【特集】

PCテクノロジートレンド 2004 FALL - 見え始めたマルチコアプロセッサ

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年2回、つまり6ヶ月おきを予定しているのが、すでに時期は9月に突入してしまっている。こまったものだ。さて前回お届けしてから本日までの間に、激動と言っても良いほどマーケットは揺れ動いた。IntelのEM64TサポートやNetBurst Architectureの発展の断念/マルチチップ化、Pentium Mアーキテクチャの採用といったIntelの動揺、NX(Non-Execution)やAMD64で有利になったにもかかわらず、それを売上拡大にダイレクトに繋げられないAMD、ATIとNVIDIAによるGPUのハイエンド化、手間をかけた割にさっぱり立ち上がらないPCI Expressと話題は多い。このあたりを順に説明してゆこう。

まずはCPUの動向から紹介しよう。いつも通りPC向けプロセッサはIntel/AMD/VIAの3社のみである。Transmetaは、ノートやEmbeddedにフォーカスしており、ちょっと今回の話からは外れるので除外したい。

Intel CPU

消費電力と発熱の問題を何とか解決して、リリースに向けて準備万端だった筈のPentium 4だが、既存のPrescottコアに続いてリリースされる筈だったTejasコアの全面キャンセルという時点で、完全にデスクトップ向けのロードマップは大混乱に陥った。そもそもWillametteから始まったNetBurst Architectureは、10年はこれで行けるというだけの機能をつぎ込んだものである。それは単に高速動作が可能というだけではなく、HyperThreading/LaGrande Technology/Vanderpool Technology/Yamhill(あえてEM64Tとは書かない)といった機能拡張をきわめて容易に行えるという点でも、Intelの向こう10年のアーキテクチャを支える重要な柱であった。もちろん性能面でもこれは言えることで、あえてIPCへのこだわりを捨てて高クロック動作化の道を歩んだことで、「条件さえ合えば」爆発的に高い性能を引き出せるという点でも有利なアーキテクチャだった筈だ。実際180nm世代ではAMDのAthlon XPと互角に近かったのが、130nm世代では完全にAthlon XPを引き離す事に成功した点でもこれは証明されている。

ところが、「10年使えるアーキテクチャ」であるための重要なファクターである、「プロセスの微細化により消費電力が下げられる」という見通しが、90nm世代で見事にひっくり返ってしまった事で、話が難しくなってしまった。スピードという面では問題ないものの、発熱が到底受け入れがたいレベルになってしまった。それでも何度かのステッピング変更(と書くとたいした作業ではなさそうに見えるが、実際はおそらく回路修正を含む全マスク作り直しである)を経て、現行の3.6GHz動作品は100W前後のTDPで収まってはいる。しかしながら、今後4GHz超の動作周波数を考えると、現在の90nmプロセスでは許容範囲から外れかねない。ましてや、さらに動作周波数があがり、おそらくステージ数やトランジスタ数も増えるTejas以降のコアは到底実用に耐えないと判断されたことになる。

ここで単に問題が放熱だけの話であれば、たとえば水冷モジュールで凌ぐ事もあながち非現実的とは言えない。あるいは、65nm以降の世代では省電力化が再び図れる可能性があるというのであれば、90nmでなんとか凌ぎつつ早急な65nm世代への移行というシナリオも可能性があるだろう。このどちらもが採用されないというのは、

  1. 水冷システムを使ってもカバーできないほどに発熱が大きい。もしくは発熱が解決しても、消費電力の大きさが論外に近く、現実的ではない。
  2. リーク電流に対して積極的な対策を施したといわれる65nm世代でも、消費電力の低下は望めない、もしくはさらに消費電力が増える。

という2つの状況が同時に発生していると考えざるを得ない。だからといって、NetBurstをいきなりキャンセルしてすむという問題ではない。HyperThreadingに続き、LaGrandeやVanderpoolといった新技術を(NetBurstを当てにして)開発し、これを全面に使う事で高機能化や差別化を図ってゆく意向のIntelとしては、これをキャンセルするというのはIA-32の進化を放棄するに等しい愚行だからだ。一応現時点で聞こえてくるのは、Tejasをキャンセルして、新しいマルチチップコア(Smithfield)を導入するという話もある。このSmithfield、もともとはTejasの次の世代に来るものだったそうで、それだけ聞けば「Tejasが不調なので、その次の世代を先行させる」という、一般的とはいえないものの、しばしばこの業界ではある話である。ところが、これをそのまま額面どおり受け取れるかというと非常に微妙である。

