【特集】

「記憶する住宅」そして未来へ - 記憶を発想に高めるコンピュータ環境を作る

1 記憶する住宅~デスクトップneo

美崎薫  [2006/07/18]
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デスクトップneo

デスクトップneoの構成図

「デスクトップneo」とは、これまで筆者が興してきたプロジェクトや、その他の外部環境をデスクトップ上で統合した、統合的なユーザーインタフェースの近未来像だ。もっぱら「考えて書く」ために必要な作業に集中し、アイデアをメモし、文章を書き、図形や写真と統合し、blogやメールで表現することをシームレスにサポートする機能をもつパーツ群を統合しようと考えたのだ。

これまでばらばらに開発してきたSmartWriteやSmartCalendarに加えて、メーラーやblogエディタなどを視野に入れた環境となっている。Web2.0といわれる新しい潮流への対応を視野に入れたものだ。

すべてを記録し記憶の代替とする試みのうち、すべてを記録することに関するハードウェアの進歩は著しい。Googleジャパンの村上社長は、「2009年にはおそらく、"人類の知"と呼ばれる分野のデータはすべて検索可能になるだろう」と予想した。2006年の現在、すでに美崎薫個人の知は検索可能になっているので、2009年に来る3年後の未来は日々体験ずみである。

「デスクトップneo」は現在進行中の近未来の目標図である。ここに至るまでのプロセスを簡単に振り返って、さらに「デスクトップneo」の先の「記憶を発想に高めるコンピュータ環境の構築」へと話を進めていきたい。

プレ「記憶する住宅」01年1月~03年5月

筆者自身が最初に「記憶する住宅」を意識した大きなメルクマールとなったのは、2001年1月のIT住宅特集だった。今後進むと考えられる住宅のIT化を先取りした記事だ。

それから2年後の2003年5月には、「記憶する住宅」という記事が本誌に掲載された。

「記憶する住宅」とは、「住宅そのものをコンピュータ化して、記憶媒体とすることで、記憶をサポートしてくれる住宅」という意味である。2001~2003年当時、コンピュータの記憶媒体としての可能性は、まだ萌芽的な段階にあった。筆者が「全人生を記録する」などといっても、全人生とはどのくらいの容量かとか、記録は記憶ではないだろう、などというような評論家が出たものだった。

筆者がゴールとして漠然と抱いたイメージは、ヴァネヴァー・ブッシュが1945年7月に「アトランティックマンスリー」に発表したMemexのデジタル版Memexのデジタル版であった。

自分に関するあらゆる情報が瞬時に手にはいるようになったとき、記憶はゆらぐだろうし、揺らがなかったらつまらない。ゆらいだときに、新しい感覚を抱いた人間が生まれるだろうと考えたのだ。揺らぐのだとしたら、その感覚を世界でだれよりも先に感じたい、と思った。

現実的に、本や書類に押しつぶされそうな毎日を送っていて、それが「記憶する住宅」の大きなモチベーションとなった。これは「記憶する住宅」以前の2000年11月の書棚

「記憶する住宅」では、全データをデジタル化し索引をつけて検索可能にしようとしているが、全データの整理は、高校生のころからすでに行っていた。たとえば、これはかつてのカードによる蔵書の整理。1984年6月16日のもの

机は書類の山脈に埋め尽くされている。書棚も大量の本でいっぱい。2000年11月の机まわり

デジタルツールも多数使った。これらを書斎に違和感なく統合したいと感じていた。2000年11月の使用機材。机の上は撮影用に書類を退けてある

「記憶する住宅」以後の書斎。デスクトップまわり。書籍や書類がだいぶ姿を消し、その代わりにディスプレイの比重が高まっている。無骨なデジタル機器も、できるだけ存在感を消すようにした

手書きのメモ - WISS2003~2004

もうひとつ。最先端のコンピュータの研究者であっても、発想のためにはコンピュータを使っていないことがすこしわかってきた。発想を形にするためには、アイデアを書き留めることが重要である。書き留めたアイデアで直接プログラムを作るプロトタイピングとかスパイラルアプローチなどという方法もあり、ともかく作ってしまう、ということは、ひとつの可能性ではある。

発想を形にする前段としてアイデアを書きためる段階では、コンピュータはほとんど使われていないか、機能していないのであった。そのようなアイデアメモの作業には、依然として紙が使われている。

コンピュータ特有のさまざまな手続き、コンピュータに向かい、電源を入れ、起動を待ってファイルを作成し保存する手続きの多い一連の作業と、飛沫のように浮かぶアイデアをメモする作業とは、本質的に相反するものなのだろう。

アイデアが言葉で生まれるのなら言葉を書き留めればよいが、言葉でないアイデアも生まれてくるものである。哲学の問題である「言葉に先立つ概念があるか」という問いに対する答えは容易だ。言葉ではないアイデアが生まれてくるのなら、イエスに決まっている。
アイデアメモで必要なちょっとした手書きのイラストを、容易にいれることができない点も、コンピュータの柔軟性のないところだ。記憶をサポートするためには、ちょっとしたアイデアを容易にためられることがなによりも重要だと考えた。

FeelLightを研究する早稲田大学理工学部応用物理学科の鈴木健嗣氏のモールスキンのノート。研究者でも、発想のメモには手書きでメモをしている、というのは、なかなか感慨深い

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インデックス

目次
(1) 記憶する住宅~デスクトップneo
(2) インタラクション2004~SmartWrite/SmartCalendar
(3) SmartWrite/SmartCalendar(1)
(4) SmartWrite/SmartCalendar(2)
(5) SmartWrite/SmartCalendar(3)
(6) SmartWrite/SmartCalendar(4)

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