【特集】
実はこの原稿、こんなにものすごい量になる予定ではなかった。折角DB1500の評価ボードを使える機会があったので、性能と一緒に消費電力も測ってみようか程度の軽い気持ちで始めたのだが、蓋を開けたらこの始末である。ただこれまで、PCの消費電力をコンポーネント別に測定するという機会はあまりなかったから、丁度良い機会ではあったと思う。
そうした雑感はともかく、全体を通しての評価をまず行いたい。今回の主眼はAMD Geode NX 1500と、これを搭載するAMD DB1500 Development Boardの性能評価である。その観点で話をすると、Geode NXがターゲットとするVIA C3 1GHzと比較した場合、"1500"というナンバリングは適切・あるいはもっと大きい数字でも構わないというのが筆者の見解である。1500というナンバリングは、当然C3で言えば1.5GHz相当の性能になりますよという示唆であるのは明白(勿論AMDは公式にはここまで露骨には言っていない)であるが、絶対的な性能という意味でも、消費電力あたりの性能という意味でも、Geode NX 1500 + DB150の組み合わせはC3 1GHz+EPIA Mの組み合わせの倍程度の成績を残しており、かつ消費電力はほぼ同等と見なして差し支えないと思う。まぁここでいきなり2000にするとちょっとウソっぽくなるので、1500あたりで留めておいたのではないかと思うが、数字に偽りなしというのが筆者の率直な感想である。もしC3 1GHzと同等の性能で構わないならば、CPUはGeode NX 1500ではなく、667MHz駆動のGeode NX 1250でも十分だろうし、その場合は更にトータルの消費電力が1~2W下がりそうだ。
ちなみにEden EPIA M10000(EPIA M + C3 1GHz)の価格は大体2万弱。安いのが最優先で、性能は二の次といった場合には、こちらも良い選択肢だろう。実際筆者も1台、カメラキャプチャサーバー用にEPIA M8000(C3 800MHz)を使っているが、性能に多くを求めないこともあってこれで不自由は感じない。そうした特定用途には、引き続きC3の方が安く済むからありがたいだろう。ただ、よりパワーを求めてEPIA MII-12000とかを買う位なら、Geode NXを選んだほうが賢明である。
では、「Geode NX最高!」と言えるかというと、ちょっと難しいのはPentium Mの存在。今回は1.7GHzのPentium M 735で試したが、1GHz駆動でもここまで性能が高いのだから、例えば1.5GHz駆動のPentium M 715あたりを持ってきても十分高速だろう。消費電力はGeode NXの場合よりやや増えるが、十分許容範囲でしかも性能は圧倒的に高い。Pentium M 715なら\23,000前後だから、マザーボードとあわせてぎりぎり5万に収まるかどうか、という程度になるだろう。Geode NXのシステム価格はまだはっきり決まっていないが、S2498AGNは\20,000以内を目指し、Geode NXの価格は(Mobile Athlon XP-M 2000+の価格が1000個ロットで$74程度であることを勘案すると)1万前後で収まると思われるので、価格差は2万円ほどになる。この性能差でこの価格差をどう受け止めるかは人次第だろうが、筆者ならPentium Mを選びたいところだ。
ところでPentium Mで、特にグラフ37・38で3パターンのグラフが殆ど同一に重なっている点に関してだが、i855GMEm-LFSのBIOSとSpeedStepユーティリティのインプリメントがかなり怪しい気がする。もともとこのSpeedStepユーティリティ、設定を変えてからそれが反映されるまで平均10秒程度、最長で数十秒待たされる事があった。特に砂時計アイコンが消えてから数十秒後に2Wほど消費電力が上がる現象は、要するにユーティリティのロードが遅くて、反映されるまでに数十秒掛かってしまうという事ではないかと思う。そして消費電力が上がるのは、このユーティリティでは周波数が下がってもコア電圧を下げない事にしているのではないか? と考えられる。もっと言えば、BIOS内の初期設定では動作速度を下げ、かつ電圧も低い形でインプリメントしているが、ユーティリティでは動作速度に関係なく消費電力を上げるインプリメントをしているのではないか? というのが筆者の推定である。こう考えればグラフの結果とぴったりあうし、大体今回測定したPentium Mの待機時消費電力は明らかに大きすぎる。表4にPentium M 735のVIDの設定は示したが、この際の消費する電流に関しては
と定義されている。HFM VccとはHigh Frequency Mode Vccの略で、要するに1.7GHz駆動の場合のVcc、LFM VccはLow Frequency Mode Vccで600MHz駆動の場合である。電流値にはこのMaxの値を採用し、電圧にはVID #Aを使った場合
とそれぞれ計算される。これは最悪値であって、実際には1.7GHzで動作中でも14Wとほぼ半分で済んでいるのはグラフ34から明白だが、それであれば待機時電力も当然減るはずで、特にグラフ36でESSを使って(=不要時には600MHzで駆動されている)の待機時消費電力が7Wというのは明らかにおかしい。本来これは5.8Wより下がってしかるべきだからだ。これは要するにユーティリティでESSのインプリメントがまだ不完全で、電圧を変えていない証拠と言えるだろう。ついでに言えば、グラフ36でテスト実行中も殆ど消費電力が増えないというのは、恐らく600MHzで駆動されつづけているためだろう。どうもこのユーティリティも通常のユーザーアプリケーションとして動いている様で、結果として他のアプリケーションが急にCPUを占有するような処理を始めると、動作クロックを変更する処理が(CPUが廻ってこないので)実施できないかの様に見える。要するに、現在のユーティリティを利用する限りSpeedStepの効果は限定的でしかないようで、ちょっと残念である。i855GMEm-LFSを使う場合、SpeedStepはやめて動作クロック固定で使う方が良い場合もあるだろう。
Efficeon搭載MB860も、なかなかに魅力的なマシンである。消費電力は本当に最小だし、性能はまぁそれなりだが、少なくともC3ほど低くはない。ただし価格を度外視すれば、という前提付きである。店頭売りされているMB860の価格は50,000円~60,000円の間。イーレッツのSilent Mt6600は、同社直販サイトでの価格は92,400円になっており、よほどEfficeonを使いたいと思わない限り手が出しにくい価格になっている。
Athlon 64は、ことPentium 4と比較する限りはかなり省電力が実現できることは間違いない。ただ、それ以上を求めるのは無理であると弁えたほうが良さそうだ。とはいえ、CnQを使うだけで2GHz動作マシンの消費電力が50~60Wに抑えられる事が判ったのは収穫であったと思う。
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