まず、デュアルコアは一般論として恐ろしくトランジスタ数が増える。キャッシュ共有型にしてもCPUダイの部分のトランジスタ数は倍、トータルでは1.5倍程度に増えるし、キャッシュ分離型ならまんま2倍になる。当然これだけ増えたら、ダイサイズが非常に大きくなってしまう。これを補うための一般的手法はプロセスの微細化ということになり、要するに65nmプロセスを使うという話になる。しかし、もうこれはやらない、と筆者は思う。Intelは過去にも、180nmプロセスと新アーキテクチャ(Coppermine)を同時に導入した結果、製品に深刻なトラブルを抱えて結局出荷スケジュールを大幅にずらさざるを得なかった。今回90nmプロセスの導入にあたって、同じ轍は踏まないだろうと誰もが思っていたにもかかわらず、Prescottで大幅にマイクロアーキテクチャを変更し、この結果またもや製品投入に深刻な影響が出る結果になった。新プロセスと新アーキテクチャの同時投入は危険、ということはさすがにIntelも骨身に染みたはずで、したがって新アーキテクチャは90nmプロセスで導入されると考えてよい気がする(そうでなければIntelはそれが判っていながらもやらざるを得ないというほど何かシビアな理由があるのだろう)。したがって、仮にデュアルコアだとしても、現在の90nmプロセスで製造可能な範囲に絞られることになる。この時点で、本来Tejasの次に来る予定だったプロセッサを前倒し、という可能性はほとんど無くなったと筆者は考える。

次に考えられるのはPrescottコアのままのデュアル化である。この方式、一見手戻りもなく魅力的ではある。気になる消費電力についても、要は3GHzオーバーで動かすからVt(スレッショルド電圧)を低めにキープせざるを得ず、これがリーク電流過大につながっていた訳で、たとえば1.8GHzのデュアルとかにするとVtをかなり高めにキープすることが可能なので、結果として大幅にリーク電流を減らすことも可能だろう。そうなると、1.8GHzのデュアルコアが3.6GHzシングルコアよりも大幅に消費電力が減らせるという可能性もあるわけだ。この方式の問題は、まずトランジスタ数である。Prescottのダイサイズは、キャッシュの分を除いても6800万トランジスタ、Willamette/Northwoodの2700万前後から倍以上に増えている。これをデュアルにすると、仮にL2が無しでも1億3000万トランジスタ以上になってしまい、大容量L2なんぞ搭載した日には2億トランジスタを超えかねない。ちょっと非現実的な解である。

それよりも現実的なのは、Northwoodコアを使ったデュアル構成だろう。デュアルコアの場合の合計は6000万トランジスタ弱だから、1MBのL1キャッシュを積んでもPrescottよりやや小さくできることになる。消費電力も、たとえば2GHzのPentium 4のTDPは52.4~54.3W(ステッピングによって差があり。HT無し)でしかないから、倍になっても今のPentium 4 560と同等程度で収まる(上と同じ理由で、むしろ下がるかもしれない)。比較的リーズナブルな方法である。

この方式の欠点は、SSE3やLaGrande Technology/Vanderpool Technologyがインプリメントされていない事である。もちろんNo ExecutionやEM64Tも未インプリメントであり、このあたりに手を入れなければならないことだ。これはそう簡単にできる作業ではないし、加えて130nm→90nmへの移行もあるから、かなりの大作業になる。これほどまでにコストをかける価値があるかは微妙だし、ゆっくり時間を掛けて作業できる訳でもない訳で、実現可能性としては低めであると思われる。

第3の案は、Dothanもしくはその後継製品(Yonah)をデュアルコア化することだ。このメリットは、飛躍的に下がるTDPである。Pentium M 755(2GHz駆動)のTDPは最大21W。まぁ最大消費電力は30W程度になっていると思うが、倍にしても60Wとなり、きわめて現実的な消費電力になる。消費電力が最大の問題になっているだけに、これはきわめて魅力的な選択肢である。ただし問題点も多い。まずDothanは(L2キャッシュが2MBである事もあり)約1億4000万トランジスタを消費する。コア部だけを考えても6000万トランジスタで、ほとんどPrescottと同等であるから、これをデュアルコアにすると非常に難しい事になる。またNorthwoodのデュアル同様、SSE3やLaGrande Technology/Vanderpool Technology/No Execution/EM64Tのインプリメントも行わねばならず、現実問題として敷居は非常に高いように見える。

