのだ!

    「超漢字V」。Windowsのアプリケーションとして、装いも新たに登場した「超漢字」なのである。

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