【特集】

AIBOを自分で動かそう - AIBOプログラミング超入門

16 AIBO開発プロジェクトリーダーインタビュー・まとめ

    山田久美  [2002/09/19]
    ○AIBO開発プロジェクトリーダーインタビュー

    OPEN-Rについて、ソニーでAIBO開発のプロジェクトリーダーを務める、エンターテインメントロボットカンパニー開発設計1部統括部長の景山浩二氏に話を伺った。

    --早速ですが、OPEN-R SDKを公開された理由についてお聞かせ下さい。

    景山氏「現在、ロボット技術は発展途上にありまして、日々研究・開発を進めているわけですが、以前から、色々な方々の知恵を集めた方が、その進歩は早いだろうと考えていました。また、最近は、"オープンテクノロジー"という考え方が世界の主流になってきています。今回、OPEN-R SDKを公開したのもそういった理由からなのです」

    --北野宏明氏(ソニーコンピューターサイエンス研究所研究員)が主宰する北野共生システムプロジェクトで開発された「PINO」も、ロボット研究のプラットフォームとして利用してもらおうと、あらゆる仕様を公開していますよね。

    北野共生システムプロジェクトの「PINO」(「ROBODEX2002」にて)

    「北野共生システムプロジェクトは若干パブリックな組織であり、一方、我々はプライベートカンパニーですので、PINOとは違って、LSIの情報やハードウェアの詳細までは公開してはいません。我々が公開しているのは、あくまでもソフトウェアのAPIの仕様までです。ハードウェアを制御している技術に関しては、我々が開発したものをそのまま使用していただくというという形を取っています。ですから、逆にユーザーは、ロボットのハードウェアやOSを意識することなく、自分たちのソフトウェアを作ることができるというのが、OPEN-R SDKの大きな特徴なのです。実際、ロボットは、ハード、ドライバ、OSなどを1から全て作っていくと、動かすまでにものすごいお金と手間ひまがかかってしまいます。ですので、すでに研究・開発が進んでいる部分に関しては、インフラストラクチャーのような形を取る方が、その先の研究・開発に力を注ぐことができるだろうという考えもあるんです。オープンテクノロジーの良いところは、自分で全部を作るというよりも、誰かが良いものを作ったらそれをベースにして、さらに良いものを作ることができるという点にあります。共有の場を1つ設けることで、そこに技術が蓄積されていくわけです」

    --OPEN-R SDKを利用してロボットの研究・開発をされようという方は、どういった方が多いのでしょうか。

    「大学の研究室の方が多いでしょうね。もしくは、ロボットに非常に興味をお持ちの一般の方。OPEN-Rは、C++でプログラミングしなければならないので、それなりのバックグラウンドが必要になります。プログラムを書いて自分の思い通りにロボットを動かすというのは、実際、それほど簡単なことではないんですよ。ですから、一般的なAIBOの愛好者の場合、OPEN-Rよりもむしろ、『AIBOマスタースタジオ』を使ってプログラミングされる方が多いようですね」

    --OPEN-Rの公式サイトを立ち上げられていますが、このサイトをどのような場にしていきたいとお考えですか。

    「先ほどの話とも重複しますが、テクノロジーの蓄積の場になれば良いと思っています。各大学などで研究している内容が、ここに流れ込むことによって、テクノロジー全体が前進することを大いに期待しています。OPEN-Rに関する掲示板も立ち上げていますので、エンジニアの方々の意見や情報交換の場として積極的に使われていくといいですね。また、我々としては、AIBOのハードウェアが持っているポテンシャルを、いかにうまく引き出していただけるかということに期待と関心を寄せています。カメラやマイクも入っていますし、無線LANを使ってネットワークともつながるようになっていますので、皆さんが、このハードをベースに、どういう知恵を出していただけるかを非常に楽しみにしているんですよ」

    カラーカメラ(口の部分)やフェイスフロントランプ、さわられたことがわかるフェイスタッチセンサーを搭載(ERS-210A)
    こちらは、メロディー音や効果音を出すスピーカー。これら様々なデバイスのポテンシャルをいかに引き出すか(ERS-210A)

    ―他には、どういった展開が考えられるでしょうか。

    「AIBOとOPEN-Rが、教育にも応用されていけばよいと考えています。実は、教育現場で応用してもらうというのも、今回のOPEN-Rソフトウェア仕様公開の目的の1つになっています。ロボットはさまざまなテクノロジーの集合体です。例えば、プログラミングそのものをはじめ、制御や画像処理、AI、オブジェクト指向など、教材にしようと思ったら、要素はいくらでもあるんですよ。また、『AIBOマスタースタジオ』のような非常に簡単なスクリプト言語によるプログラミングでしたら、中学生でも、十分教材になるはずです」

    ―AIBOに関する今後の課題としては、どういったものがありますか?

    「数限りなくあります(笑)。AIBOは、外界からさまざまな情報を取り入れて、その情報を処理し、色々な形で、処理結果を表出させるというしくみで動いています。ですから、外から取り入れた情報をどう処理をし、どう蓄積し、外に働きかけていくかに関しては、まだまだいくらでも研究の余地があります。その研究を進めていくことによって、AIBOは、より人と深いコミュニケーションができるようになり、エンターテインメント性も向上していくことになるのです」

    景山浩二(かげやまこうじ)
    ソニー株式会社エンターテインメントロボットカンパニー開発設計1部統括部長。1994年より、エンターテインメントロボット開発のプロジェクトリーダーを務めている。

    ○まとめ

    かなり駆け足ではあったが、今回は、「AIBOナビゲーター2」や「AIBOマスタースタジオ」の使い方、また、OPEN-R SDKによるプログラミングのほんの導入部分について一緒に見てきた。「AIBOマスタースタジオ」は、楽しみながらプログラミングの勉強ができる秀逸なソフトであるということが、きっとおわかりいただけたことと思う。

    一方、OPEN-R SDKは、AIBOをプラットフォームとしたロボット開発の実験や研究用に公開されているものなので、筆者自身も含め、一般ユーザーにとってはかなり敷居の高い内容ではあるが、「AIBOマスタースタジオ」では物足りない、本格的にロボット開発について学びたいと思われている方は、これを機会に是非、勉強してみてはいかがだろうか。

    (執筆=山田久美) [2002/09/19]

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