ちなみに筆者がどう考えているかというと、デュアルコア自体は将来の流れとして当然あるだろうが、それが実装されるのは65nm世代の第2次製品、時期としては2006年後半になるだろうと想像している。90nm世代は現行のコアのまま進み、65nm世代も当初は(Willamette→Northwood同様に)大きな変更無しのまま推移と見る。Intelは現在の90nmプロセスでまもなくE-Steppingをリリースするが、これに引き続き消費電力を下げる試みを行ったF-Stepping以降を継続して開発する、というシナリオだ。現実問題、90nmの次世代で新アーキテクチャを導入するのは無理である。それに、現在のPrescottは5GHzまで引っ張れるだけの構造になっているから、2005年一杯はPrescottを使うことが可能である。

この方式のメリットは、一切手戻りが発生しないこと。F-Stepping以降の技術は65nm世代でも生かせるだろうし、せっかく導入したSSE3/NXやEM64T、あるいは開発を行っているLaGrande/Vanderpoolも無駄にならない。欠点はというと、性能面での向上はほとんど期待できないことで、この結果AMDに逆転を許す可能性が非常に高いことだ。特に新しいAthlon 64は非常に脅威であり、しばらくの間性能面ではリードを取られる可能性が高い。ただ後述する通り、性能面で逆転されてもマーケットシェアが揺らぐ可能性は少ないから、「名を捨てて実を取る」決断さえすれば、これは非常にリーズナブルなソリューションとなるだろう。

正直なところ、このあたりについて現状では明確なロードマップが無い。なにしろ当のIntelですら決まってない模様で、OEMに向けたロードマップを見てもころころ中身が変わったり、果てにはTBA(To Be Announce)と書いてあったりという具合である。そんな訳で、表1は筆者の推定を元に記載したが、正直来年以降に関しては完全にひっくり返る可能性もある。一応まもなく始まるIntel Developer Forum Fall 2004でこのあたり何か言及があることに期待したいが、何もない可能性もある。

表1
表2

ちなみに表2は、向こう1年におけるパフォーマンス/メインストリーム/バリューの各セグメントにおける製品動向である。現状、Pentium 4 Extreme EditionはNorthwoodコアが残っているものの、これは第4四半期に出るPentium 4 720(この700番台が無くなる、という話もあるのだが、一応筆者は残る可能性を前提に話を進める)でPrescottに置き換えられる。この700番台はL2キャッシュが2MBに増量した(代わりにL3キャッシュは搭載されない)ものになるそうで、おそらく来年には4GHzに達する。この時点でFSBも1067MHzにアップされ、来年のQ2の終わりには740が登場すると見られている。メインストリームはというと、Socket478はこのマーケットでもあと1年程度は残る模様で、これにむけてPrescottコアの製品は引き続き投入されるようだ。ただメインは完全にLGA775に移行する予定である。特に来年Q1以降はFSBが1067MHz対応とされ、これにあわせて製品展開も多少変わってくる模様だ。一方バリューマーケットだが、Q3にはLGA775対応のCeleron Dも登場する。とはいえ、LGA775プラットフォームはまだやや高価な事もあり、引き続きSocket478が大きなシェアを持つことになりそうだ。面白いのはこのバリューのみ、Northwoodコアが引き続き残ること。というのはPrescottコアで2.8GHz以下の周波数をカバーする予定がないようで、このマーケットにのみNorthwoodが残るからだ。なお消費電力を考えると、Socket478対応のCeleron Dは現行の335(2.80GHz駆動)か、340(2.93GHz駆動)で終わりということになるだろう。もともとSocket478でも、Prescottの3.2GHz以上はIntel 875マザー(つまりPrescott FMB1.5準拠製品)のみ推奨で、Intel 865G/GV/GLは3.2GHz以下、現実問題としては3GHz以下の製品を使うように強く推奨されているという現状からすれば、3GHz以上の製品の中には動作しない可能性があるものも少なくないため、340あたりを上限とするのはそれなりにリーズナブルであると思われる。表3にブランドとプロセッサナンバー、動作周波数などの関係をまとめてみた。このうち「?」がついているのが、筆者推定である。おそらく向こう1年の間は、4GHz超えをめざしてゆっくりクロックがあがってゆく形で、その間に必死に90nmプロセスの省電力化を図るといった形になるのではないかと思われる。

表3
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インデックス

目次
(1) CPU(1)
(2) CPU(2)
(3) メモリ
(4) チップセット(1)
(5) チップセット(2)
(6) チップセット(3)
(7) グラフィックス
(8) まとめ

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