AMD CPU

それではAMDのロードマップである。

表7 : ロードマップ

表8 : 製品分類

表9 : 製品仕様

今年のAMDの最大の誤算は、Quad Coreの性能の伸びなさ、というか発熱の多さであろう。この理由を同社の65nm SOIプロセスに求める評者は多いが、同じ65nm SOIプロセスを使ったK8は最大2.7GHzまでTDP 65Wで引っ張る事ができている事を考えると、単純にプロセスだけが悪いとも言い切れない。勿論DualとQuadではフル稼働時の発熱には大きな違いがあるから、プロセスにはより一層の低消費電力化が求められる事になるが、それはそれとしても根本的に何か発熱が多すぎる気がする。ここで思い起こすのが、かつての同社のThroughbredコアのAthlon XP。当初登場したThroughbredコアは動作周波数が伸びないわ、発熱は多いわでなかなか苦戦、最終的に新マスクを作り直し、結果的に配線層が1層増えるという騒ぎになって落ち着いたのだが、何か今回も同じ事が起きていそうな気がする。

こうなってくると、根本的な解決はマスクの作り直ししか無いが、それ以前にAMDとしては45nmプロセスへの移行も待ち構えているから、同時に両方を行うのは難しいだろう。また、AMDのスタイルからして最初の45nmプロセスに利用するトランジスタは現在の65nmのものと殆ど変わらないものになるはずで、ダイサイズの縮小には役立っても劇的な消費電力低下には繋がりにくい。恐らく45nm SOIの2~3番目のRevision(Rev.C2もしくはRev.C3)までは根本的な手が打ちにくいと思われる。果たしてこれが今年中に可能か? というと、難しい気がする。

それとは別に、PhenomのTLB Errataの対処は既に着手しており、これに対応したRev.B3のコアが第1四半期中に登場する予定だ。こちらはErrataの修正以外は基本的に既存のPhenomと変わらないので、同じモデルナンバー(OPNは流石に変更されるだろうが)のまま流通する模様だ。このErrata修正に加え、45nm SOIへの移行や内部マスクの根本的な見直しなどが入ったためか、全体的にスケジュールがかなりきつくなって来ている。結果として、色々なものが後ろにずれ気味なのは仕方ないかもしれない。とりあえず、第2四半期までにはほぼ全ての90nm SOIプロセスを使った製品がフェードアウトする。ただし65nm SOIのBrisbaneコアのAthlon 64 X2はどうも2008年一杯残りそうだ。当初の予定では、これらがkumaコアで全面的に置き換えられる筈だったが、そこまでの余力はないようだ。また、Athlon X2 BEシリーズは第2四半期に消えるように見えるが、これはAthlon 4xxxeと名前を変えて再投入される事になる。このAthlonにはkumaコア6050/6250も追加され、更にQ4あたりには6150/6350(モデルナンバーはまだ確定ではない)も追加されると見られている。

やや継子扱いだったAthlon 64 FXはPhenomに統合され、Phenom FX-80として再出発する形になる。ただ今ではAMDも、Quad FXプラットフォーム自体がやはり無理だった事をそれとなく認めており、Phenom FXのラインナップを更に拡充するかはちょっと微妙なところ。このあたりは、IntelのSkullTrailを眺めながら考える、というあたりではないかと思う。Phenomそのものは、第1四半期末に9700、第2四半期までには9900をラインナップに加えるが、その上はやはりちょっと難しい模様だ。これに関しては、45nmに移行したDenebコア任せということになりそうだが、問題は本当にDenebが第4四半期にリリースされるかどうか、であろう。もっとも、いきなり全量を45nmで代替するのは無理だろうから、2008年一杯は併売の形になると思われる。

一方TricoreのPhenom 8000シリーズも第1四半期中(恐らく1月末まで)には投入される。こちらもあまり周波数を上げないまま、第4四半期には45nm SOIを使ったPropusコアの製品を加える形でラインナップを拡充してゆくと思われる。

その一方、Single CoreのAthlon 64はまもなくラインナップから消える。問題はローエンドのSempronである。今は2.2GHz駆動の3800+までがラインナップされているが、対するIntelがCeleronを全量Core 2ベースに切り替えつつあり、しかもDual Coreをラインナップするという状況ではやや力不足は否めない。当初はこのマーケットにSpicaコアを投入する予定だったが、現時点ではそもそもSpicaコアそのものの開発がどうなってるかすらよく判らない。可能性としては、例えばBrisbaneコアのAthlon 64 X2を(L2半減など多少制限をつけた上で)そのままSempronとして投入するとか、そもそもSempronを廃してAthlonブランドをローエンド向けにしてしまう可能性すらある。実際2007年末の価格では、Sempron 3800+が$53なのに対し、Ahtlon 64 X2 4000+は$68まで落ちており、これは十分バリュー向けと出来る価格帯である。ただDuronブランドを捨ててSempronブランドを作ったばかりのAMDとしては、もう一度Sempronを捨てられるかどうかは疑わしい。むしろ、Sempron 5000+とか言ってAthlon 64 X2を投入するほうがありえそうだ。一応表にはSpicaコアがまだ存在するという前提で記述したが、正直これはよく判らない。

ただ長期的に見る場合、AMDとしては早い時期にSocket AM2+への移行を進めたいわけで、その意味ではSocket AM2ベースの製品を転用するのは微妙な感じではある。Spicaをロードマップに残したのはこのあたりの含みがあるからで、どういう形になるのかはもう少し時間が経たないとはっきり言えない感じだ。