【特集】

Prescottの実力を検証する ~ついにベールを脱いだ新世代Pentium 4

7 色々変わった内部構造(6) 放熱に関する新しい指針

    大原雄介  [2004/02/04]

    先ほど90nmプロセスに関するところでも触れた話だが、とにかくPrescottの発熱は非常に大きい。表2に、NorthwoodおよびPrescottの各製品のスペックをまとめたが、実際Prescottでは極端に発熱が多くなる。このうち動作周波数とTDPの関係をまとめたものがグラフ1である。Northwoodの場合、Hyper-Threadingをサポートすると(命令ユニットの利用効率が高まる関係で)TDPが上がる傾向にあるが、それでもPrescottと比較するとまだ小さい事が判るだろう。これだけ熱いとなると、放熱対策も一筋縄ではいかないことになる。

    動作周波数 FSB Hyper-
    Threading
    コア電圧(VID) TDP(W) 最大ケース
    温度(Tcase)
    1.60A GHz 400 × 1.500 47.2 66
    1.80A GHz 400 × 1.500 49.8 67
    2A GHz 400 × 1.525 54.3 69
    2.20GHz 400 × 1.525 57.1 70
    2.26GHz 533 × 1.525 58.0 70
    2.40GHz 400 × 1.525 59.8 71
    2.40B GHz 533 × 1.525 59.8 71
    2.40C GHz 800 1.525 66.2 74
    2.50GHz 400 × 1.525 61.0 72
    2.53GHz 533 × 1.500 61.5 72
    2.60GHz 400 × 1.525 62.6 72
    2.60C GHz 800 1.525 69.0 75
    2.66GHz 533 × 1.525 66.1 74
    2.80GHz 533 × 1.525 68.4 75
    2.80C GHz 800 1.525 69.7 75
    3GHz 800 1.550 81.9 70
    3.06GHz 533 1.550 81.8 69
    3.20GHz 800 1.550 82.0 70
    2.80EGHz 800 1.250~1.400 89 69.1
    3EGHz 800 1.250~1.400 89 69.1
    3.20EGHz 800 1.250~1.400 103 73.2
    3.40EGHz 800 1.250~1.400 103 73.2

    (表2)Northwood/Prescott各製品のスペック

    (グラフ1)動作周波数とTDPの関係

    増加する熱源

    従来からPentium 4にはサーマルダイオードが内蔵され、これでコア温度を測定する事が可能だったので、この温度を見ながらCPUファンのコントロールを行うといった制御が行われていたが、Prescott世代ではもう少し踏み込んだ処理が必要になった。その背景にあるのは、発熱源がPC内部にてんこもり、という状況である。例えば現在の場合、CPUが最大の発熱源であるが、ビデオカードのGPUも無視できない発熱源である。また、HDDの発熱も減る兆しを見せておらず、決して軽視はできない。

    しかも、間もなく登場するAlderwood/Grantsdaleといった新チップセットでは、新たにPCI-Expressが採用されることになっており、これがかなり馬鹿にならない発熱源になるようだ。冷静に考えても、PHY(物理層コントローラ)は2.5GHzで動作するわけだから、消費電力が少ない「訳が無い」。当然ながら、ビデオカードに利用されるPCI-Express 16xのコントローラはかなり発熱するようだ。従ってビデオカードは更に熱くなるし、これを接続するノースブリッジ(Intel風に言えばMCH)の発熱量も多くなる。サウスブリッジ(ICH)もPCI-Expressをサポートすることで発熱が増えるだろう。つまり、PCの内部の温度は上がる一方、という状況になるわけだ。

    こうした環境のなかでCPUの放熱を考える場合、周囲温度(Ta:T-ambience)が非常に重要になってくる。例えばCPUの周囲の温度が-10℃とかならば、黙っていてもかなり効率よくヒートシンクから放熱できるので、CPUファンをそれほどブン廻さなくても十分に冷却できることになる。ところが周囲の温度が50℃にも達していると、CPUファンをかなり高速に廻して風を当てない事には、冷却が不十分になってしまう。

    Taに関する考え方は別に目新しいものではない。例えばPrescott FMB1の場合、Taは38℃以下にすべし、という規定があった。要するにCPUの周囲を38℃以下に保つようにケース内の冷却方法を考慮せよという話なのだが、現実問題としてこれが難しくなりつつある。

    Prescottで導入される新対策

    (Photo09)ちょっと判りにくい図だが、図の中の色が回転数を示すと考えれば良い。つまり、緑の部分はファンの回転数が低く、オレンジ→レッドの領域では回転数が高くなる訳だ

    そこで、Prescottではいくつかの新しい考え方を導入した(Photo09)。まず、TcaseMAX(CPUのヒートスプレッダの最大温度)を、消費電力に応じて設定する事にした。グラフ2がそれであるが、要するに消費電力に応じてTcaseMAXが直線的に増える仕組みである。勿論無限に増える訳ではないのだが、消費電力が大きければ発熱が増えるのは避けようが無く、これを現実的な選択として受け入れたと考えればよいだろう。

    これを前提にした上で、Tcontrolという新しいパラメータを導入した。これは要するに、Taに応じてTcontrolを上下させることで、周囲温度が高ければファンの回転数を高めに、逆に周囲温度が低ければファンの回転数を低めにするという制御を可能にするものだ。単純にCPUコアの温度だけで制御を行うのではなく、周囲温度も制御のパラメータに入れる、より効果的なファン制御が可能になるという訳だ。


    (グラフ2)Thermal Profile

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